BL漫画レビュー:ARUKU『明日屋商い繁盛』

"このBLがヤバイ 2014"第18位ランクイン。
読み手を選ぶけれど、何度も何度も読み返したくなるすごい作品。

事故で家族を失った若草秋緒は、遠い親戚の伝手で古道具屋を買いうけることになった。右も左もわからぬまま商売を始めてみるが、店に持ち込まれるのはいわくありげな物ばかりだし、訪れる客もこの世ならざる者ばかり……。
おまけに店には、友人の天宮そっくりの顔をした、自称からかさおばけの男色家・キッカという遊び人が住みついていて、なにかと秋緒にかまってくるのだが!?


やばい、書評を書くために資料探していたら「大神」見つけて泣いてもうた。
あまりに名曲が多すぎてなあ。。。。

は、さておき、"明日屋商い繁盛"は、読み手を選ぶ作品だと思う。BLを論じている人たちの論評は、どの時代に、どの作品に対して、どの立場から接したかで印象が大きく変わる。そういう意味で、"明日屋商い繁盛"はアラフォー以上の腐女子、いや、貴腐人には刺さる作品だと思う。逆に十代には遠すぎるストーリーかと。

BLのファンタジーものと言えば、竹宮恵子時代から伝統のパンパネラと相場が決まっているけれど、こちらは和風の世界観。鬼だの、妖怪だのが出てくる。

詳しく書けば書くほど陳腐になるので、なにを伝えたら良いか分からなくなる。

ここしばらく"妖怪アパートの幽雅な日常"、"マウリと竜"、そして"明日屋商い繁盛"を読んでいて、「想いは残り、それは受け継がれ、そして巡ってゆく」のだなあと思う。人もどこからかこの世に産み落とされ、そしていずれこの世を去って行く。人間も季節のように巡ってきて、そして巡って行くものであって、恐れずにそれを受け入れて、自然の一部のようになって人生を眺めるのが日本人らしさなんじゃないかなーと。去って行く者らが残した「想い」を受け継いでゆくのが、社会であったり、文化であったりする。
ところが、その「想い」のリレーが上手く機能しなくなってしまって、二進も三進も行かなくなってしまっているのが今の僕らの社会。うまくリレーされた「想い」は、僕たちを強く、優しくする。

そういう意味でグローバリズムに事大するんじゃなくて、もっとも足下に眠っている僕らの強さ、美しさ、優しさを再発見しようよというムーブメントが、サブカルチャーの中から呼びかけられているような気がする。学生運動上がりの評論家らのサブカルチャー=反権力、反体制運動とは相当なズレがある。レコンキスタ運動みたいなもんか??

余計なところに話は飛んだけれど、個人的には達磨のエピソードが大好きだ。

1.絵柄
独特で、好き嫌いが分かれる絵柄だと思う。
なんというか、"妖怪アパートの幽雅な日常"の深山和香の同人版?という感じ。
作家さんが超絶進化すると、尚月地みたいになるのかも。

2.ストーリー
BLという枠でとどめるのはもったいない。だけど、僕らの知らないところでつながっている地下水脈の一つが、BLの形で現れたという解釈ならば納得。しみじみと人生の移り変わりについて考えさせられます。

3.エロ度
若干ある。

4.まとめ
なにか心の琴線に触れる、忘れがたい作品の一つ。こういうものが出てくるから、BLはなかなかどうして侮れない。気になっている方はぜひぜひぜひ!!

絵柄 :★★★☆☆
ストーリー:★★★★★
エロ度 :★☆☆☆☆
(あくまで個人的主観に基づく★の数です)

2 件のコメント:

  1. 待ってました!手に取る以前にどうしても絵柄でパスしてしまうので、感想を聞かせてもらえるのはありがたいです。あと達磨、これは外せない!

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    1. "明日屋商い繁盛"は文句なしですばらしいと断言します♪
      僕もカバーにだまされて買ったしょうもない作品に泣き崩れることもあるんですが、
      こちらは買って本当に良かったと思える作品でした。

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