Shall we Dance? (前編)

晴れ。どこかの校歌みたいに「風薫る」ってな一日でしたね。

最近土曜日のリズムが決まってきたような気がする。
少し朝寝坊して、ずっと続けているLinuxサーバの構築作業か、図書館で本を借りたりしてお昼くらいになる。午後は買い物に出るか、あるいは借りた本を読み上げてしまうか、あるいはサーバ作りの続きをする。で、夜は映画館でレイトショーを観るってな感じ。
今日もサーバ作りの続きをやっていて。ほんとなかなか進まないんだが、今日は満足のいくところまで駒が進んだので気分は良かった。
で、お約束のレイトショーは今日封切りの"Shall we dance?"。お客の入りは6割くらいだっただろうか。時間の割にはまあまあだと思う。
周防正行監督版は昔観たが、草刈民代の物憂げな顔を駅から見上げている役所広司のシーン位しか覚えていない。どうなることやら……。

結論から言えば、ハリウッドではお客が入らなかったという理由はわかる。この作品を心から楽しめるのは、たぶん、周防版を観た日本人だけではないのかと思うのだ。原作を観ている分、リメイク版との違いを楽しむ事が出来るんだ。

"シカゴの弁護士、ジョン・クラークは穏やかな人柄でオフィスの人気者。家庭には良き妻と子供が待っている。すべてが満たされているはずの彼だが、心のどこかに空しさがつきまとっていた・・・。

そんなある日、通勤電車からぼんやりと外を眺めていたジョンは、ダンス教室の窓辺にたたずむ美しい女性ポリーナの姿に目を留める。彼女は何を憂い、何を探して窓の外をみつめているのか?

そ の答えが知りたい衝動を抑えきれなくなったジョンは、ついに電車を途中下車し、ダンス教室へと足を踏み入れる。それは、人生を見つめ直す冒険の始まりだっ た。最初は彼女の美しさに魅かれていただけのジョンだったが、次第にダンスの楽しさに目覚め、遂には競技会出場を目指すことになる。

ダンスの成功を願うポリーナと観客席に現れた妻が見守る中、ジョンは遂に競技会本番のダンスフロアに立つのだった・・・。"


ストーリーは大筋オリジナルと変わらない。

夕暮れのシカゴの風景はとても美しい。
以前、海外に長くいた友人が街灯のちがいについて語っていたことがあった。日本の街灯は蛍光灯だからエネルギー効率も良いし、まばゆく街を明るくする。でもスーパーマーケットの食品棚のような冷たさがある。衛生的だけど、暖かみはないのだ。
それに対して外国の街灯はオレンジ色の電球だ。その温かい色遣いは街並みに陰影を作りだし、明暗の美しいコントラストを眺めることが出来る。
ジョンがポリーナを見つけたダンススクールの窓は、ライトアップされてはいるが、ちょっと古めかしいくたびれた建物で、ノスタルジックな感じが物語にはぴったりの舞台だと思った。

 ジョンが飛び込んだ先のダンススクールには新入りの男性生徒2名がいて、彼らとともに校長と代理教師のポリーナにダンスの楽しさを教えられながら、競技会出場を目指すようになる。リチャード・ギアは仕事帰りだから、いつもスーツとワイシャツ姿で。どうしてなんだろう、いつもネクタイつけっぱなしなのだ (笑)。

ヒロイン役のジェニファー・ロペスだが「あなたサイボーグ?」ってな感じで、そういう意味ではごつい感じがした。演技もイマイチ。まぁジョンの気持ちの揺れ動く様を追っかけてゆくお話だから、どうでも良いんだけどね。

リメイク版はいくつかの点で得している。
先ほどあげた灯りの陰影と同じく、外国では人種、生い立ち、場合によっては宗教の違いによって重層的な深みを作り出すことが出来る。日本版では蛍光灯と同じで、登場人物はキャラの立ち方で差をつけなければならなかった。同じダンス映画で並べてみると、正直に言えば、"ダンシング・ヒーロー"の方がその奥行きをうまく生かしている。
リメイク版は一部の評論家から"人物の描き方がステレオタイプだ"という指摘を受けている。せっかく奥行きのある話に出来る下地があったのだから、心理描写、性格描写はもう少し丁寧でも良いのではないかと思う。

心理面について、脚本家は「オリジナル版に見られる葛藤は、公然と親密に寄り添うダンスが、日本人に恥ずかしいという気持ちを起こさせることに端を発してい る。もちろん、アメリカでこの設定は通用しない」と前置きをしている。その代わりに「アメリカンドリームを手にした者が自分は不幸なんだ」という資格がない。なにもかも満たされているのに物足りなさを感じる不安、それが葛藤なのだと。

僕は葛藤は二つあるんじゃないかと思った。一つは家庭とオフィスの間で途中下車する冒険。これは実体験としてよく理解できる。
もう一つは"こっぱずかしさ"。社交ダンスってのは、案外アメリカ人にとってもこっぱずかしいものじゃないのだろうか。
校長が「イギリスのダンスだからね」という場面がある。やっぱりアメリカ人にとっても輸入物の踊りなわけで、輸入物の真似ってのはなんにしろ、こっぱずかしさがつきまとうもんだ(アメリカの伝統的なダンスといったらフォークダンスだろう?)。ダンスには型がある。型にはまるのはもっともアメリカ人が軽蔑する事柄の一つでもあるし。

オフィシャルサイトはこちらから。
http://www.shallwedance-movie.jp/