ローテンブルクを離れる前に(1) 2011年欧州旅行記-48

旅の途中の移動日で、次の町に向けて出発する前に数時間あって、駅か空港で時間をつぶすのはもったいなくて、だけど、美術館・博物館に入るほどの時間もない、中途半端なモラトリアムを、僕は結構好きだったりする。ホテルレストラン アイゼンフート (Hotel Eisenhut) でゆっくりと朝食を摂ったあと、僕たちはふたたびローテンブルクの町の散策に出かけた。

ローテンブルクでは、行ってみたい場所があった。町の中で一番高い場所に上ること。それはマルクト広場に面した市庁舎にある鐘楼にちがいなかった。大学で学んだ第二外国語がドイツ語で、その教科書の表紙がローテンブルクの広場を高いところから撮影した写真だった。きっと、あの鐘楼にちがいない。

で、その鐘楼に登ろうと市庁舎のあたりをウロウロしてみたのだけれど、歴史展示室だったりで、入り口がよく分からない。市庁舎正面では結婚式が執り行われていて、花嫁・花婿と親族たちが集まっていたり……一体どこからアプローチすれば良いのやら?? やがて、結婚式の一団がかき消すようにいなくなったので、僕らはおそるおそる市庁舎正面の大きな木の扉を押し開けてみた。特に案内もない螺旋階段が続いていて、とにかくその一番上部まで上ってみた。突き当たりに扉があり、それを開けてみると、ドアの反対側に「出口」と漢字で紙が貼ってある。がらんとした倉庫のような空間を突っ切ると、さらに階段が続いていて、ひーひー言いながら上って行くと、体格の良いおばちゃんがチケット売り場に座っていた。どうやらここが鐘楼らしい。最後数段は梯子のような急な階段があって、その先は空が広がっていた。

鐘楼の高さは地上から60m。鐘の回りに人が一人歩ける程度のせまい足場が渡してある。ちょっと前屈みになると地上に転落しそうになる迫力に、僕ら二人はへっぴり腰になる。眼下には教科書の表紙そのままの風景が広がっていた。


反っくり返りながら鐘の写真を撮ったとき、柵から転げ落ちそうで少し怖かった。

鐘楼から降りた僕らは、興奮半分、朝からハードな階段登りでぐったりだった。螺旋階段を下る途中で「鐘はこちらで良いのでしょうか?」とお年を召した日本人夫婦に声をかけられた。「結構キツイですから、お気をつけて」と見送ったものの、年配の日本人は元気だと思う。

マリエン広場には人が集まっている。市議会員宴会堂のからくり時計が、11:00から動くから。右側の市長がワインをイッキイッキする。


歩き疲れた僕らは、カフェでお茶とケーキで一休みする。この日も空気は冷たくて、とても店外のテーブルになんて座っていられない。暖房の効いた店内で、温かいコーヒーを飲む。

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