BL漫画レビュー:Voice or Noise

猫はあまり人に懐かない生き物だと言うが、テキサスで出会った"Sindbad"と名付けられた茶毛の猫(アメリカン・ショート・ヘアーと いうらしい)は、初対面の僕にずいぶんと親切だった。飼い主は地元テレビ局のニュースアンカーウーマン。飼い主はいつも忙しくて、彼はひとりぼっちだった。僕も初めての渡米で、周りは親切な人たちばかりだったが心細かった。さみしいもの同士が出会ったんだろう、僕らはすぐに意気投合した。

新聞を取りに外へ出ると、彼は車寄せに止めたフォードのボンネットの上でおどけてみせた。夕方、道の向こうに広がる小川を眺めに行くときは、しなやかな身のこなしでエスコートしてくれる。夜、そおーっと玄関の扉を開けると、ピンと耳を立てて待っている彼の姿があった。いまでもテキサスという言葉を聞くと、メ キシコ湾の生暖かい海水と、僕の足元で小躍りするシンドバッドの姿を思い出す。

 さて、今日取り上げるのは 円陣闇丸 "Voice or Noise"

愛犬フラッピーが凶暴化した!? 獣医の紹介で振一郎(しんいちろう)が訪れたのは、大学助教授・成澤(なるさわ)のもと。彼はなんと、動物のコトバがわかるのだ。成澤と話したフラッピーが、おとなしい犬に戻るのを見て、振一郎は大コーフン!!成澤の無愛想な反応にもめげず、弟子入りしたいと言い出して…!? ハートフルLOVEストー リー。

このあらすじに加えるところがあるとすれば、成澤の家には、おしゃべりな猫"アフト"(ドイツ語で8を意味する)がいる。この子がまた重要なキャラクターなのだ。

そもそも「わたくし動物と会話できます」なんて公言したら、頭のおかしい人と思われるのが関の山だろう。子供の頃はいい。子供の頃は大人には見えない友だちがいたり、大人には聞こえない音が聞こえたりする。僕にはそんな特殊能力は備わっていなかったが、子供の頃は本の表紙から"音"が聞こえてきたものだ。気持ちのいい音、悪い音、いろんな音の中から自分を呼んでいる本を手に取る、そんなことができた。高校生になった頃には聞こえなくなってしまったがね。

成澤が周囲に壁を作っているのは特殊能力を持ってしまった故だ。聞こえなくてもいいものが聞こえる一方で、周囲の人はそれを信じてくれない。このジレンマをきつかろう。
そういう周りに壁を作っている大人に、"大人の打算につきあってくれ"ない子供が飛び込んできて、引っ張り回して、かき乱して。最初はとまどうかもしれない。やがて相手の存在が何よりも愛おしいものへ変わってゆく。心が自然と相手を求めていることを自覚したとき、殻は破られるのだ。

1.絵柄
BLの王道を歩む絵柄といっても良いのではないだろうか。amazon.comの書評では、商業誌デビューによって勢いが失われたというコメントがあるが、けっして悪くない絵柄だ。

2.ストーリー
動物と会話ができる大人と子供のストーリー。って書いちゃうとそれまでだが。
ハートフルな、なかなかいい話です。

3.エロ度
特にエロくはないです。

4.まとめ
大人の打算を打ち壊して突進してくる子供ってのは、なかなか手強いと。現状を変えてゆくのは熱意とひたむきさと、そして盲目か!?

絵柄 :★★★★☆
ストーリー:★★★★☆
エロ度 :★☆☆☆☆
(あくまで個人的主観に基づく★の数です)

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