2011年台湾旅行記-7

MRT台北駅に戻り、僕らは新光三越の中をうろついた。もちろんブランド品なんかを買うつもりなどはなく、目当てはお土産用のパイナップルケーキだ。そして、三越の大きな紙袋をぶら下げて、僕らはシェラトンまで歩く。晩ご飯までしばらく時間がある。今日も足つぼマッサージに行っても良いが……「茶芸はどう?」と彼氏が言う。シェラトンの裏手にある"徳也茶喫館"に行く。

明朝の端正なアンティーク家具が用いられた古風なイメージの店内は、とても落ち着いた空気が流れている。お茶を淹れる際の湯気が店内の空気をしっとりとさせているのかもしれない。日曜日なので、お菓子付きのお得なセットはなかったけれど。

僕が選んだのは凍頂烏龍茶。彼氏が選んだのは金萱茶。凍頂烏龍茶の味と香りはだいたい予想できるものだが、彼氏の選んだ金萱茶は甘い香りのするお茶だった。知識のない僕は「うーん、クッキーの匂いがする」と表現したが、お茶の解説本によるとココナッツやバニラのような香りがするというので、あながち外れではなかったと思う。

お茶は個別のポットに入れて供することもできたが、彼氏が「じゃあ茶芸でやってみる?」と得意そうな顔をしたので、お願いしてみた。僕は初体験だ。アルコールランプで温められたお湯を、中華式の小さな茶壺(急須)に注いで、香りを楽しむ。うちの彼氏は、僕がやってみたいことをなんでもやりこなしてしまう。真剣なまなざしでお湯を注いでいる姿が、かわいらしくて仕方がない。


幸せなゲイカップルがお茶を楽しんでいると、となりのテーブルから「……あ、でも日本語話してるわよ!?」と声がする。年配の女性3人と若い女性の4人がチラチラとこちらを見ているので、日本人ですよ、と声をかけてみた。彼女らも茶芸をやってみたかったのだそうだが、テーブルを見ると個別ポットだった。確かに残念だろう。彼氏の手つきを興味津々で眺めている。

彼女らはシェラトンに泊まっているという。僕らもシェラトンだというと、そうなんですか?と少し驚かれた。まだお若いのに……と言うので、あー、僕は43歳になるんですよと告げると、また驚かれた。若造のくせにシェラトンに泊まっているのかと思われていたようだ。彼氏と苦笑する。

彼女らはツアーで台北に来ているらしく、フリーの今日は烏来に行っていたという。僕らも烏来にいましたよと告げると、また驚く。どこかですれ違っていたかもしれませんねと笑いがこぼれた。

彼女らも明日帰国なので、今夜最後の晩餐を決めかねていたらしい。台北駅のフードコートに行くつもりだというので、最後の晩餐はロマンティックディナーでもどうですか?と言ってみた。今夜のご飯を予約してなかったら、ご一緒してもよかったのかもしれないが、今夜は特別の晩だから黙っていた。

"徳也茶喫館"を出たのは16:00をだいぶ過ぎた頃だった。ご飯の予約は19:00だったので、シェラトン17階にあるサウナと大浴場で、日中の埃を洗い落とした。この施設を初めて使ったけれど、設備は良く整えられていて快適だった。窓の外は紫色からやがて宵闇に覆われ、台北駅のネオンが白く輝き出す様子をジャグジーバスから眺めていた。ディナーに備えて風呂に入るなんて、ちょっと贅沢な気分だ。部屋に戻り、ドレスアップしてから、彼氏が予約してくれたシェラトン地下にある辰園(広東料理)に向かった。

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