池田信夫はネタ師か釣り師だと僕は思っている。
時々彼の文章を生暖かく流し読みしているのだけれど、今日はほかのネタとジャストフィットだったので少しうれしくなった。
彼は『NYタイムズの「英語の正義」』というコラムを投稿している。
外国メディアに対する彼の批判は、少なくない日本人が疑惑を感じていることだ。
メディアの看板背負って上から目線で偉そうな事を言っているが、彼らは一時資料にあたりもせずに思い込みの手抜きの記事を書き散らしているだけじゃないか、と。
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NYタイムズが社説で安倍首相の「右傾化」を非難するのは、今度が初めてではない。去年1月の社説でも、日本が「過去を漂白している」と書いた。彼らの根拠は、ほとんどが伝聞と英語に翻訳された二次資料だ。日本の歴史を検証するのに日本語の文献を読まないのは、英語国民だけだろう。ケネディ大使と同じ自民族中心主義だ。
池田信夫blog
http://ikedanobuo.livedoor.biz/archives/51889745.html#more
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実は、同じような「手抜き」記事をエコノミストが掲載していたのに気づいた。
原文は文末に置いておいた。
この下に、日経ビジネスオンラインで翻訳された一部分を掲載する。
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日本で台頭するナショナリズム
映画「永遠の0」のヒットに見る懸念
東京在住のある映画好きの若者は、映画「永遠の0」を見るために3度も行列に並んだが、彼にとってその理由ははっきりしている。
第2次世界大戦末期、米国艦隊を攻撃する神風特攻隊員に焦点を当てたこの映画から彼が感じたメッセージとは、今日の「草食系」と呼ばれる軟弱な若者とは異なり、当時の若い男性は皆、男らしく目的を持っていたということだ。
(中略)
だが、映画も数々の文書も、特攻隊員の本音を正しく言い表してはいない。右寄りの人々は、特攻隊員は自ら志願してお国のために雄々しく死んで行ったと考えたがる。「永遠の0」では、最初はこのメッセージは明確にされていない。
主人公のエリート・パイロットは軍に逆らって何とか生き延びようとする。だが彼は任務を受け入れ、栄光の中で死んで行くことではじめて真の英雄になる。平和会館とそこに収蔵されている一連の文書は、この解釈を概ね裏付けている。
日経ビジネスオンライン
http://business.nikkeibp.co.jp/article/report/20140304/260538/?n_cid=nbpnbo_bv_ru
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まったく酷い偏見と手抜き記事だとため息が出た。朝日新聞にゴーストライターを発注したのか、それこそエコノミスト紙社内に「高山」を飼っているとしか思えない。記者はすごく高い可能性で小説「永遠の0」を読んでいないし、映画すら見ていないのだろう。小説・映画がともに大ヒットしているという社会現象の上っ面だけすくい取って、反日作家と支那・朝鮮のプロパガンダを接続して記事をでっち上げたようにしか見えない。
「永遠のゼロ」はゼロ戦パイロットたちの目を通して、大東亜戦争を俯瞰しようとする試みだ。その歴史的事実の列挙には、特になにか特定の思想に基づいた偏りがあるようには思えなかった。だから、左翼と支那・朝鮮、そして欧米は「宮部久蔵」のキャラクター造形と、それに涙する日本人に噛みつく。右傾化、極右だと。実は宮部久蔵のキャラクターこそが作家の反戦主張そのものなんだけど。支那・朝鮮はそもそも日本に難癖つける事が出来れば対象は何でも良いので、原典資料に当たる気もないのだろう。しかしイギリス系の新聞記事が、この程度だとは情けない限り。
映画は原作のエピソードを完全には拾っていないので、映画だけだと意味がよく分からない箇所がででくる。小説としての「宮部久蔵」に限って言えば、批判するつもりならば「プロローグ+エピローグ」、第5章ガダルカナル P,241~243、第6章ヌード写真 P,290~293、第8章桜花 P,393、第9章カミカゼアタック P445~446、第12章流星は最低押さえた上で行うべきだ。また、百田尚樹自身は戦争について、軍隊について、ざっと見たところ第7章狂気 P,335~337、P,363、第8章桜花 P,394~399、P,413~414、第9章カミカゼアタックではジャーナリズムを批判、第11章最期 P,513などで繰り返し批判している。この程度のピックアップでも、「永遠のゼロ」が戦争賛美・特攻美化であるなんて結論は導き出せないと僕は思う。
なぜ死ぬ事から逃げ回っていた宮部久蔵が、最後に死を選んだのかは、僕にはある程度明示的に描かれている気がした。原因は第9章カミカゼアタック P445~446に書いてある。
エコノミスト紙は「主人公のエリート・パイロットは軍に逆らって何とか生き延びようとする。だが彼は任務を受け入れ、栄光の中で死んで行くことではじめて真の英雄になる」と書いたが、この記者は何も分かっていない。教え子がばたばた死んでゆく様子に精神的消耗(たぶん肉体的消耗を含め)していた宮部久蔵(ここは岡田准一の演技が上手かった)が、大石賢一郎に命を譲ったのは、栄光でもなんでもなくて、優しさだったと僕は理解している。宮部を「日本に必要な人です。死んではいけない人です」と身を挺して敵機から庇い負傷した教え子が大石だった。特攻すれば「十死零生」。それだったら生還するチャンスを譲ってやる、一度はお前に助けられた命だから。そんな心境だったのだろう。
映画の最後で岡田准一の笑顔ともつかぬ表情が理解できないというが、原作のエピローグで米兵の口を借りて答えは提示されている。
まあいろいろ書いたけれど、永遠のゼロは戦争賛美、特攻美化じゃあない。
読まずに批判するのは最低だ。
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Japan’s right wing
Mission accomplished?
A film about kamikaze pilots gives a worrying boost to nationalists
Mar 1st 2014 | TOKYO | From the print edition
ONE young filmgoer in Tokyo was clear about why he was queuing up for a third viewing of “Eien no Zero”, or “The Eternal Zero”. The message for him in the film, which is about a group of kamikaze pilots attacking American ships at the end of the second world war, was that young men in those times were manly and purposeful in contrast to today’s “herbivorous” youth. The tokkotai, or “special attack force”, as the pilots are known, have long been controversial but never has their story been so popular at home. “The Eternal Zero” (named after the type of plane flown by the kamikaze) is likely to become one of the most watched Japanese films ever.
Another viewer, Shinzo Abe, the prime minister, declared himself “moved” by the film. Naoki Hyakuta, the author of the best-selling novel on which it is based, is close to Mr Abe. Last year Mr Abe chose Mr Hyakuta as a governor of NHK, the public broadcaster. Mr Hyakuta’s beliefs are right-wing even for a conservative and, while campaigning for another right-winger, Toshio Tamogami, in the race for the governorship of Tokyo this month, he declared that the massacre of Chinese civilians by Japanese soldiers in Nanjing in 1937 “never happened”.
As “The Eternal Zero” has packed cinemas, Minamikyushu, a city in southern Japan, has also been doing its bit to rile the neighbours. It has submitted documents from kamikaze pilots to UNESCO for inclusion in its “Memory of the World” register of important papers and manuscripts, which includes Magna Carta and the Declaration of the Rights of Man. Among the artefacts are pilots’ farewell letters, diaries and poems from the city’s Chiran peace museum, a memorial at a former airbase from which hundreds of kamikaze sorties departed.
Both the film and the collection of documents misrepresent the pilots. The right wing seeks to present them as willing fighters who died heroically for their country. In “The Eternal Zero”, the message is at first subtle, as the protagonist, an elite pilot, tries to subvert the military by trying to survive. Yet he becomes a true hero only when he accepts his mission and dies in a blaze of supposed glory. The museum and its collection of documents also broadly support this interpretation. But Emiko Ohnuki-Tierney, a historian, says most recruits were in fact forced to volunteer. She wonders whether the pilots’ letters in Minamikyushu’s submission were censored by their superiors at the time of writing, or written under duress.
South Korea has objected to the move and China has reacted with predictable fury. The authorities in Nanjing say they will again send documents which prove the massacre of 1937 to the same UNESCO register. And there is good reason for China to pay attention to Mr Hyakuta’s view of history: it is succeeding beyond the box office. With Mr Hyakuta’s backing, Mr Tamogami, who has also denied Japan’s historic aggression, did surprisingly well in the Tokyo election, winning nearly a third as many votes as the winner. Asahi Shimbun, a newspaper, reported that about one in four 20-somethings, especially young men, voted for him.
From the print edition: Asia
http://www.economist.com/news/asia/21597946-film-about-kamikaze-pilots-gives-worrying-boost-nationalists-mission-accomplished