19:30 東京 八重洲にて

晴れ。15.3℃/6.0℃/38%/834day/2740(+120)

19:30 東京 八重洲。スタンド形式のパスタ屋のカウンターに腰掛けていた。
疲れ切った愛想のない女主人にパスタの準備を申しつけたあと、僕はレイモンド・カーヴァーの詩集に視線を落とした。昨日も書いたが、言葉や活字を飲み込むのは僕にとって食事のようなものだ。一方、コトノハってのは浸透膜で隔てられたあっちとこっちのような関係でもあって、アウトプットしすぎればインプットの水位も下がる。言語中枢を酷使しすぎていったん疲れ切ってしまうと、補充となる言葉の食事も受け付けなくなるのだ。だからー、詩集に手を出すのは言葉の点滴状態まで行っちゃっているということ。ここまでくたびれてしまうと、回復までがけっこう大変。

カーヴァーの"水と水とが出会うところ"は、詩集でありながらオムニバス形式の短編小説のような体裁でつづられている。読みやすいし、感情移入しやすい。時々アメリカの地名が出てくる。ピッツバーグとか。幼い頃、父親の話に出てきた外つ国の響きがよみがえって、僕はしばしば活字から離れてもの思いにふける。
誰もが心の中に"約束の地"ってのを持っている。行ったことも見たこともないのに、なぜかその響きに惹かれてしまうってヤツだ。国際空港の出発案内を見るのが好きだった。そして現地に 行って、さらに国内便の行き先を見るのが大好きだった。ニューヘブンとか、ミネアポリス、マイアミ、ヨハネスブルグとか。ヨーロッパの××ブルグってつく地名には、その響きに見惚れていたりする。そして小さな鞄を提げて、その地方空港行きのゲートに向かうおばさん達の姿を憧れるでもなく眺めていたっけ。

目の前のパスタをつまみ上げながら、そんなとりとめもないことに意識を飛ばす。僕の"約束の地"はどこにある?ってさ……。まったくこのパスタ屋は、都心の一等地にあるのに、メニューに並ぶ数字は郊外のファミレスよりも安い。どうしたらこんな値段でやっていけるのか不思議でならない。味の方はまぁ特筆するほどのものじゃないんだけど。八重洲で小腹が減ると、ふらっと立ち寄るカロリー補充基地。

0 件のコメント:

コメントを投稿