午睡のあと 2011年欧州旅行記-20

僕らがベッドから身体を起こしたのは、日もだいぶ傾いてきた17時過ぎのこと。ティレニア海を渡ってくる風が心地よくて、つい窓を開けたまま僕らは眠っていた。やがて夕方の凪の時間帯になると風がやむ。開け放した窓のせいでエアコンが止まり、暑さで寝苦しくなって僕らは目を覚ましたのだった。

フロントから部屋に直行してしまい、ホテルの中も十分に探検していない。手早く身支度を調え、ホテルのガーデンに散歩に出た。

ソレントの高級ホテルは海に面した切り立った崖の上に建てられている。グランドホテル ロイヤルは、ソレントの中では3番手くらいのグレードのホテル。No.1といえば、Grand Hotel Excelsior Vittoria。これはもう、ゴージャスな新婚カップルか、お金持ちの老夫婦が泊まるホテルだと思う。次は、Bellevue Syreneかな。もう客室がロマンティックとしか表現できない感じ。そして僕らの泊まったロイヤルくらいかな。

崖の上のガーデンから、プライベートビーチに降りるエレベータがあった。ちょっと黴臭さと潮の匂いが混じったトンネルを抜けると、ウッドデッキに上にビーチチェアが並べられていた。ソレントには砂浜はなく、プライベートビーチといってももっぱら日光浴に利用しているらしい。海面に近づいて、客室からは感じ取れない潮の香りを楽しんだ。


ホテルを出て、コッレアレ通りを右手に進んだ。バスプールを過ぎ、賑やかなタッソ広場に入る。

僕はソレントの名誉のために、ちょっとメモを書き残しておきたい。南イタリアのホテルを選ぶ際に、僕らはナポリとソレント、どちらを宿泊地にすべきか悩んだ。ナポリは治安が悪く、ゴミが山積みということで彼氏が反対していたこともあって、ソレントになったのだけれど、ネットでソレントについての口コミ、旅行記を調べているあいだは、その評価が真っ二つに割れていることが気がかりだった。現地に行ってみて、その理由が分かった。ソレントは夏の避暑地だということだ。
「ソレント?なにもないつまらない田舎町だった」「レストランも、土産物屋も閉まっていて、ソレントなんかに泊まらなければよかった」などのネガティブな印象を持ったブログや口コミの多くは、冬期にソレントを訪ねたものだった。想像してみればいい。外国からやって来て、わざわざ人気のないシーズンオフの軽井沢に宿泊したらどうだろう。似たような印象を持つに違いない。ソレントは夏に行くべき。エレガントな南ヨーロッパのリゾートで、しかも美食の町。ミシュラン星付きのレストランもかなりあるという。


少し進むと、眼下にはソレント港へと続くマリーナ・ピッコラ通りが見える。かなり深い切り通しのような場所で、つづら折りの道をショートカットするために、またとんでもない階段が崖に刻まれている。その崖の階段の途中に理髪店や、カラオケバー、ディスコがあったりして、不思議な空間を作り上げていた。そのままサン・チェザーレオ通りを進む。土産物屋が左右に展開し、高級ブティックなどもある。レストラン、エノテカも繁盛している。道は途中でフオロ通りと名前を変え、大聖堂のところで僕らは右手に曲がる。


細い路地を抜けたところに、僕たちが目指していたレストランがあった。

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