広島・松山旅行記(18) 道後 湯築の杜 うめ乃や その壱

結論から言おう。
うめ乃やはもっと評価されるべき純和風旅館である。
部屋数8つ。最大収容人数35名。
大正・昭和期に宮大工によって建てられた旅館はリノベーションが施され、日本旅館伝統の美しさを保ちつつ、近代的な設備を備えた宿になっている。道後温泉の宿を決める際にいろいろと検討したのだけれど、ここを選んで正解だった。

美しい庭と、湯築城を借景にして、窓から見える風景は日本旅館の情緒と良くマッチングしている。宮島の岩惣が国際外交に使われる派手さがあるとすれば、うめ乃やは上品な隠れ家。あまり子どもがうろうろしているのは似つかわしくない気がする。まるで上質の絹織物に袖を通し、その肌触りと光沢を楽しんでいるような贅沢な気分が味わえる。






僕らが泊まったのは、6畳に3畳の控えの間が付いた部屋。窓をカラリと開けて、湯築城から流れてくる爽やかな風が楽しめる。広い部屋は開放感があって良いけれど、ちょっと手を伸ばせば彼氏に届く距離感も悪くない。

うめ乃やは割烹旅館と呼ぶべきなのだろうか?
僕らが泊まった日は、一階の大広間で会合が行われていて、長い会議のあとは夕食会となっていた。庭先に半露天風呂があり、そこへは大広間をかすめた廊下を歩いて出て行く。浴衣を着て寛いでいるステイ客と、きっちり服を着込んだビジターが遭遇するのはきまりが悪い。なんというか、プライベートモードの人間と、パブリック空間に居る人間が鉢合わせるのは無粋だ。僕らが温泉に向かおうとすると、宿のスタッフの女性がささっと現れて、大広間の障子を閉め、ビジターの目から僕らの姿を隠した。そういう気遣いはありがたい。廊下の突き当たり、庭へ出る扉の脇には、ハンドタオルが何枚も積み重ねられている。湿り気のないタオルを贅沢に使えるのは本当にありがたい。

道後温泉の繁華街まで、歩いて10分ほど。
にぎやかな場所へ出ようと思えばいくらでも出られるけれど、うめ乃やは思った以上に「お籠もり旅館」だった。いったん部屋に落ち着いてしまうと外へ出たくなくなる。大規模旅館のざわつきとは無縁の静寂な空間。ゆっくりと流れて行く時間の粒子を感じながら、いい時間を過ごしているなあという幸福感にじんわりと包まれる。

窓の外の景色を眺めるも良し。清潔な畳でごろごろしているうちに忍び寄ってくる眠りに身を任せるも良し。宿泊客の数に比べて贅沢すぎる温泉を楽しむも良し。小さなライブラリーでハイソな気分になっても良し。




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