アキハバラ@DEEP

晴れ。

夕方は打合せで五反田にいた。長いミーティングが終わって、小腹が空いたところにMacを見つけたので早めの夕食を取る。17: 30過ぎだっただろうか。ちんたらとポテトを囓った後で、帰社する準備にかかっていると目の前に風船が4つ。んん!?なぜこんな時間に男子高校生が風船を つれてMacにいるんだろう?なんとなく彼の姿を見てると、彼は「風船うぜぇ~よ」って独り言をもらした。なんとなく微笑ましかった。怒りでもなく、投げやりでもなく、当惑、もてあます気持ち。こういう気持ちは若い10代じゃないと感じられないんじゃないかな?彼の姿を眺めていて、ちょっと楽しかった。

 さて、"アキハバラ@DEEP"を読了した。
石田衣良の作品は、時代の空気を濃密に反映させていると言われている。だが彼の代表作IWGPはイマイチのれなかった。石田作品とは相性が悪いのかなぁと一時期敬遠していたのだが、アキハバラ@DEEPを読んでよく分かった。僕は池袋のことを知らなすぎたのだ。

僕 がオタクかどうかはさておき、前職のオフィスは神保町にあったのでふらりと秋葉原を訪ねることが少なくなかった。だから分かる。アキハバラ@DEEPには 濃密な秋葉原の空気が流れている。正直に言う、僕はコスプレカフェも、フィギュアの店も、アニメ専門店にも足を踏み入れたことはない。だが裏秋葉原と言わ れるエリアに流れる空気は分かる。この本に書いてある通りだ。

この本のできはどうだろう?
サイバーパンクもの、SFもの(昔ミュータントが力を合わせて生きてゆくみたいなSFがあったよね。それは新しい進化の形なのだと)、IT技術小説、いずれの側面から読んでも正直いって弱い。AIサーチエンジンのくだりなんていったいいつの時代のお話よ?って感じだ。
で も、缶コーヒーと缶入りおでんをつつきながら、裏秋葉原の路上で発作を起こした仲間の回復を待っている描写はせつない。効率ではなくて、仲間が大切だから 待つことができる。一人では生きていけない。三人で一人前。仲間といることで自分たちは生きていける、という切実さ。ヒールとして出てくるIT企業経営者 (こいつのモデルは孫さんだね)のような分かりやすい経済的規模の拡大とか、暴力による強引な支配とは別の価値観で主人公達は動いているのだ。
だからこそ"明るいテロリズム"なんていう解決方法を選択して欲しくなかった。実際"萌え世代"の彼らはそういう戦いは好まないだろう。この世代の復讐はもっと愉快犯的・知能犯的な方法をとるか、あるいはあっさりとあきらめてしまうはず……この辺は石田衣良の意識とアキハバラ世代の間には大きな断絶があると思う。

全編を通じて流れるせつない空気、愛おしい仲間達と共有するかけがいのない日々を記録したこの作品は、青春小説そのものだ。この作品をハイテク聖地で繰り広げられる青春群像劇として読むのが一番正しい作法のようだ。

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