困惑が憎悪に変わるとき (ちょっとマジメな話?)

今朝もよく晴れたね!

関東大震災の時に起こった虐殺事件って風説の流布が原因だったというが、そんな事件が生じる下地はずいぶん前から作り出されていたんだろうと思う。
小さな我慢や困惑が積み重なって、それは関係者の心の奥底に澱のように沈殿する。なにかの拍子にそれに火がつくと、取り返しのつかない事件に発展したりするんだろう。でも事件は突然起こるものではなく、その兆しはずいぶん前からあったのだろう。

僕 のうちは月極駐車場を借りている。ここはけっこう高級車が停めてある割には街灯の整備が十分でなく、たまに車上荒らしがあったりする。ひどいときは一月に 二度も荒らされたメルセデスがあったりした。うちも別注で付けたオーディオシステム一式が盗まれ、出資者の僕はしばらく凹んでいた記憶がある。

そこで自衛手段にクルマのオーナー達はそれぞれセキュリティシステムを導入した。不審者がクルマを揺すったりすると大音響で警報が鳴り響く仕組みだ。
ところがだ。しばらくして問題が発生した。深夜にこのシステムが一斉に鳴り出すことが続いた。「まじ不審者発生?」と関係者は警戒を強めていたが、しばらく原因は分からなかった。

そ のうち、ある人がセキュリティシステムが一斉に鳴り出す前後に、轟音を立てて走り去るクルマがあるという事に気づいた。早速犯人捜しが始まった。当初は不 審者がうろついているのではないかという噂も立ったが、そのうち問題のクルマを目撃したという人物が現れ、犯人は改造スカイラインを乗り回している町内の デブである事がわかってきた。彼はひとり暮らしをしていて近所つきあいはなし。狭い脇道からニュッと顔を出して、広い通りに出たところで一気にエンジンを 吹かす。スカイラインのマフラーから吐き出される振動が、セキュリティシステムを誤作動させているのだろうとの事だった。しかも夜中にフラフラと出かけて 行くから、大音響の警報機に叩き起こされる近隣住民からもクレームが出始めている。

駐車場関係者は困惑した。問題のデブと面識ある人がい ないこと。セキュリティシステムの誤動作とスカイラインの因果関係が完全に立証されていないこと。でも地元ではセキュリティシステムの誤作動と、デブの空 ぶかしは結びつけて語られている。誰かが本人に問い質してみればよいのだが、実際デブへのパイプを持たない関係者は当惑するばかり。

たぶ ん、そのデブは自分の運転が近隣住民を叩き起こして、問題になっているなど全く知らないんじゃないかな。難しいね、自分のやっている行為がどんな影響を及 ぼしうるのか予見するのは。話はずれちゃうけど、駅のホームや野外にゴミを「置いて行く」人たちって自分たちの行為の尻ぬぐいをしている人たちの存在に全 く想像が及ばないのかな?って、時々不思議に思う。「創造性の欠如」よりも「想像力の欠如」の方がよほど危ういと僕は思う。

町内の話に戻ると、クルマのオーナー達や近隣住民は「あのデブをいつシメたろか」という奇妙な連帯感も生まれ始めていて、不穏な空気が漂っている。困惑が重なり合って、それが憎悪に育つことがなければいいが、と思う。

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