ミュンヘンで鳥居の夢を見て 2011年欧州旅行記-57

ミュンヘン最終日、僕は明け方に奇妙な夢を見た。
社会人になって最初に勤めた会社の上司や社長らと、良く晴れたきれいな空の下、草原の中をオープンカーで走って行く夢だった。口はぱくぱくと動くのだけど、音は聞こえてこない。ふと自分の掌に赤い3つの不思議なパーツが載っかっていて、それを組み立てると小さな赤い鳥居になった……。そんな夢を見て目が覚めると、外はまだ午前6時前。窓の外には薄暗いミュンヘン中央駅の屋根が広がっていた。

彼氏も起き出してきて、交代でシャワーを浴びる。ミュンヘン中央駅に出かけ、フードコートで温かいパニーニとコーヒーを楽しんだ。今日は帰国日で、12時までにミュンヘン国際空港に到着すれば良い段取りだった。荷物をまとめ、駅前からルフトハンザ航空が運行しているリムジンバスに乗り、空港を目指す。前日の激しい雨が上がり、冷夏で空気は凛と冷たかったけれど、石造りの町並みを離れ、緑豊かな郊外の空港へと続く道は、どうしたってセンチメンタルな気分で眺めることになる。

近代的で美しいミュンヘン国際空港で、少し早いお昼ご飯。


食事の後、僕らは空港で別れた。それぞれの飛行機に乗るために。

普段だったら……楽しかった旅行の思い出を抱きつつ、ボーディングゲートに向かうはずだったのだけれど……トラブル発生。税金還付手続きをし、チェックインして、いよいよ出国審査の段階になって問題が発生したのだ。なぜかローマでEU入国のスタンプが押されてなく(僕も変だなあとは感じていたのだが)、「お前はいったいどこから来たのだ?」と検査官に止められた。Eチケットを見せたりしたけれど、「連邦警察の事務所に行って、なんか手続きしてこい」と放り出される。
連邦警察の事務所ってどこ?とインフォメーションで尋ねて、違うフロアーに行ったものの、それらしき入り口は見当たらない。困っていると警官の一団が、無機質な金属製のドアを開けて入っていこうとするので、その中の女性警察を呼び止めて事情を話す。彼女はパスポートとEチケットを持って奥の事務所に消え、戻ってくると「そこのベンチで座って待ってて」と言い置いて消えてしまった。ベンチで15分位座って待っていると、中から男性警察官に呼ばれた。僕の前にはパキスタン人の一家が手続きをしていて、僕もああいう目に遭うのかと思ったら、気が滅入る。日本のパスボートは信用力があるというのだろうか。パスポートのコピーを取られ、書類にサインをし、パスポートに「ローマからEUに入国したことを証明する by ドイツ連邦警察」みたいなスタンプが押されて返却されるだけで済んだ。

再び入国審査カウンターに行くと、今度は「どこからドイツに来たんだ」と訊かれる。エア・ベルリンでナポリからフランクフルトに入り、あとは電車で移動したと言ったが、あいにくエア・ベルリンの半券は預け荷物の中。しばらくにらみ合いが続いたが、なんとか出国することができた。この時点でもうくたくた。出発ゲートの前のベンチにへたり込んでこの写真を撮ったときは、これでやっと帰国できると安堵の思い出いっぱいだった。


ミュンヘンからドバイへ飛ぶエミレーツ航空は、アラブ濃度がものすごく高い。高級ブランド品をたくさん持った一家が何組も見かけた。ドイツ時間で15:45に離陸した飛行機は、地中海をかすめ、大好きな AirShow を眺めていると、メッカを少し過ぎた砂漠の上で夜を迎えた。ドバイには23:40に到着する。深夜のドバイ空港は、旅行客でごった返していた。往きは買い物客もほとんど目にしなかったのに、いったいどうなっているのだろう。手早くお土産を買い、小腹が空いたのでマクドナルドでチーズバーガーのセットを食べる。一人になるといろいろと不便。トイレ一つ行くのにも気を遣う。普段彼氏と旅行をしていて、どれだけ彼に依存していたのか、中東ドバイでつくづく実感させられた。

7月25日 2:50 ドバイ発の機上の人になって、僕はやっと安心した気分でいた。僕の座っていたエコノミーシートに、感じの良い男性CAが働いている。なんとなく直感が働いて、ミールサービスの合間のギャレーに訪ねていってみた。勘は大当たりで、彼氏の後輩で、彼氏が乗務している便にお客さんとして搭乗したこともある人だった。もちろん向こうはびっくりしていたけれど、あとで「お荷物にならなければ、よろしかったら」とお土産までいただいてしまった。今回の旅行は、最後まで彼氏にお世話になりっぱなしだった。

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