カラカラ浴場を後にした僕らは、イマーニャ・ディ・カラカッラ通りをてくてく歩く。太陽が地平線に近づき始めていた。パラティーノの丘南にそびえるドムス・アウグスターナの壁がオレンジ色に染まり始めている。2000年前も、こんな光景が広がっていたのだろうか。ぽっかりとひらけたチルコ・マッシモの広大な空間を眺めながら、僕たちはローマ地下鉄B線 チルコ・マッシモ駅に潜った。
テルミニ駅で地下鉄A線に乗り換え、ふたたびヴァチカン近くまで戻ってきた。彼氏の目当てのレストランが開店するまでしばらく時間があり、ローマではじめてジェラートを食べた。これだけで十分に一食になってしまいそうなヴォリュームだ。
時間になって目当ての店に行ってみたら、あいにく定休日だった。あらあら、それじゃ仕方ないと、いったんホテルに戻る。部屋はベッドがターンダウンされていて、枕元にはキャンディが置かれている。このホテルは本当に行き届いている。
料理と言えば、ガイドブックに"coda alla vaccinara"(コーダ アッラ ヴァッチナーラ:ローマ風牛テールの煮込み)が紹介されていて、僕は相当興味があったんだ。牛テールとセロリをトマトでじっくり煮込んだローマの郷土料理だそうで、ガイドブックによるとぜひ試してみるとのこと。これを供しているレストランをフロントで探してもらった。あちらこちらに電話をかけてくれたがダメだった。理由は……牛テールの煮込みは冬の料理だという。それじゃあ無理だよな。フロントが紹介してくれた、リストランテに行く。ホテルから歩いて5分ほどの場所にあった。入り口はBarっぽく狭いのだけど、奥に進むと広い空間があり、食事を楽しむ人たちで賑わっている。
白ワインをボトルで頼む。ジェラートでお腹いっぱいになっていたので、生ハムなどのオードブルの盛り合わせをつまみながら、グビグビと飲んでいると、あっという間に酔いがまわる。
天井が回ってしまっては困るので、パスタを1皿頼むことにした。僕は隣のテーブルのカップルの男性が食べている皿が気になって仕方ない。ギャルソンを手招きして、「あれあれ」とクイッと親指で隣のテーブルを指さすと、"Si、Si"とイタリア親父が顔を寄せてきて、耳元で「シニョーレは○○、シニョリータは××」とメニューを指差してくれる。僕はイカを使ったタリアテッレを頼んだ。歯ごたえ最高!
酔っ払ってふらつく足でリストランテを出て、ナツィオナーレ通り(Via Nazionale)の坂をゆっくりと上った。ローマにいるあいだに絶対見ようと思ってた共和国広場(Piazza della Repubblica)の夜景。思った通り、美しい光景だった。中央にあるナイアディの泉に腰掛けながら、僕たちはしばらくのあいだ、踊るように広場を駆け抜けて行くクルマの波と、ライトアップされた半円形の建物を眺めていた。いつまでも眺めていたい、そんな景色だった。
一日ハードスケジュールでくたくたに疲れていた僕らは、ホテルに戻って荷物をまとめ、泥のように眠った。明日は南イタリアへ移動だ。
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