2011年台湾旅行記-11

夢のような晩餐を終え、テーブルを後にすると、辰園を埋め尽くしていたお客たちの姿は掻き消すように無く、空っぽの空間を横目に、僕たちは緩く弧を描いて地上へ続く階段を上った。ディナービュッフェで賑わう"キッチン12"を通りかかると、ラウンジの方から歌声が聞こえてくる。一杯飲んで行こうか?ということになり、ラウンジに入る。

テーブルを挟んで向かい側に座ろうとする彼氏を「こっちでしょ!」と隣にソファに引っ張る。頭の上まで届く高い背もたれのあるソファに身体を預け、僕たちはスパークリングワインをボトルで頼み、グラスの中ではじける泡の糸を眺めながら、とりとめのないおしゃべりに興じた。

ナッツをつまみながら飲んでいるので、勢い、先ほどのディナーを思い出す。チリリと苦みを帯びた高麗人参の味。パリパリと皮が印象的だった子豚。北京ダックとはちょっと異なる歯ごたえ。たぶん、一人で贅沢したのは初めてのフカヒレの姿煮。プチプチと舌先で解けてゆく。帆立の滋味が引き出されたチキンソースがけ。現代的な味付け。肉厚などんことアワビ。ナイフを入れるとスッと切れるのに、口の中ではしっかりとした歯ごたえが感じられる。そして付け合わせのブロッコリーが、いい感じにアルデンテ……そんなことを彼氏も考えていたのかもしれない。

ラウンジでは、僕らのよく知っている曲をピアノが奏でている。"I dreamed a dream"、"My Heart will go on"、"Unchanged Melody"、"Close to you"、"Beauty and the Beast"、"I will always love you"……女性ボーカルの声がフロアを満たして行く。5年前、両親を連れてシェラトンに泊まったときも楽しんだけれど、あのときと同じ光景を、いま、彼氏と楽しんでいる。いろいろとホテルを変えるのも楽しいけれど、時が過ぎ、再び同じ場所を訪ねるのもすてきなことだとつくづく思った。

すっかり良い気分になって、僕たちは部屋に引き上げた。

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