海と空と夕陽と…… 芦原妃名子『砂時計』

晴れ。29.0℃/20.2℃/23%/783day/8260(+160)

湿度も低くて、めちゃくちゃ過ごしやすい一日。

関東人の僕にとって、海に沈む夕陽を眺める機会ってあまりない。
房総半島の住民といっても、クルマで外房を移動しているときは夕日は山に沈むものだし、内房を移動しているときはナビゲーターシート側に広がる海を見ているわけにはいかない。クルマの中ではほぼ運転手役なんで、海外でもクルマの中から眺める海に沈む真っ赤な夕日~っての経験したことがほとんどないんです。

といいつつ、1度だけあるんですよ。( ^ω^ )
2年ほど前のG.W.に、米子を目指して島根県を横断していたとき。その日は名古屋を出発して、昼過ぎに京都に到着。亀山市内で遅めのランチを摂ったあと、 丹波を抜けて、国道9号線をひたすら西進していた。鳥取砂丘を通り過ぎたのが16:30頃だっただろうか。ドライバーズシートの右側に広がる日本海。白兎海岸とか、神話時代の地名を横目に、陽は徐々に翳ってゆき、やがて海を深い葡萄色に染めて沈んでいった。東の空は透明な群青色の夕闇に包まれて、その色は 声を上げたくなるほど美しかった。海岸線をトロトロと走る軽自動車の車列にプレッシャーをかけながら、生涯忘れることのできない光景の中にいまいるんだ なって感動していたんだ。

翌日は米子から出雲大社を訪ね、神話の世界を体験。某オーラの泉の人の言葉通り、強力なパワースポットに穢れが洗い流され、身体が軽くなるような気分がしたものです。

と、思い切り前振りが長いんですが、昨日に引き続き読み物紹介。
たぶん有名な 芦原妃名子 作 "砂時計"
タイトルが地味なので僕はノーチェックでしたが、ある人の書評に惹かれて手に取ってみるとこれがすごい。12歳で出会った2人が、出会いと別れを繰り返し、26歳になるまでの過程が描かれた作品。この舞台が島根県なのだ。

東京住みの女の子が田舎の村の、濃厚な人間関係に放り込まれて……って始まり方をするわけですが、わりとすぐに友達ができて、学生生活やら、恋やらに発展するわけですよ。一方で主人公の母親が鬱で自殺したり、主人公自身も成人した後、鬱に苦しんだりする場面もあって、単純な恋話になっていないところがよい。
物語の結末がイマイチという声が結構あるようだ。母親の自殺と鬱というファクターは終始物語の中に横たわっていて、主人公を苛む。だからって、終盤その問題もクリアしてハッピーエンドって単純なオチに落とし込めるかといえばムリ。
僕の周りでも鬱を発症する人が多いし、僕自身も不眠症になったりしたからね。その底知れない怖さっていうの?は分かってるつもり。で、なんというか、物語的にも恋が成就して、心の病気も払拭されてハッピーエンドってオチをつけられないのも分かるんだ。その闇に気づかずに生涯を終えられる人はある意味幸せで、 鬱を体験してしまった人は、人生のなんかしの折りにそれが顔を出すんだよ。その影におびえてというのは言い過ぎだけど、ある一定の距離を置いてそれと一生つきあって行かなきゃならない現実からすれば、このエンディングは妥当じゃないかなぁって僕は思うんだが。

この作品を読んでいて、ドラマ"白線流し"を思い出してしまった。
月9なんかで流しているラブストーリーは、最近ますます薄っぺらくなってきてるからさ。"白線流し"は岐阜県高山市が舞台でしたね。
" 砂時計"は、島根という地方と、そこで繰り広げられる濃密な人間関係を軸に展開する。裏切られたり、傷つけられるのも人間関係。そして救われたり、愛されたりするのも人間関係から。その豊かな人間関係のバックグラウンドに、自然やら歴史やら世代が横たわっている。そのどれもが人間の成長に欠かすことはできない要素だという、そんなあたりまえのことを再確認させてくれる良作だと思いましたね。

また島根の夕日を見に行きたいな。

おまけ。
外出途中のデニーズで、定番の"ミニ・チョコサンデー"でお茶しました。いや、ほんと、これ手軽でおいしいんですよね。

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