今回、ヴァチカン美術館を訪ねるにあたって、僕が一番期待していたのは、この目でAntinous(アンティノウス)を見ることだった。ローマ皇帝ハドリアヌスの愛人で、18歳位の頃、ナイル川で謎の溺死を遂げる。アンティノウスの死を悼んだハドリアヌス帝は、帝国全土にアンティノウスの彫刻を並べたという。だから、あの愁いを帯びた青年像を見かけると、「アンティノウスね」とわかる人にはわかる。
数あるアンティノウス像の中でも、バッカスに擬せられたこの彫像が、僕は一番好きだ。
キリスト教が普及する以前の、ギリシア、ローマの彫像は、男性像に限って言えば、筋肉をがっちりとつけた戦士などの荒々しい肉体や、前回の記事に登場したアポロン像のようなすらっとした青年像、そして天使などのお腹がポコンと出た子供の像がほとんどだと思う。だけど、アンティノウスに限っては、そのカテゴリーから一人外れている。顔立ち、体つき、いずれも……愛人仕様って感じの、独特の色気がにじみ出ている。
こういうアンティノウス像もあるけれど、やっぱりバッカスバージョンの方が美しい。
本当は家に連れて帰りたいくらいだが……彼はこんなに巨大な男子なのだ。
0 件のコメント:
コメントを投稿