海があるってことは、すべてがあるってことなんだ
重病を告知された男が再会するかつての最愛の恋人とは…「海とヘビースモーカー」
新進気鋭バレエダンサーと冴えないバツイチ男のキセキの出会い「海と王子様」
故郷に戻りたくても戻れない男を救う幼なじみの10年愛「蜜柑の海」
海がある町を舞台としたドラマティック長編作品、甘く苦く心に染みいる全3編。
短いスペースで短編集の解説をしようとすれば、どうしても味気ないものになってしまう。原作に榎田尤利が付いているから失敗するはずがないわけで。
海とヘビースモーカーは、重病を告知された男が昔付き合っていた恋人が住んでいた海辺の町を訪ねる話。事業に失敗し、重病を告知され、なにもかも失った男が向かった先、それは昔亡くなった恋人の仏前に挨拶に行くことだった。そこで不思議な出来事が起こるわけだけど、それをきっかけに彼は重病を克服するのか、あの世で彼と再会するのかは明らかじゃない。でも、長年のわだかまりが解けたとき、人は前に進めるんだよね。
海と王子様は、おっさんが海で王子様を拾う話。どんずまりの二人が出会って、王子様が再起して行く話。王子様が太陽の下で開脚ジャンプしてみせるシーンがとても美しい。後日談で、実は王子の方がベタ惚れでカワイイ人であることが種明かしされて、フルコースを頂いたような満足感。
蜜柑の海は、ネタバレになっちゃうのでここでは書けないけれど、喪失と和解、そして再生の物語でしみじみいい話だなーとホッコリしながら本を閉じた。じいちゃん、ばあちゃん話は僕にとっては飛び道具。もう無条件に降参です。
人は失恋した時は海を見たくなると言いますけど、どうなんでしょうね。
失恋したら僕は布団を被って泣くほうなんで、海へ行くという発想がない。いや、失恋して海辺を彷徨っている姿を想像しているのは楽しいんだが、いざ実際に海に行くと「なんか、ちょっとちがう」と思う。海の包容力、海の治癒力は強力で、感傷に浸る前に気持ちが切り替わってしまう。感傷に浸りたいなら、別れた恋人とデートした場所に行って傷口に壮絶に塩を塗り込んだ方が効果あり、だと思う。
1.絵柄
あっさりとした今風。
でもノスタルジックなシチュエーションが上手く描かれていていいと思う。
大人向けの画風なので、高校生同士の恋バナとかには向いていないだろうな。
2.ストーリー
原作が榎田尤利なので、峰島なわこオリジナルでどの程度の力量があるのかはわかりません。田舎というか、大都会以外が舞台になった奥行きのある作品はどんどん出てくるといいと思う。BLでほろっとさせられるのは、結局人間の優しさ、温かさだから。
3.エロ度
蜜柑の海で並のBL程度。その他はほとんどないに等しい。
蜜柑の海は紆余曲折あってのHだから、読者も感情移入できるんじゃないかと思う。
4.まとめ
腐女子の高齢化にともなって、オトナの鑑賞に堪えるBLって必要になってくるんじゃないかと思う。そういう意味で榎田×峰島コンビはがんばって欲しい。
いずれは介護BLとか出てくるんだろうなー。
絵柄 :★★★★☆
ストーリー:★★★★☆
エロ度 :★★☆☆☆
(あくまで個人的主観に基づく★の数です)
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