北紀行 2012(2) お昼ご飯を食べに青森県観光物産館アスパムへ行く

青森県立美術館前からバスに揺られて30分。市内に入ると人とクルマが多くなる。あちらこちらで跳人(はねと)の衣装を着せられたマネキンを見かけた。新町通りの突き当たりがロータリーになっていて、青森駅があった。




辺りはこれから大規模な祭りが催される駅前とは思えないほど、落ち着いた空気が流れている。ちょっと拍子抜けしたくらいだった。ほんとうにねぶた祭りはあるのかなと。夢でも見ているんじゃないかと。

僕は空いているコインロッカーを探し出し、RIMOWAのスーツケースを預けた。ねぶた祭りが終わったあと取り出して、そのまま函館へ向かう予定だからだ。

新町通りを少し歩き、三つ目の十字路を右折して海の方に向かって歩く。アスパム通りと呼ばれる広い道の先に、三角形の形をした青森県観光物産館アスパムの姿が見えた。青森県立美術館へ向かうタクシーの中で、僕は郷土料理を食べられる飲食店を教えてもらった。初老の運転手は「じゃっぱ汁」と「貝焼き味噌」辺りが代表的な地場の料理で、アスパムの店が評判が良いと言う。


青森県観光物産館アスパムは、にぎやかな青森の物産館。入り口付近の露天からは、焼きたての海産物にかけられた醤油の香ばしい匂いが漂う。一階はお土産屋。二階はイベントコーナー。観光客でごった返す。

僕は海の見えるエレベーターに乗り、10階にある みちのく料理西むら の暖簾をくぐった。海の見えるテーブル席に案内される。窓の外には客船と、陸奥湾に向かって延びる突堤が見えた。海が蒼い。碧と蒼が混じった海の色。冬は灰色に沈んだ色をしているのだろうけれど、夏の海は肩の力が抜けたような穏やかな表情をしている。







メニューを見ると「当店一番人気」の定食にじゃっぱ汁と、貝焼き味噌の両方が含まれている。これは中おち丼より津軽定食だろう…ということで、烏龍茶とあわせてつがる定食を注文した。

写真左上の、貝殻の上でジュワジュワと煮立っているのが、ほたて貝の焼味噌。その隣がほたての刺身。翡翠色の小鉢が、にしん切込。じゃっぱ汁とご飯の間に挟まれているのが「がっくら漬」
ほたて貝の焼き味噌は、味噌というわりにはやや甘口の味付けで、ご飯にのせて食べるとフワフワとした親子丼かオムレツご飯のようになった。じゃっぱ汁はあら汁。魚の出汁がよく出ている。だがしかし!おいしくて、ホクホク笑顔が止まらなくなったのは、にしん切込だった。岡山でままかりを食べて以来かもしれない、魚の副菜でこんなに幸せな気分になれたのは。すっかりうれしくなってしまった。

女性の店員が「どちらから?」と話しかけてきたので、ついでにねぶた祭りの桟敷について尋ねてみた。祭りの終わったあと、市役所前から青森駅までは徒歩でどのくらい掛かるのかと。彼女は観光用のパンフレットを持ってきてくれて、普段空いているときで20分くらい歩くと言う。混雑をしているともう少し掛かるかもしれないと言った。丁寧に礼を言って、僕は店を出た。

二階まで降りると、津軽三味線の演奏会があった。目を瞑って、激しいビートに耳を傾けていると、その音色の中に津軽平野に舞う雪を感じた。真っ白く視界を塞ぐ地吹雪の激しさと、生々しい人間の情念を思った。それほどに津軽三味線は人間くさい激しさを秘めている。


アスパムを出て、僕はねぶた団地に向かった。

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