BL漫画レビュー:倫敦巴里子『放課後エキセントリック』

初見の倫敦巴里子作品。
欧州のエスプリが溢れているのか!?

「僕にセックスを教えてほしい」
人気NO1のイケメン向井に、突然、性行為指南のお願いをしたのは、クラスでも変人と名高い勅使河原!!
いつも他人を凝視しているくせに、自分には目もくれない勅使河原に、密かに興味をもっていた向井。意外すぎるお願いに驚きつつも、求められるままセックスの手ほどきをすることに-!?

校内一モテ男×評判の超変人の肉欲から始まる恋!?
放課後に繰り広げられるヒミツのプライベートレッスン


お、おぅ。。そうかい。。。

変人勅使河原くんは、封建的なお金持ちの家で育った男子。親の庇護下にいる時分に色気づくなど言語道断と言われ、生まれてこの方女子と手をつないだ事もない。エロ本、グラビアも没収される。そんな勅使河原くんは、好みの人間を見つけると興奮して凝視してしまう体質になってしまった。
一方で、「顔が良くて、バスケ部のエースで成績はトップ10入りしている」校内一のモテ男向井は、勅使河原が自分を見つめてこないことが気になって仕方ない。まるで接点のない二人が、セックスを教えてほしいという1点で結びつく。


特殊な環境で育った天然ボケの子とのギャップがテーマの話は珍しくないが、ある種駆け引きなしのド直球の素朴さって僕は好きだ。この向井、勅使河原カップルも、身体から始まってしまった関係を、どうやって恋愛関係に持ち込もうかモテ男向井がグルグル悩むところが見所。向井は初セックスの直後「俺は勅使河原が好きだから」と伝えているのにね。


で、向井とセックスを経験した勅使河原くんは、ますますお弁当のソーセージをまともに味わえる気がしなくなってしまうのだ。

去年、少女マンガに属している「耽美マンガ」-「商業BL」-「同人BL」-「ホモマンガ」の図解をしてみた。自分的にはそれなりに理屈づけしたつもりだけれど、図示することで「境界線」をあえて曖昧にしたことを自覚はしていた。
直球ホモマンガと言えば田亀源五郎シリーズしかないのだけれど、あれかなり特殊なテーマを取り扱っているわけで、ゲイの間でも好き嫌いが分かれている。じゃあ、いい塩梅のホモマンガ、つまり絵柄とテーマのバランスが取れた男性作家が登場するとしたらどうなるか?
多分に個人的な好みが入るが、この「放課後エキセントリック」のような作品になるんじゃないかと思う。あまり少女マンガっぽくなく、いま流行の中村明日美子作品ではないような。ゲイを含む男性って、わりと写実的な絵柄を好むと思う。そして、女性が好むエロさと、ゲイが好むエロさのポイントは少しズレがあると思う。例えばこのセミヌードの扉絵がゲイ雑誌に掲載されていたら、けっこうウケるんじゃないかと思う。身体のパーツがいい塩梅に配置されていると僕は思うが。

1.絵柄
僕は好きだ。やや太いラインで構成され、背景の学校もちゃんと描写されている。そして向井、勅使河原それぞれの笑顔が良い。

2.ストーリー
すでに語り尽くしたとおり。高校生の青臭い青春グラフィティ。二人のグルグルぶりがなかなか良いと思う。高校生とメロンパンは鉄板か?

3.エロ度
量はそれほど。だけど、アングルが独特。雄っぱいの向こうの勅使河原の切なそうな表情にそそられる。向井のアレはかなり立派。同時収録作品はエロなしなので、エロ度評価はやや低め。

4.まとめ
「放課後エキセントリック」と併せて収録されている「6畳一間まかない付き」にこんな印象深いセリフがある。

「違う体になっていくのが嫌だったんだよ。
 違うものを食べているのは昼だけ。
 1日に摂取する食料の3分の2が一緒だもん。
 この体とこの体はほぼ同じ成分で出来ていると思わない?
 俺の髪の毛も、爪も、肌も、ヘモグロビンもミトコンドリアもみんなお揃い。
 それって俺にとってはすごい事だったんだ」

同居しているカップルの醍醐味なんだろうな、こういうの。

絵柄 :★★★★☆
ストーリー:★★★☆☆
エロ度 :★★☆☆☆
(あくまで個人的主観に基づく★の数です)

BL漫画レビュー:草間さかえ『やぎさん郵便2』

いま一番リリースを心待ちにしている草間さかえ作品。
BLの歴史に燦然と輝く傑作の予感が止まらないシリーズ第3巻目。

返ってきた本のページにまぎれていた恋文。
宛名があるはずの1枚目はなく、文末の署名は本を貸した友人の名。
その友人は急に東京を去るという。
それは渡せなかった手紙の所為か…。
ただ一人が手紙を盗み読まなかったことからはじまった過去と感情と関係が絡み合う4人の男の恋愛物語。
花城の過去との決着、廣瀬の不安、有原が追う手紙の行方、澤の優しさ…。
それぞれの想いの行き先が見えてくるシリーズ3冊目。

僕的には、BLの歴史の中でも屈指の傑作が終幕に向けて進行している様子を、固唾を呑んで見守っている高揚感がある。「マッチ売り」から「やぎさん郵便」と続く、敗戦を迎えた日本の、架空東京で繰り広げられる4人の男たちの恋物語は、不思議な透明感を保っている。この街はやけに雪が降る。雪の上がった翌朝、やけに透明感のある空の下、音のない、何キロ先の景色までもが目に飛び込んでくるような、不思議な明るさが紙面から溢れてくる。敗戦後の、世相はそれほど明るくない状態なのだけど。

あとがきの中で、作者の草間さかえがこんなキャラ組み合わせを書いている。

情緒のない風俗(花城) - 心の身体も素人童貞(廣瀬)
ロマンポルノ系(有原) - 奉仕系の見せかけS(澤)

本作では、澤・有原の一点掛けで良いと僕は思っている。

親友に宛てて書いた恋文を無くしてしまい、動揺のあまり大学を中退して故郷へ逃げ帰ろうとしていた有原。彼は澤に引っかかってしまい、半ば囲い者のように抱かれている。八方ふさがりの中、ドSのように見えた澤の意外な優しさに、有原が少しずつ心を開いてゆく様が秀逸。しかも、あっけらかんとした廣瀬に比べて、有原のセリフはやたら文学的で読者の気持ちを鷲づかみにして行く。このコマなんか大好きだ。


有原は優しい子なのだ。しかも観察眼がある。「(澤)甚一郞が私達女に優しいのは習い性だからね」という志緒婆さんに対し、「澤さんが周りの女の人たちから優しくされて育ったからでしょう」と有原が返し、婆さんを号泣させたりもする。考えようによっちゃジゴロっぽいセリフではあるのだけど。

で、八方ふさがりだった有原の境遇をぶち破ってやったのは澤であって。




そして、そんな澤のもとで、幸せそうに微睡む有原がいて。その有原を「寝ている時は幸せそうだから、一日の半分寝てるんなら人生の半分は幸せだ」って眺めている澤は、かなり幸せな時間を過ごしているんじゃないかと思うのだ。

1.絵柄
架空東京の、レトロで不思議な空気感が紙面から溢れてくる。廣瀬×花城組はあまりどうでもいいのだが、澤×有原組の雰囲気が抜群にいい。その他の脇役、背景の描写も独特で非常に完成度は高いと思う。

2.ストーリー
シリーズ通算3冊目に入り、花城は過去を清算しようと動きだし、澤は有原を雁字搦めにしていた棘を抜いてやった。有原はどんどん澤に心をひらくようになる様子が見所か。

3.エロ度
相変わらず全身をまさぐられて喘いでいる有原くんがエロイ。有原って全身が性感帯なのかね?? それから、同じ大学生同士の廣瀬と有原だが、表情は圧倒的に有原の方が豊か。性格的には廣瀬の方が明るいのにね。

4.まとめ
志緒婆さん、踊り子の夢子など女性キャラクターも丁寧に描かれ、BLにありがちなぞんざいな扱いをされるわけでもなく。なんだろう、いままでのBLの限界を超えて、2組の男カップルが生活している「世界」を物語れるならば、「やぎさん郵便」はBL界の金字塔になるにちがいない。全力でオススメ。

絵柄 :★★★★★
ストーリー:★★★★★
エロ度 :★★★★★
(あくまで個人的主観に基づく★の数です)

『KANO 1931海の向こうの甲子園』を観てきた!

なんなんだよ、この映画。
愛さずにはいられないじゃないか!!
ちくしょうめ! (T_T)

と言うわけで、高雄・台北旅行記を書き上げた晩に気づいた。
「やべぇ、今日はKANO初日だったじゃないか!!」
とにかく今朝一番の上映にすっ飛んで行った。
シネコンの小さなスクリーンだったけど、8、9割の席が埋まってた。
去年、予告映像を見てから恋い焦がれてきたKANO。
高雄車站で「嘉義」の文字を見つけた時、どれだけ愛おしく思ったことか。
溢れる想いを叩きつける今日の記事は、ダメ人間丸出しだろう、きっと。

色々書きたいことはあるけれど、順番を間違えるとダメダメになるので、分けて感想を書いて行く。まずもって「KANO」のベース部分、スポ根野球映画としての出来が非常に良い。台湾最下位(?)の弱小野球チームに鬼監督がやってきて、ダメダメ部員たちをがんがん扱く。「甲子園、甲子園」とかけ声を上げながら嘉義の町中を走って行く部員たちを、町の人たちは冷ややかに眺めていた。やがて嘉義農林学校野球部は試合を勝ち進み台湾代表となる。嘉義の人々は彼らの活躍に熱狂する。さらに嘉義農林学校野球部は1931年の甲子園決勝戦まで勝ち進み、中京商業と死闘を繰り広げる。少年ジャンプでいうところの「努力、友情、勝利」の鉄板ストーリーがストレートに胸を打つ。野球に興味ない人も、泥まみれになって戦っている少年たちから目を離せないはず。

次に出演者たちがすばらしかった。球児たちは全員野球経験者。ピッチャー呉明捷役のツァオ・ヨウニンに至っては現役大学野球選手だというのだから、舞台演技はともかく野球プレイは本物。試合風景はものすごくリアリティがあった。あまり日本語が上手じゃない人もいるのだけれど、つたない発音がすごく可愛いのだ。彼らに感情移入せずにはいられない。台湾内のローカルな野球場から、彼らは檜舞台の甲子園へ行くわけなんだけど、CGのクオリティが良くってちょっと鳥肌。昔観たグラディエーターのようだ。

少し引きで書こう。
映画は一人の兵士(札幌商業のピッチャー錠者博美)が基隆に上陸するところから始まる。汽車に乗り、嘉義へ向かう途中の浅い夢の中で、そして自分と戦ったチームのグランドに立つあいだに、嘉義農林学校野球部が勝ち上がって行く物語が挟まれる。映画中の現在時間は、嘉義駅から出征する兵士に高砂族が含まれていて、大日本帝国崩壊の跫音が聞こえ始めた時期。あの当時ですら、甲子園の暑いひと夏がノスタルジックな思い出になっている。

台湾ではよく知られていて、最近日本国内でも知る人ぞ知る八田與一が登場する。台湾内の親中国派メディアなどの批判に対し、プロデューサーのウェイ・ダーション氏が「日本を美化したわけではない。悪く描かなかっただけだ」と語っている。もし野球チームが農業学校ではなかったら、嘉南大圳のエピソードを挟み込むことは「政治的」な意図としてとらえられてしまっただろう。だけど農業学校の生徒の話ならば、八田與一と嘉南大圳のエピソードを挿入しても違和感はない。近藤兵太郎と3民族から構成される嘉義農林学校野球部、八田與一と台湾人たちが作り上げた嘉南大圳……あの当時、民族のちがいを乗り越えて、なにかを作り上げようと奮闘していた人々がいたという事を描写したことは、とてつもなく大きな意義がある。

さらに引きで見よう。
今回プロデューサー役に回ったウェイ・ダーション氏は、「海角七号」「セデックパレ」を発表してきた監督だ。海角七号では台湾と日本との間に横たわる「あるメンタリティ」について描写し、そしてセデックパレでは、台湾側から見た霧社事件を描いた。統治したものと統治されたものの間に横たわるメンタリティ、統治に抵抗した者たちの英雄譚を描いた後に、日本人と台湾人が力を合わせる物語を作った。これを日本側で作ったら「偽善」「帝国主義美化」など中国共産党、朝鮮半島、そして日本国内サヨクが騒いでつまらない事になっただろう。あの時代、統治された側の人たちが歴史を咀嚼し、表現された映画の一つが「KANO」であることに、僕は心から感謝したい。

大東亜戦争敗戦後、近藤兵太郎監督をはじめとして台湾から引き揚げてきた日本人が残してきた「精神」が、WBC2013年日台戦の、あの感動の光景へつながって行くのかと思うと僕は胸が熱くなった。1931年夏の、甲子園で死闘を繰り広げた球児たちの想いは、いまも引き継がれているのだろう。

嘉義農林学校野球部ナインの活躍を、いつまでも見ていたかった。
年配者やおっさんに混じって、現役球児らしい少年がふたりで鑑賞していた。
中学生かな?それとも 高校1年生くらいかな??
現役球児の目に、KANOはどんな風に写ったのだろうか?


最終日までトラブル 高雄・台北紀行2015(9)

台北最終日。
雲が切れ、朝日が差し込んでくるのを眺めていた。
あらためて景色を見渡すと、台北は山に囲まれた街。
視界の先には、きっと猫空の茶畑が広がっているのだろうと想像した。



今回は、台湾のことを色々と舐めていて失敗を繰り返した。
自分的には大阪に遊びに行っている感覚で下調べが不十分だったツケは、台北に入ってから一気に表面化した。

朝食ビュフェを楽しんだ後、僕らは30分もコーヒーを飲んで食っちゃべっていた。
フライトは僕の方が先で11:30だった。

部屋に戻って改めて出発時刻を調べると、11:10だった。
チェックイン手続きは50分前の10:20で締め切られる。
「うわ、やべぇ。急がなきゃ」と慌てて荷物をまとめてチェックアウトした。
ここが最初のミステイク。

チェックアウトして、なぜか僕らは台北駅からバスで桃園空港へ向かうことにした。
とっととタクシーで移動すればよいのに。
これが2番目のミステイク。

「や、まだ時間もありそうだし、天気もいいからMRT使わず散歩がてら台北駅を目指さない?」と散歩してしまった僕のミステイクが3番目。

バスターミナルを知っているという彼氏にくっついて行ったら、バスターミナルの位置が変わったと告げられテンぱった。なぜここでタクシーを選択しなかったのか?これで4つめのミステイク。

バスチケットは買ったけれど、直前に乗れるバスが満席となって1本後回しに。運が悪かった。結局乗れたのは9:05分発の国光バス。

桃園空港までは50分~70分だったから、一発渋滞にはまったらチェックインはアウトだった。今回は本気でチケット買い直しまで検討した。「大丈夫だって」と彼氏は慰めてくれていたが、バスに乗っている間はろくに風景を眺めている余裕もなかった。桃園空港への高速道路は拡張されたようで、結局渋滞にはまらなかった。国光バスのおっちゃんが根性出してくれたお陰で40分ほどで第一ターミナルに到着した。

空港でお土産その他一切買わず、ジャンプインしたのは初の経験。
ボーディングゲートへ香草航空がアプローチしてくる様子を見た時は、心底ほっとした。
やっぱり準備不足の海外旅行はやっちゃダメだと、深く反省しながら僕は帰国した。
リカバリーできるミスはせいぜい2つまで、3つ超えたら取り返しがつかないかも。
今回はたまたま運が良かったのだ。
7月の旅行の時は、もっと謙虚に計画を立てることにする。

台湾旅行記おわり。

Tutto Bello 台北 高雄・台北紀行2015(8)

今回の旅行のハイライトは、彼氏の誕生日祝いの食事。
北海道で洞爺湖乃の風のお返しで、今回はホテルを通じて手配してもらった。

この日の台北は雨が降ったり止んだりの一日だった。
ホテルからタクシーに乗って移動する。
インペリアルホテル(華國大飯店)近くにあるそのお店に到着した時は、とっぷりと日が暮れていた。タクシーが止まると店内からスタッフが駆け寄ってくる。


この店は台湾に住むマイミクさんに、誕生日のお祝いをするのにステキなお店を紹介して欲しいと頼んで、一番最初に上がってきた。ネットで調べると駐在員妻たちの間で好評だけど、ランチの報告ばかり。ディナーで行くと、どうなることやら。

店内はおしゃれな雰囲気。
コース料理とワインをボトルで注文。
コース料理がいくらしたか忘れてしまったけれど、松竹梅の竹コース(w。



ナプキンに包まれたほかほかと暖かいパンを食べるところからスタート。


ワイン選びは彼氏の専管事項で、金額上限設定以外は彼氏にお任せすることにしている。今回も白ワインということで、シャサーニュ・モンラッシェを開けることにした。


一皿目は、ムール貝やぷりぷり海老のアクアパッツアという感じ。
お皿の底の磯の香りが凝縮されたスープが、目の覚めるようなおいしさ。


二品目はパスタ。タリアッテレかな?
ソースがものすごく濃厚。生クリームで滑らかさを出していると思われ。


三品目はステーキ。
外側はカリッと焼き上げられているのに、中はじんわりと柔らかく。
しかも彼氏とワインを飲みながらダラダラ食べているのに、時間が経っても堅くならないステーキを焼き上げる腕はお見事。
付け合わせの野菜は、ブルーチーズのドレッシングが掛けられていた。ブルーチーズの臭さを上手く押さえ込みかつ、美味さだけは十分に引き出されている。しかも、野菜を食べ終わった後、皿にドレッシングが残っていないのもお見事。


デザートはティラミス。
濃厚で美味。
彼氏によると隣のテーブルでアラカルトを食べていたカップルが、「隣のテーブルと同じアレ」とオーダーを出していたらしい。


その他、お店から彼氏にバースデーケーキプレートのプレゼントがあった。

正直、台北でこんなレベルの高いイタリアンを食べることが出来るとは思ってもみなかった。日本国内でもなかなかお目にかかることの出来ないレベルの店だった。チャンスがあったらぜひ再訪したい。

勘定だけは怖い店だよ(w

幸せ気分の彼氏とともに、僕らはTutto Belloを出た。

さらにトラブル続きの台北 高雄・台北紀行2015(7)

オークラプレステージ台北(大倉久和大飯店)の朝食ビュフェは、さすがに良く整えられていると思った。確かにシェラトンやリージェントのビュフェに比べると規模は小さいが、僕はあまり人が多すぎるのも好きではない。特にリージェントは忙しなさすぎる。旅行も4日目に入り、例のごとく食欲が落ちてくるタイミングだ。美味しいものを少しだけ食べられれば満足モードに入っている。


食後、身支度を調え、外出前にコンシェルジュに「猫空の気温は何度ですか?」と尋ねると「今日月曜日は猫空のロープウェイがお休みです」と衝撃の通告が。マジですか!?と虚を突かれた僕らは、北投温泉へ行くことにした。MRTで行けるから別に苦ではなかったが、北投の温泉資料館なども月曜日は尽く休み。しかも、日式で入れる温泉がどこか分かる資料を持ってこなくて彷徨うハメになった。結局1時間個室温泉を借りて入ることになるのだけど、浴室に入れば湯は張られておらず。「そこからかい!?」と驚きつつ湯につかれば身体と気持ちが落ち着いてくる。

台北市内まではバスで戻ってきた。台北駅に大型フードコートがあることを、前回の来台の時に茶芸館で日本人旅行客から聞いていた。昼食はここで。二軒梯子したが、かなりレベルは高く、美味かった。


いま台北で一番美味しいと言われているオークラプレステージ台北(大倉久和大飯店)特製のパイナップルケーキを買い、いったん部屋に戻る。再び足つぼマッサージ屋に行った後、晩ご飯に備えて部屋で休養した。

ひさしぶりの台北 高雄・台北紀行2015(6)

高雄を離れる日の朝、僕らはサンシャインホテルのビュフェで朝食を摂っていた。台北移動が目的の日だったので、あまり厳密な予定はない。ピアノが奏でる演奏を聴きながら「死ぬ時は、こうやって皆と音楽を聴きながら食事をしている最中に、眠るように死にたいな」と思った。そのことを口に出したら、彼氏が大往生したお婆さんの話をしてくれる。大きなガラス窓から差し込んでくる日差しを眺めながら、とりとめもないことに想いを馳せた。窓の外は月曜日、仕事に向かう人々のバイクが道に溢れている。

再び台湾高鉄に乗り、台北に到着したのは12:00過ぎだった。MRT中山駅で下車して数分歩いたところにあるオークラプレステージ台北(大倉久和大飯店)が、今回の滞在先。チェックインまでに時間があったので、荷物を預け、僕らは食事に出た。

歩いて数分のところに京鼎楼があったので、ランチは空心菜と小籠包。
ひぃぃぃ、うまい!




そのあと、彼氏が行きつけのお茶屋さん「和昌茶荘」でお茶を買う。店に入るなり店主が「ひさしぶりね!どれくらい経った?ほんとひさしぶりね!!」と彼氏を大歓迎。うちの彼氏はいったいどれだけ通い詰めたんだろうか??カウンターに通され、40年生きているというオウムを眺めながら様々なお茶を試飲させてもらった。美味しいお茶の淹れ方を教わりながら、お腹がタポタポになるほど飲ませていただいた。楽しい日曜の午後だった。お茶を買って、上機嫌で退店。ここから色々とトラブルが山積みになって行くのだけれど。

和昌茶荘を出た後、散歩がてら十足健康まで歩く。ここは前回も訪れた足つぼマッサージ屋で、けっこうクル施術をしてくれる。隣のベッドでヒーヒーいってる彼氏の悲鳴を聞きながら、僕は窓の外を眺めていた。海外で過ごす16:00。空がだんだんオレンジ色になってきて、誰もが少し心細くなってくる時間帯に異国で空を眺めていると、地に足が着いていないような不思議な浮遊感がする。口では林先生にツボを押されながら「うお、痛てぇ」とか言っているんだけど。

その夜、僕らは魯肉飯を探し回っていた。別に珍しい料理ではないはずだが、どういうわけか高雄ではお店を見つけられなかった。そこで台北に着いたら魯肉飯を食おうと僕たちは決めていた。だけど、忠孝敦化駅で教えてもらった店が見つからない。グルグル歩き回っているうちに僕たちはだんだん不機嫌になってくる。疲れも溜まっていたからだろう。こういうときは諦めて、手近で食べれるものを食べれば良いのだが、変にこだわり出すとドツボにはまる。いや、今回は嵌まってしまった。仕方なく、いったんホテルに引き上げる。

オークラプレステージ台北は、オークラが運営しているのでデフォルト日本語で対応が可能。建物自体が新しく、通された部屋はとても居心地が良い。ベッドルームからバスルームが丸見えだが、これは引き戸で室内が区切られる仕組みになっていて、壁をしまっておけば開放感がある。いや、すけべオヤジが開放したまま、小姉がシャワーを浴びる姿を楽しむのもいいのかもしれない。




ウォシュレット付きトイレは独立していて、しかもそこにもちゃんとした洗面台が設置されていて、朝シャワーやトイレで洗面台の奪い合いになることは避けられる。また、引き戸を閉めると二重扉状態になり、廊下の物音も入り込んでこない。凄く快適。

一休み後、彼氏が新光三越の裏手に魯肉飯屋を見つけてくれて、そこを急襲。やべぇ~美味すぎる~、しかも安すぎる~。



魯肉飯で満腹になった後、酒を飲もうととあるゲイバーに向かったが、開店時間にはずいぶん時間があることが分かった。じゃあ他の店でということで、ホテルの近所をうろつくものの、尽く満席などで入れない。けっこうおしゃれなイタリアンとかあったのだけど。じゃ7-11で酒買って帰るか?というのには、彼氏が不賛成。結局ホテルのラウンジでボトル1本と季節のフルーツ盛り合わせを食べて撤収。この日は、あまり運の良くない日だった。

台南市に遊ぶ(2) 高雄・台北紀行2015(5)

神農街の手前に永楽市場という市場があった。様々な食材を扱っている場所で、魚の生臭い臭いが立ちこめていたりしてクラクラする。こういう市場には美味しい食べ物屋があるにちがいないと、僕らを追い越して行くバイクに注意しながら、雑踏を前進する。

そのうち、信号の角でやたら人だかりの出来ている店があることに気づいた。店の看板には「永楽焼肉飯」と書かれている。焼肉飯を食べさせてくれる店なんだろうと素直に読み取る。たくさんの人が食事しているし、僕らも……と思ったが、テーブルに座ったら良いのか、先に注文をするのかよく分からず。彼氏とモジモジしていると、おっちゃんが「日本人?」と尋ねてくれて、奥から日本語がしゃべれる眼鏡っ娘を連れてきてくれる。台南の人は親切だな。ありがたく彼女に先導され席に着く。燒肉飯(65元)を注文すると、サザンアイランドっぽいドレッシングをかけて食べる小鉢サラダと、お味噌汁。そして程なく焼肉飯が到着。これが予想以上に美味いの。日本でよく食べる焼肉のタレに似た甘口で、柔らかいロース肉。満足度高し!




台湾では食事中にお水が出ない店が多い。「永楽焼肉飯」もそうで、食後、僕らは2軒隣にあるお茶を出す店で烏龍茶などを頼んだ。彼氏が中国語で挑むと、たまたまお客で来ている日本語の分かる現地のおばちゃんがサポートしてくれる。ほんと、台南の人、優しすぎる!

台南を離れるための自強号を待つ間、駅の片隅に台南市役所が福祉でやっているマッサージコーナーを見つけた。盲目のお爺さんとお婆さんが揉んでくれるという。ニコニコと優しそうな受付の女性に費用を支払い、僕らはそれぞれマッサージ台に座る。目の見えない方だから、指先に神経を行き届かせ、探るように揉んでくるのは不思議な感触。お年寄り特有の使い込まれて少し堅くてカサカサした指先は、なんか泣けてくるような優しさだった。

高雄に戻る前に蓮池潭に寄って、龍の口から入って虎の口から出てきたり、水上スキーを楽しんでいる人を眺めているうちに日が傾いてきた。


夜はホテルから歩いてすぐのところにある夜市を訪ねた。餃子が評判の店だそうで、僕らの隣の席ではTVクルーが餃子の撮影を行っているような店。みんな20個、30個と注文するようなのだが、お腹いっぱいの僕らはそれぞれ6個ずつ。逆にお店のおばちゃんがびっくりしていたようだ。モチモチとした餃子の皮の食感を楽しんだ。




台南市に遊ぶ(1) 高雄・台北紀行2015(4)

サンシャインホテルのベッドはよく眠れた。
日本と台湾の時差は1時間。この1時間という中途半端さが早起きを招く。カーテンの向こうは闇に沈んだ高雄港。ミネラルウォーターを口にして、ふたたびベッドに潜り込む。

朝ご飯はビュフェ。
サンシャインホテルのビュフェはちょっと変わっていて、食券は連泊していても翌日分しか渡されない。翌朝目覚めるとドアの下からチケットが差し込まれているので、それをもって行くべし。
トリップアドバイザーの口コミはかなり的確で、サンシャインホテルの朝食ビュフェは「弱い」。食後のコーヒーを飲みながら、なぜだろうと彼氏と議論して分かったのは、色々と並べられているのだけど「軸」になる食べ物がないのだ。例えば、僕らだったら洋食が軸ならオムレツ、和食が軸ならば焼き魚、中華なら……なんだろ??とにかく、オードブルばかりが並んでいるような印象を受けた。せっかくピアノ演奏を聴きながらの朝ご飯なので、ホテルにはもうちょっとがんばって欲しいな。


高雄駅から自強号に乗車した。どうやら指定席でも予約者が現れない限り自由に座っていて良い制度らしい。高雄駅始発の僕らの席には、ご機嫌にスナック菓子をつまんでいる若い兵士だった。チケットを見せたらとびきりの笑顔で席を譲ってくれた。今回、台湾で笑顔の人をあまり見かけなかったような気がしていて、実はこの兵士の笑顔が一番ステキだった。



高雄駅を出発して、田園風景の中を列車は移動して行く。途中何回か停車をするたびに乗客が増え、立ち客でだいぶ混雑したところで台南市に着いた。古い駅舎のある南国の町だった。駅からふらふらと歩く。繁華街のファッション街やショッピングモールの前を通り、その先にある大天后宮と赤崁樓を見学する。鄭成功の銅像かぁ~教科書で読んだ歴史だわ。1月は台湾では最も寒い時期。といっても18℃前後。ローカルの人々はダウンジャケットを羽織ってバイクを飛ばしている。冬の日本から来た僕らにとっては晩秋から初冬の季節。空気は乾燥してカラッとしていて、柔らかな陽光のもとをふらふらと歩く。




台南市には神農街というレトロな小路がある。カフェになっている古民家が建ち並ぶ狭い路地。数組の観光客が散策しているだけで、ちょっとさみしい感じもした。中華風アイコンが並ぶ町並みは、映画の世界に迷い込んだようだ。






高雄の六合夜市 高雄・台北紀行2015(3)

彼氏とつきあい始めた頃、僕はいろいろと相性占いをやっていた。
そのうちの一つに「相手はどういうわけか、あなたの知りたがっていたことを何でも知っている人です」というものがあった。そのときは何のことやらと思ったけれど、つきあい始めて時間が経つにつれ、どういうわけだか、僕の知りたがっていたことをたいてい彼氏が知っていることに驚かされる。

サンシャインホテルを出て、高雄MRT「美麗島」駅で下車した。まだ陽が高かったので足裏マッサージ屋で疲れた足を解してもらった後、六合夜市に繰り出した。

金曜日の夜ということで人の数は多かったけれど、士林夜市のような人がびっしりと密集していて歩くにも難儀する、みたいなことにはならない。道の両脇に並ぶ露店。そのほとんどが飲食店。台湾事情に詳しい彼氏に手を引かれて、あちこちの店を梯子して行く。台南市発祥の担仔麺が、なんか地方色が出ていて旅情を誘う。最後は禿頭のオヤジがヘラを振るっている炒飯を食べて撤収。


















ホテルに戻る前に、高雄のゲイバー「KUMA高熊株式會社」を覗いてみた。なかなかおしゃれな内装の大箱で、高雄のオカマたちが美声を披露していた。李榮浩の「李白」を彼氏はとても気に入ったようだ。