出雲大社とエトセトラ

晴れ。33.4℃/26.5℃/42%/691day/13900(+0)

ただいま戻ってきました。3日間で2,000kmの強行軍でした。
西に向かってスカイラインを駆りながら、ふと思い出したのは"BANANA FISH"の第8巻、英二がアッシュに日本行きを勧めるエピソードだった。

英二:出雲って神様の国なんだぜ
アッシュ:ギズモ?
英二:ちがうよ。それじゃグレムリンだ。
イズモだよ。イ・ズ・モ

こんなセリフがやりとりされる1シーン。このあと、表だってはBoysLoveマンガではないとされるこの作品の中で、アッシュが英二をいかに深く愛していたのかを示すエピソードが待っているんだが、それも含めて、僕はこのお話がとても好きでした。

それだけの理由で……という事はないのだが、僕にとって出雲はちょっと特別に好きな場所だったりする。世界にいくつかあるパワースポットと呼ばれるスピリチュアルポイントであることはまちがいないような気がするんだよね。

今週末、どうしても出雲に行かなきゃならない気がして、急遽予定を組んでクルマを西へ飛ばしました。なんというか迷信っぽい話ですけれど、穢れに触ってしまって気持ちに曇りが生じたような気がしました。それに浸食される前に祓いたいという感じ。

とはいえ、今回はいろいろと無鉄砲な予定を組んでしまい、ヒーヒーと苦しんだ3日間でした。こちらは本郷SAで見かけた強烈なカレー。実物を見てもらったら納得してもらえるでしょうけれど、このサイズ、このボリューム、トッピング……最強かもしれません。もちろんオーダーはしていませんよ。

初日は高槻市に宿泊しました。

翌朝6時に高槻市を出発して、ひたすら西進します。
中国道、米子道、一般道とだいたい300km弱。途中高速道路をバンバンすっ飛ばしますので、当初カーナビが予定していたよりも1時間以上早く、11:00に出雲大社に到着することができました。

出雲はスピリチュアルエリアだと思います。具体的にどの位かと表現することは難しいのですが、出雲ドームから大社に向かって進んでいくと、目に見えない結界の中に入ってゆくような感じがします。こう、なんというか、自分に憑いていたイヤなものがはぎ取られて清々しい心持ちになってゆきます。

クルマを駐車場に停めて、本殿に向かって歩いてゆきます。駐車場から本殿までの短い距離を歩いていく間に、僕はどんどん気分が良くなってきます。ずばり「愁眉が展く」というのはこういう感覚なのだなと実感できるのです。
こちらが本殿正面付近の光景→

クルマで移動してくると、途中の山中でいろいろな植生を見ます。そのほとんどは杉であったり、竹林であったりするのですが、出雲大社に来るとその背後の山には松が多く植わっていることに驚かされます。その山の上を細長く雲がたなびき、鳶がヒラリヒラリと舞っている光景ののどやかさが、顰めていた眉をほどき、それにあわせて目を大きく見開かせてくれるのかもしれません。

お賽銭をあげ、型どおりに二拝四柏手一拝すると一仕事終了。あとは本殿の周りをぐるっと一周します。青空に社殿が良く映えて、とてもいい光景。

さて、腹も減ったしで、名物の"出雲そば"を食べに行きます。


 駐車場を出たすぐのところにある"八雲本店"でお約束の割子そばをいただきます。割子5枚をオーダーしたわけですが、男性だとこれくらいは必要です。女性だと3枚くらいで十分かもしれませんね。
割子そばは、出雲そばの上に細切りの海苔と紅葉おろしが添えられていて、そこに蕎麦つゆを垂らしてススススッといただきます。関東者には紅葉おろしでそばを食べるという風習がないのですが、これがピリッとアクセントになってとてもうまい。自宅でも挑戦したくなるうまさです。

12:30頃、八雲を出て、前回行けなかった日御碕神社が8km先にあることを知って、ちょっと無理があると思いつつもクルマをまわしてみました。
日本で一番古い歴史を持つといわれる神社はいったいどれほどの場所なのだろうかと気になっていたので。


潮風がねっとりとまとわりつくような暑さのなか、目的地の神社は人影も少なく、あっけないほど静かな場所でした。おおーこれかぁ~と感心しつつ参拝、そして撤収。
でも、うん、観光客の少ない場所っていいですよね。

スカイラインに戻って、今日の宿泊先をインプット。最短ルートを表示させて「うぎゃ~」と思わず叫んだ。走行距離500km以上。
「ありえない!」と言いつつも、とにかく予約を入れてある宿を目指して走るしかありません。再び米子道→中国自動車道→名神→北陸道と走りに走った。13:30頃日 御碕を出発して、それでも夕方18:30に金沢に到着したのです(笑)。途中どれだけすっ飛ばしたのか偲ばれますね。

こちらは韮山SAで食べたソフトクリーム。→
年間10万本を売り上げるヒット商品なんだとか。


そして今日、日曜日。
8:00にホテルを出発して、とにかく初めての金沢を素通りはないだろうということで、最低限の観光はしていこうという事になりました。まずは朝っぱらから武家屋敷跡。まだおみやげ屋も開いていない時間帯にフラフラと散策です。
角館の武家屋敷とはちがって、あまり武家屋敷っぽい感じはしません。時間帯にもよるのでしょうが映画のセットを見ているような感じがします。30分ほどかけて水量たっぷりの大野庄用水を横目に見ながら、土塀をめぐらした屋敷のまわりを散歩します。

当然つぎは兼六園でございます。


加賀百万石といえば兼六園と僕は勝手に思っているのですが。
まずは入り口でチケットを買って奥へ進んでいきます。
とにかく今日は暑くて、ぶっちゃけ直射日光の下をうろうろと歩いている状況ではないと思うのですが、とにかく敷き詰められた砂利を踏みしめて、神妙な面持ちで庭園奥を目指しま す。岡山の後楽園とちがうのは、松がたくさん植えられていてオープンスペースっぽいところが少ない点でしょうか。個人的には後楽園のあっけらかんとした方が好きなのですが、雪の降る季節になるとしっとりとした風情になるのかもしれませんね。
こちらは霞ヶ池を撮影したもの。


兼六園に1時間ほど滞在したあと、金沢最後の訪問地"ひがし茶屋街"に向かいます。昔のお茶屋さんの風情を残した場所で、観光客に人気が高いわけは写真写りの良い場所だからだと思います。
実際歩いてみると全長どの位だろう……300m位だろうか。ほんの一角だけがタイムスリップしたような街並みが残っている。
すごいと言えばすごいが、拍子抜けすると言えば拍子抜けするかもしれないな。

こちらは茶屋街入り口の紅色をした建物。
ちょっと印象的。

こちらは茶街から一本奥まった小路にあった駄菓子屋?
レトロっぽいコーラの看板が雰囲気を出していたよ。

金沢を出たのが11:00頃だっただろうか。
カーナビによると自宅への道は金沢を出て、北陸道→上信越道→関越自動車道→外郭環状線の約480kmというハードコース。ただ途中長野を通過するってのはおもしろいと思った。僕的には未踏の地富山もすごく気になるんだけど、お昼ご飯は長野でそばでも食う?という話になったので、ひたすらスカイラインを東に向かわせた。

立山を横目に富山を過ぎて、やがて上信越道に入ったところで「小布施によらない?」という話が出て、「北斎の肉筆画を見るのも良いね」と途中下車。
小布施といえばもちろん北斎も大事なんですが、なんと言っても"桝一市村酒造"が有名だから一度訪ねてみたかった。もうちょっと言うと、セーラ・マリ・カミングスさん肝いりの"蔵部"でご飯を食べてみたかったんですよ。(笑

13:00に小布施に到着して、蔵部に行く。ここは夜は当然予約が必要。昼間も予約が望ましいとされている店で、果たして飛びこみでメシが食えるのかどうかまったく勝算もなかった。「2名様ですか……カウンターでよろしければ、すぐにお通しできます」という答えに「ぜひ。よろこんで」と言ってしまいました よ。
ライティングを効果的に配したカウンターの先には、竈をメインに据えたオープンキッチンが展開されていて、中で働く料理人の動きと相まって ちょっとしたエンタテインメントだ。ここの空間デザインは東京のパークハイアットのインテリアデザインを担当したジョン・モーフォード氏が手がけていておしゃれ。

で、料理の方。寄り付き料理だそうです。


オーダーしたのは"信州牛ロースの重ね焼き"
脂ののった信州牛のロース薄切りを何枚か焼いたものを重ねる。それを食べやすいサイズに切り分けてありました。なかなかうまい。
それを引き立てているのが竈で炊いたご飯。お米の質では普段食べているコシヒカリの方が断然勝っているんですが、竈炊きには勝てませんね。ふっくらと炊きあがったそれはたしかに美味でした。

さて、葛飾北斎です。
小布施には北斎の肉筆画があると言うことは聞いていました。
北斎の浮世絵については誰もが知っているところですが、肉筆画といったら実際どうなんだろう……程度しか認識はありませんでした。
対面してみて「やっぱり北斎は天才イラストレーターだな」と唸るしかありませんでしたね。浮世絵になってしまうとある程度大量生産を前提とした構図であり、線の固さになってしまうのは仕方ないと思うのですが、逆に肉筆となると線の動きの優美なこと、色遣いが柔らかく華やかなことに圧倒されましたね。

そして鮭の切り身のうまそうなこと。


この絵が魚売り場に並べられてあったら、ついつい手が伸びてしまいそうだ。

また冨嶽三十六景の浮世絵も展示されていたので、あらためてじっくり鑑賞させてもらいました。キリスト教宗教画のヘブンリー・ブルー、ゴッホの悲しみに満ちた蒼についてブログでも書いてきましたが、今回新しい発見 をしました。しっとりとした茄子紺(?)の碧……この深い紺色の水面からやがて大気にほどけるように薄くグラデーションするさま、「神奈川沖浪裏」の浪に使われているような命が秘められているようにほとばしる碧、いずれも息を呑むすばらしさだってことを教えてもらったのが大収穫。天才の技ですね。


そのほかにもいろいろな肉筆があるわけですが、こんな天才絵描きと付き合っていた人たちは、さぞ楽しかったのだろうなぁと想像しながら自宅へ帰ってきました。

クルマから降りるときに確認したところ、総走行距離は2043kmでした(笑。

0 件のコメント:

コメントを投稿