フランス旅行記(2015年) モン・サン=ミッシェルに滞在(3)

モン・サン=ミッシェルは訪ねる価値があるのかないのか。
モン・サン=ミッシェルに宿泊する価値があるのかないのか。
モン・サン=ミッシェルに宿泊するなら島内と対岸どちらが良いのか。

様々なブログやフォートラベルの旅行記に意見が溢れているが、いずれもが正解であるし、間違いであるように僕は感じている。モン・サン=ミッシェルのすばらしさはその外観であって、修道院内部で感動する光景に出会えるかというと、一部好事家を除けばたぶん否だと思う。ヴァティカンのような美術品で飾り立てられた場所ではない。モン・サン=ミッシェルはローマでたとえると、サンタンジェロ城のような立ち位置だと考えたらいい。ライトアップされたサンタンジェロ城は「やっぱりローマに来て良かった!」と思わせる美しさがあるけれど、中身はどうかと尋ねられると「…………」だと思う。

モン・サン=ミッシェルに宿泊する価値があるのかないのかと言われれば、そもそもモン・サン=ミッシェル自体がパリから往復7時間も掛けて日帰りしてまで行きたいところだろうか、となってしまう。とにかく日帰りは「疲れて大変だろうなあ」としか感じられない場所ではある。例えば大阪に滞在している外国人客が日帰りで江ノ島観光すると言いだしたら、そんなに苦労して見るところがあるのかな?と現地日本人としては考えてしまうところだろう?

モン・サン=ミッシェルに宿泊するなら島内か、対岸のどちらか?と問われれば、条件付きで島内が正解だと思う。理由はビジターが帰ったあとの、中世そのもののグランド・リュを独り占めできるから。条件が付くのは島のインフラが古いままなので、バリアフリーとか期待できないところ。石畳のグランド・リュは歩きづらい部分もあるし、キャリーバッグを引っ張ればゴトゴトとひどい音を立てる。ホテルの客室の多くはエレベータのない狭い階段の先にある。大きなスーツケースは自分で運び込まなければならない。だから、健脚であるか、あるいは1泊二日の小さな荷物を持っての滞在ならば悪くはないと思う。大きな荷物を持っての観光ならば、対岸のメルキュール モンサンミッシェルあたりに滞在した方が楽だと思う。

で、なぜ僕らがモン・サン=ミッシェル島内に宿泊したのかと言えば、フランス旅行中日に休養日を作りたかったから。見るところは修道院とお土産屋しかなく、他に行くところがないから。しかも島内に部屋を持っていれば、疲れた時は戻って昼寝をすれば良いから。

そういうわけで、僕らはモン・サン=ミッシェル島内最安のル ムートン ブラン(Hotel Le Mouton Blanc)に泊まっていた。アサインされた部屋はフロントのある建物から少し離れた、なんの看板もない民家のような扉の先にある3階。建物の中にはご老人にはまったく勧められない急勾配の螺旋階段がある。さあ行くぜ!とかけ声をかけて僕らは階段を上った。

部屋はこぢんまりとしていたが、清潔なシーツに包まれた程よい硬さのベッドがあり、十分な量のお湯が出るシャワーブースが備わっていた。窓を開けるとひんやりとした海風が流れ込んでくる。十字架を掲げた小さな尖塔があり、その先に広大な干潟が見える。尖塔の中で鴎が雛を育てていて、時々餌をねだる声が聞こえてきた。





疲れた僕らはベッドでしばらく昼寝する。
鴎の雛たちもうつらうつらしている穏やかな午後だった。

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