少し前の話になりますが、安倍前首相の辞任を呆然とした気持ちで見ていました。
辞任直後、毎日新聞が実施した世論調査ではこんな状況だったとか。
毎日新聞が7~9日に実施した全国世論調査(面接方式)で、過去1年間の安倍政権を「評価しない」と答えた人は74%に上り、「評価する」は22%にとど
まった。首相のやったことのうち、間違っていたと思うものは「政治とカネ問題や閣僚の失言への対応」が44%で最も多く、次いで「参院選後の続投」の
20%。内閣支持率が30%台に低迷していることに加え、政権の実績への評価が低い点も早期辞任を促したとみられる。
小泉元首相のワンフレーズ政治の後は、いろいろつらかったんだろうなって思う。
東京ミッドタウンのオープニングセレモニーのスピーチ第一声が「東京は楽しい街!」。そりゃ出席者のハートは鷲づかみでしょうが、誰にとっても耳障りのいい言葉は最大公約数的な空虚なものだってことを、聞き手側の国民が忘れてしまってますね。
実績への評価って、そもそもなんだったんでしょう。
小泉内閣の最大の政治的実績は郵政民営化と道路公団の民営化につきると思います。実現の程度はともかく。国富を役人が勝手に無駄遣いするのを止めるってことでしょう。
安倍政権のそれはなんだったのか? 下記を挙げているサイトがありました。
■成立した法案
・教育基本法改正
・防衛省昇格
・海洋基本法による海洋権益確保の根拠法樹立
・教育三法成立
・国民投票法成立
・少年法改正による厳罰化
■外交
・北朝鮮経済制裁・朝鮮総連圧力
・集団的自衛権の解釈変更見直し
・日米豪印4ヶ国同盟、「自由と繁栄の弧」確立による中国包囲網の形成
・中国サミット正式参加を拒否
・アメリカ連邦下院での「慰安婦」決議対策
■内政
・皇室典範改悪の見直し言明
・靖国神社に代わる国立追悼施設 ⇒ 調査費計上を否定
・夫婦別姓 ⇒ 棚上げに
・社保庁解体・非公務員化による自治労つぶし
・公務員削減・給与削減・天下り制限
・在日参政権 ⇒ 棚上げに
・人権擁護法案 ⇒ 法務省官僚が推進中だが、阻止中
・「従軍」慰安婦捏造 ⇒ 国会で国家による強制を否定
2年ほど前ですが、若手ベンチャー企業経営者を交えた夕食会に参加したことがあります。特にアジェンダのない食事の席で、みんなが熱く語り合った話題はなんだと思います?会社経営の自慢話でも、業界の未来の話でも、IPOの目論見でもなくて、劣化する日本の教育問題、とりわけ「ゆとり教育世代」の学力低下問題とその原因についてだったんですよ。僕ら普段は「普通の国民」やっていますが、みんな「やべぇよ」って意識は共有しているんだなって驚いたもんです。そのとき語り合われた諸々の原因は複雑広範囲にまたがっていました。そして、上記の安倍政権がやった仕事の多くがその対策に関わっていたことが、いまになってわかります。即効性のある仕事じゃなかったかもしれませんが、後世きっと評価されるんじゃないかと僕は思ってます。
安倍内閣が総辞職した日(9月25日)の朝日新聞社説はこんな事を書いています。
「この1年、私たちは安倍政権に批判的な主張をすることが多かったが、評価すべき点がなかったとは思わない。
最大の功績は、小泉政権時代に極端にささくれだった中国、韓国との関係修復に果敢に動いたことだ」
僕は日本を憎んでいる隣国と別に仲良くなる必要はないと思うんだ。
いよいよ脅威が顕在化している北朝鮮。それをバックアップしている2国は、日本から見たら北朝鮮の脅威と同一視されても不思議じゃないと思う。アメリカだったらそう考える。いや、日本以外の国の住民はそう考えるのが自然。
中国、韓国が北朝鮮をバックアップしている限り、顕在化する脅威は北朝鮮であったとしても脅威の元は中、韓両国にあり、関係改善をしても彼らが「それ」をやめるつもりが毛頭ないという事実を僕らは認識する必要がある。だったら、ほんとに頼れるのは「近くの親戚より、遠くの他人」じゃないですかね?
「靖国参拝の見送りに対し、右翼論壇や首相のブレーンら身内から激しい批判を浴びせられたのはつらかったに違いない。従軍慰安婦やA級戦犯などをめぐる主張も、以前のように歯切れ良くはいかなくなった。国を背負う首相の立場の重さを思い知ったのではないか。」
僕も以前メディアの端っこで仕事させてもらった経験があるからわかる。
歯切れがいいのは、実行力を必要としない「紙つぶて」を投げている人たちだけだよ。
実行する立場の人は、一歩一歩牛歩のような歩みと苦労を背負う。
紙つぶてをばらまいて仕事はおわり、というわけにはいくまいて。
「われわれは安倍さんを単騎突撃させ、討ち死にさせてしまった」という感想を漏らしたのは、参議院の衛藤議員だったらしい。首相を護りきれなかった責任は、本来ならば保守本流政党であるはずだった自民党と、保守を支持する人間たち全員にある。