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文庫本から視線を持ち上げると、いつの間にか電車は地上に出ていて、「かがやく理想、燃えあがる夢」というけったいなスローガンを掲げた小学校が目に飛び込んできた。今日は世田谷美術館まで出張ってきたのだ。
目的の美術館へ行く前に、ちょっと早めのお祝いだけど、ということで、新百合ヶ丘の"Curtis Lake"というフレンチレストランでごちそうになった。釣り堀を横目に見ながらキャットフィッシュのフリッターという、ちょっと変わった魚料理をいただいた。白身の魚に赤唐辛子を刻んだソースが添えてあって、ちょっとアジアンテイスト?って感じだ。
昨夜も、ちょっと早めのお祝いだけど、ということで、すき焼きをごちそうになっていた。肉をがっついたおかげで、土曜日午後にみっちりと走り込んだ努力は軽く吹っ飛んだような気もするな。ヽ(´ー`)ノ
さてと。今日の目的は、"ルソーの見た夢、ルソーに見る夢"だ。
これを見るために砧公園まで出かけて来たんだ。
"アンリ・ルソー"と、「素朴派」に連なる画家、そして彼の影響を受けた何名かの作家の絵が並んでいた。僕はルソーが好きだ。改めてそう思う。
一方、悪いけれど「素朴派」で括られている他の画家は「はっきり言ってヘタ」だと思う。彼らにあんまり見るべきものはなく、ルソーの影響を受けたとされる人たちの作品も、くすんだ暗い画面にルソーっぽいものが並んでいるだけだ。ルソーが独創的すぎるので、その模倣がなんて惨めなこと。ちょっとかわいそうに思ったくらいだ(大きなお世話か)。
ルソーの前にルソーはなく、ルソーの後にルソーなしという感じだろうか。
鮮やかな色調(と言っていいのかな?)。才能があるのかないのかわからないが、まったく腑に落ちる中間色の使い方。書き割りっぽい背景。不思議なモチーフたち。
彼が描いたパリの風景は、実物を見た人間から言うと、なんというか「LEGOブロック パリシリーズ」みたいなものがあったとして、それをスケッチするとルソーになる、みたいな感じがする。背景は書き割りっぽく、建物などには一切のウェザリングがなく、ひとつひとつのオブジェクトがミニチュアめいていて、ファンタジーっぽい絵だ。
その印象は、マンダリンオレンジが鮮やかな"熱帯風景、オレンジの森の猿たち"を見た時、確信に近いものとなった。ルソーは一度も熱帯地方に行くことなく、熱帯の絵を描いた。植物は植物園へスケッチに行き、動物は動物図鑑を見ながら描いたという。
なるほどねー。だから画面全体がミニチュアを寄せ集めた箱庭のように見えるのか。僕の好きな木々を激しく揺さぶる風のながれもなければ、空の色も単調なのか。すっごく納得した。
だとしても、ルソーは立派なもんだと思う。
見ていて気持ちが落ち着くこの不思議な感覚は、彼独自の色彩によるんだろう。
僕は彼の描いたグリーンが好きだ。
他の模倣者たちは、この色彩感覚の部分でルソーに追いつけていない。
彼らはルソーほど単純化ができていないし、ルソーほど箱庭に徹し切れていない。現実の投影にルソーの模倣を持ち込むと、とたんに安っぽくなってしまう。なるほどな。
アーティストが独自性を追求する理由がよくわかった。
模写は良い。でも模倣は惨めだ。
オリジナルが偉大なほど、模倣の惨めさが際だってしまう。
ふむ。モノ作りはいろいろと大変だな。
ルソー好きな人は、世田谷美術館まで足を伸ばしてみてはいかがでしょうか?
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