昨夜の「荒れた飲み会」でアスペルガーを含む発達障害が話題になったので、それ絡みのネタを投下しますね。
「社会性の障害」を測るテストってのがNHKのテレビ番組の紹介にありました。
もし暇だったら考えて、感想をコメント欄にいただけると助かります。。
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大人用のテスト
恵さんの家におじさんが遊びに来ました。
恵さんはお母さんに手伝ってもらって、チーズケーキを作りました。
恵さんは食卓で待つおじさんに言いました。「おじさんのためにケーキを作っているの」。
おじさんは「ケーキは大好きだよ。チーズが入っているのはダメだけどね」と言いました。
ここで質問です。気まずいことを言ったのは誰ですか?
また、なぜ気まずいのでしょうか?
出典:NHK
http://www.nhk.or.jp/tadaima/backnumber/2012/0518/index.html
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NHKの模範解答。
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気まずいことを言ったのは「おじさん」です。その理由は「恵さんやお母さんの気持ちを傷つけてしまうから」です。
ASDの人は、最初の質問で「おじさん」と答えられない。誰も気まずいことを言っていないと答える。つまり、「チーズは苦手」と恵さんに告げることが気まずいとは感じないのです。恵さんの気持ちに立つことができないからです。
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うーむむむむむ、僕にはこのロジックがよく理解できませんでした。
ジャッジしづらい。「質問者の意図」を汲んだ答えは出せますけど。
ってことは、僕も発達障害なのかもしれません。
前述のNHKのサイトでは、発達障害者は「人の気持ちが分からない」と説明されています。また、発達障害者は「字面通りしか理解できず、その裏にある意図が理解できない」とも言われます。僕が上記の模範解答がピンと来ないのは、問題文に情報が欠けていると感じるからです。
「ここで質問です。気まずいことを言ったのは誰ですか?
また、なぜ気まずいのでしょうか?」
まずびっくりするのが、問題文のなかに「気まずくなった」と想像できる兆候に当たる情報が一切ないんですね。
ちょっとここでは引用できませんが、小説執筆にあたっては「誰視点で文章を構成するのか」が大事になってきます。この場合、問題文は「三人称神の視点」。つまり、登場人物の目を通して場面を見るのではなく、あくまでも第三者視点(=神)の目で描写が進みます。執筆者は登場人物の気持ちをモノローグでは語れない。登場人物の頭の中で考えていることを直接描写できないはずなのだ(極稀に超絶技法を持つ作家の場合はできてしまうが)。セリフ、動作、顔色など「外側から観察」できる情報を付けない限り、それは「なかったこと」あるいは文章からは「判断できない」となります。
実際、神の視点で気まずい兆候を示していたのは誰なのか?
恵さん?
お母さん?
おじさん??
もし仮に問題文に、こんな文章がつけ加わっていたら、発達障害の人でも「気まずいことを言ったのは誰ですか?また、なぜ気まずいのでしょうか?」という問いに迷うことはなかったのではないかと思います。
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恵さんの家におじさんが遊びに来ました。
恵さんはお母さんに手伝ってもらって、チーズケーキを作りました。
恵さんは食卓で待つおじさんに言いました。「おじさんのためにケーキを作っているの」。
おじさんは「ケーキは大好きだよ。チーズが入っているのはダメだけどね」と言いました。
それまでにこやかに笑っていた恵さんの表情が曇ってしまいました。
そんな恵さんの様子に気づいたお母さんは、オロオロとしています。
おじさんは立ち尽くしている二人に気づいて、途方に暮れてしまいました。
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ちなみに「あら、チーズは苦手だったの?知らなかったわ~」と全員あっはっはーと笑ってしまいましたという展開だってありえますよね。
さらに、NHKの模範解答に僕は疑問を感じます。
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気まずいことを言ったのは「おじさん」です。その理由は「恵さんやお母さんの気持ちを傷つけてしまうから」です。
ASDの人は、最初の質問で「おじさん」と答えられない。誰も気まずいことを言っていないと答える。つまり、「チーズは苦手」と恵さんに告げることが気まずいとは感じないのです。恵さんの気持ちに立つことができないからです。
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えーっと、いくつか挙げてみますね。
まず問題文に「気まずくなってしまった」という情報を付加した上で整理します。
・気まずいことになってしまった発言の元は「おじさん」
→
これはまあ良し
はたして唯一の正解はおじさんなのでしょうか?
恵さんが「おじさんのためにケーキを作っているの」と言ったら、もともとチーズが苦手なおじさんがチーズの臭いに気づいて、先に気まずい気持ちで「チーズは苦手」と言ったかもしれません。
・その理由は「恵さんやお母さんの気持ちを傷つけてしまうから」です。
→これは元の問題文に「おじさんのいる食卓」とチーズケーキ、またはチーズケーキを焼いているオーブンとの位置関係、あるいはチーズケーキを焼くことによって家の中にチーズの臭いが充満していたなどの付加情報が提示されていないことは、混乱を生み出す原因だと思います。
→その前提条件を欠いた状態で、「チーズが苦手」というおじさんの体質?嗜好などを正直に恵さんに伝えたことに対して「恵さんやお母さんの気持ちを傷つけてしまうから」という価値判断と罰を含む評価は、回答者たちに対してもフェアじゃない。おじさんが「思いやりが欠けている人物」と決めつけるような理由付けはおかしい。
もし、おじさんが今日のケーキはチーズを使ったものという事前知識が与えられていないのならば、「チーズは苦手」と表明することに何ら瑕疵はないと思う。
その上で、NHKが「ASDの人は、最初の質問で「おじさん」と答えられない。誰も気まずいことを言っていないと答える。つまり、「チーズは苦手」と恵さんに告げることが気まずいとは感じないのです。」という解説はちょっと変ではないか? 健常者だったら簡単にわかるはずという、なんか、すごい先入観というか、偏見があるんじゃないかなーって。NHKは「非ASDの人は、最初の質問で『おじさん』と答えられる」と決めつけてるんでしょ? 情報が欠落している設問で、模範解答できない人を「ASDの人は~」と決めつけちゃうのは、危うく強引と感じましたね。
直前の設問「サリーとアンの課題」のように挿絵を添付すれば、こんな混乱は起きなかったんじゃないのかな。