BL漫画レビュー:一ノ瀬ゆま『gift 上』

サブタイトルは「白い獣の、聞こえぬ声の、見えない温度の、」という長いもの。

路地裏で出会った、獣のように獰猛で、美しい男――。
やがて宥がトレーナーを務めるジムに現れ、ボクサーとしての圧倒的な才能を垣間見せた勁は「プロになりたい」とうそぶく。しかしそれは、未成年の彼はジムの寮に転がり込むための口実に過ぎなかった。
「余計な口出しするなら、あんたの秘密をバラす」と脅し、宥の身体を要求する勁。しかしその瞳は欲望に曇ることなく、どこまでも澄んでいて……。

ふたつの魂の、邂逅と宿命の物語、上巻。

Amazonで確認できる限り、2013年以降にコミックスが刊行されている作家。画力は相当ある作家だと認めるが、gift以前に大ヒット作があった気配はない。それを前提に語ると、幻冬舎ルチル編集部は相当にチャレンジャーだなあと思う。
コミケに並ぶ薄い本の多くが二次創作だ。その理由として、例えば少年漫画誌で連載されるオリジナル作品のように、登場人物の設定、時代背景その他、Boys Love以外の部分を作り込むのが難しい、あるいはそれを発表する場(ページ数、媒体)がないという現実があるからなのかなあと思う。もちろん、他人の設定に背乗りするのは楽だという現実もあるだろう。

学園BLは比較的楽だ。読者のほとんどが「学園生活」というものを体験しているから。そんな読者との共有体験のない「ボクサーとトレーナー」という世界を描写することは、十分に挑戦的だ。リアリティを追求するとBL以外の部分が多くなり、連載誌はいい顔しないだろう。リアリティを放棄すると、ボクシングをテーマにする理由がなくなってしまう。ボクサーものでは春日直加の「駆け抜けるなら、消えないでくれ。」シリーズがある。こちらは登場人物達の腹筋はともかく、ストーリーはわりとグダグダで、しかも登場人物の関係がグダグダ。なんというか、熱さが、熱量が決定的に欠けている。

連載誌上で一ノ瀬ゆまにオリジナル世界の構築を挑戦させているルチル編集部はかなり挑戦的な実験をやっているのだと思う。この雑誌は儲かっているからか??

で、giftに戻ると、元プロボクサーで現トレーナーの御子柴宥(みこしばゆたか)は同性愛者。親子で小さなボクシングジムを営んでいる。プロボクサーとして父親の期待に応えられなかった宥は、同性愛者であることを父親にばれることが、とてつもなく怖がっていた。付き合っている男ともグダグダになっていた宥の前に「銀の髪、青灰の眼、白い肌、なんて綺麗で、およそ熱がないかのような-鬼のように美しい獣」白石勁(しらいしけい)が現れる。あとはあらすじの通り。

というか、これだけの設定を処理するだけでも相当の力量が求められるのに、勁自体が児童虐待と性暴行で多重人格持ち。幼い頃からセックスの経験を積み上げてきたけれど、「普通」の育ち方をしていないから、身体は大人でも心は子供のまま。初めは口封じに宥を抱いていた勁は、やがて宥を慕うようになり「プロになれってんならなるし。ベルト獲れってんなら獲る」というようになる。その勁に大手ボクシングジムへ移籍の話が持ち上がり、勁は心のバランスを崩す……ここまでが上巻。

あと、宥と勁のセックスシーン。
昨年だったか、ボーイズラブは「ちんこ」問題に揺れた一年だった。その結果ちんこが全面白抜きになったり、「焼き海苔」4枚状態になったりした。それに対して一ノ瀬ゆまはどう対応したか……。





お見事!エロイ!

てか、ボーイズラブじゃなくてゲイ雑誌に載せて欲しいクオリティ。
てか、ゲイ雑誌の作家にこういうクオリティが出せなかったから、僕はボーイズラブに手を出すようになった。はるかはるか昔、前世紀のことだけど。

1.絵柄
スタイリッシュで美しい。宥が短髪(やや)イカホモっぽいんでゲイ男子の方も受け入れやすいかと思う。ちなみに、本作で絵柄が相当変わったそうなので、以前の作品に手を伸ばそうかと考えている人は要注意。

2.ストーリー
挫折した元ボクサーの前に現れた天才ボクサー。二人が織り成すヒリヒリと熱い愛と闘いの日々という感じか?一部感覚器が閉じてしまってるほどの児童性虐待を受けてきた勁の過去を聞いた宥が「血が逆流する音が聞こえる……勁が本当に本当に他人事のように淡々と話せば話すほど目眩がする。怒りで頭がおかしくなりそうだ」と思う。ああ、ボーイズラブっていいなあと思う。傷つけられる原因が人間ならば、その痛み、苦しみを癒やすのは愛であり、また人間であるという少女漫画のDNAを感じるなあ。

3.エロ度
予想体脂肪率8%~12%の二人が絡み合う描写はとてもオイシイ。
穴と竿なしでもエロ描写の可能性は無限大。

4.まとめ
この二人はちゃんと救われて、幸せになれるのかどうか。続巻が気になって仕方ない。熱き男たちのボーイズラブを求める方々には自信を持ってオススメ。ぷにっとした体つきの男じゃないと怖いというボーイズラバーにはオススメできない。だって男の物語だから。

絵柄 :★★★★★
ストーリー:★★★★☆
エロ度 :★★★★★
(あくまで個人的主観に基づく★の数です)

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