BL漫画レビュー:直野儚羅『泥棒と初恋』

しばらく不作が続いていた直野儚羅。
新作はどうなったか!?

カフェで働く橘 裕(たちばなゆたか)は近所で偶然、高校時代の先輩・桃井篤郎(ももいあつろう)と遭遇した。現在、新進気鋭の画家である桃井は当時から有名人。その他大勢だった自分のことなんて覚えているはずがないと、黙ってその場を立ち去りかけるが名前を呼ばれてパニックに!その後も近所に越してきた桃井を徹底的に避け続ける橘。桃井に決して知られてはならない、過去の「罪」と「秘密」を抱えて--…。

おお、直野成功パターンで来たか!

「過去を引きずる男たちのリベンジ・再会愛シリーズ」3カップル。最初は高校同級生オヤジカップル編。第二弾がタイトルにある「泥棒と初恋」。最初の2カップルはお互い関係はないのだが、3番目のカップルの片割れは、桃井、橘と同窓生で、美術関係者という点で緩くつながっている。

今回、上手いなあと感じたのは、最初にオヤジ・中年カップルを成立させ、彼らが橘裕の恋を後押し(時々厳しいことも言う)つつも、適度にラブラブで登場し続けること。恋を諦めかけていた者に恋が成就したときの幸せをロールプレイし続けているわけで、身近にお手本がいるって大事。それから第一カップルがオヤジ同士で。オヤジねたによくありがちな、「年の差」に卑屈になったり、焦燥する苦しさからフリーなこと。そして全編に渡ってカフェという場所を提供しつつ、ワカモノたちの恋を見守っているのがとても良い。僕自身、やっぱり人間、歳を取ったらワカモノに色々と譲らなきゃならないと思うのだよ。こんな感じで一歩引いて、でも関与し続ける関係性は好きだ。




で、最後のカップルは年の差。ここでは橘裕がサポート役になって絡んでいる。やや年上が卑屈気味だが、まあ悪くない。バックを自主開発済みの美少年にのしかかられるのもファンタジーだろう。

盗まれた絵、誰にも打ち明けられずに抱えてきた秘密と想い、オムニバスとしてバランスと話のつなぎが良くできていて、キヅナツキのリンクスもこんな感じで処理されていたらもう少しわかりやすかったのに、と感じたな。

1.絵柄
直野儚羅クォリティ。脱ぐと結構筋肉質な登場人物たち。彼女のキャラクター造形は何パターンかあるけれど、大型ワンコの橘裕系がもっともカワイイと思う。

2.ストーリー
すでに解説済みだが、最初に中年カップルを処理したのは上手いと思う。年の功、年の幸せ?みたいなラブラブカップルが狂言回しになって、ワカモノの恋愛を見守る感じ。橘と桃井はそれぞれ高校時代に互いの絵を盗んだ過去があり、それで橘は絵を描くことをやめてしまうのだが、コンプレックスの橘に対し「お前の絵を盗んだ時、俺は橘を…世界を手に入れたような気がしたよ」と告白する。絵画って……そういう力があるのか?

3.エロ度
腐女子の皆さんも満足クォリティ。なぜ皆さんバックを開発済みなの??

4.まとめ
直野儚羅ひさびさの良作。登場人物のオヤジが割とイタイ作品が多い中で、これは上手くやってのけた例だと思う。ワカモノはいいの、恋愛に傷つこうが次があるから。おっさんは幸せな姿を曝していた方がいい。それは、希望のある未来だから。

絵柄 :★★★☆☆
ストーリー:★★★☆☆
エロ度 :★★★☆☆
(あくまで個人的主観に基づく★の数です)

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