彼女に恋していました

彼女に恋していました。

彼女がニューヨークから姿を消して5年。音信不通になったあとも、僕らはいつか彼女が戻ってくることを信じていた。

というと思わせぶりですが、先週でしたか、かったるい夏の通勤電車の中で『昴』連載再開の告知を発見してぶったまげたわけですよ。「ええっ!?昴が還ってくるのかよ!」

曽田正人というと『シャカリキ!』『め組の大吾』が有名で、大吾は消防庁のポスターになったりもしていたから知っている人も多いと思う。僕も大吾から「入った」クチなんだ。正直絵柄は彼がアシスタント時代の北崎拓の影響を受けていて、その北崎がけっこう苦手。絵柄が苦手だと放り出すことが多いんだけど、曽田正人のストーリーは熱い! その熱さに引きずられてあっという間に読破です。

彼の描くストーリーは天才の物語です。サブキャラクターたちとは才能の土台がまったくちがうというところからスタートしているので、なんてかぶっちぎりなんです。
それでも大吾のときは恋愛の要素が含まれていたから、まだ読者が親近感を感じることができた。ところが。問題の『昴』は、もう読者もサブキャラクターも主人公について行けないんですよ。天才の神業を見守るだけ。彼女の苦悩を見守るだけ。彼女が壊れてゆく様子を見守るだけ。これだけある種の拒絶を感じながらもストーリーを追いかけさせてしまうのはたいしたもの。当初、青年誌でバレーダンサーの話を連載するって企画に度肝を抜かれたもんですが、一コマ一コマから立ち上ってくる狂気を、現在の少女マンガ、女性誌で受け止めるのは難しかったんじゃないかといまでは思います。

「才能の無い人の努力する姿を見るのはつらい」と発言した天才ダンサー シルヴィ・ギエムの存在を知ったことが、昴執筆のきっかけだったとか。
きっつい発言だけど、事実ですね。努力はすばらしいけど、その天井は天才の見下ろすはるか下の位置にあるんでしょうから……うわ、自分で言っていて凹む(笑

彼女を見ていると、「がんばれ、女の子」って声をかけたい気持ちになります。

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