フランス旅行記(2015年) ニースでレンタカーを借りてプロヴァンスを行く(2)

僕らの目の前にあったのは、シトロエンのミニヴァン。予約した時点ではプジョーかゴルフのハッチバックタイプの小型車を想定していたので、かなり面食らった。しかも僕はミニヴァンの運転経験がない。取り替えてもらおうとも思ったが、アメリカと違って欧州はオートマ車が少ない。営業所に戻って交換を依頼したら叶ったかもしれないが、直感的に「この車を何とかしよう」と思った。それから荷物を積み込み、エンジンをかけ、各種レバーやカーナビの機能確認、それから車庫入れの車両感覚をつかむための試行錯誤で30分が過ぎた。

あのときは相当テンパっていたと思う。「駐車券がない!」と大騒ぎをすれば、車の外に落としていたりとか。普段落とし物なんてしないのに。カーナビを英語モードにし(これ、非常に重要!)、Sault Villageを指定して駐車場を出る。FinalFantasyのワールドマップ上に出たような気分だった。ものすごい開放感と、そして心細さを抱いて。

カーナビの指示によると、駐車場出たらすぐに右に曲がり、そして坂を下って再び上ったところの交差点にあるランプから高速道路に乗る、だった。Googleの経路情報だと海岸通りをしばらく走ると出ていたので、これは良い情報。ニース市街地は極力走りたくない。「その交差点」は早速現れた。そのまま高速道路に乗れば良い。だがしかし、フランスは一方通行の出口両側に進入禁止の標識が立つ。その交差点から高速道路の入り口は分かりづらい見え方をしていて「進んでいいのか確証が持てない」。しかも僕が先頭車両。外国の高速道路で逆送なんてしたら、相当とんでもないことになることは目に見えている。Go Around! わめくカーナビ、隣で黙り込む彼氏。そんなこんなで何回もリトライをくり返して、20分近くも時間を無駄にする。ついに僕らの前の車がランプに入っていったので、ついて行く。そこからはいきなり時速130kmの世界が広がる。でもまあ、前に進んでいる限りは時速何キロでも高速道路を怖いと思ったことはない。

エクサンプロヴァンスへ続く高速道路は、途中何回か乗り換えをしたり、一時的に下の道を走ったりする。そのときに現れる強敵がラウンドアバウト。日本国内で経験することはほとんどないこのけったいな円形交差点は、信号のない場所で思い切り目の前を左から右に車が横切るわけで、慣れないうちはツライ。カーナビは良くできていて、「次のラウンドアバウトのX番目の道を進め」とか言ってくれる。だけど出損なってグルグル回るようになったら、はたしてカーナビは対応できるんだろうか? 僕らは彼氏がナビの声を聞いていて、「あの道を出て!」とオーダーを飛ばしてくれたので助かったのだけど。あのときは「ランドアバウト3連チャン!?ふっざけんな!!」とか叫んでいたっけ。

エクサンプロヴァンスを通過し、ひたすら高速道路を北上する。フランスの高速道路のコンディションは良く、料金所の標識で惑わされない限り大丈夫だ。いくつか支払い方法があって、レーンが分かれている。カードと紙幣のサインを読み間違え、違うレーンに入ってしまって大騒ぎになったことが何回かあった。後続車が1台くらいだと「しょうがねぇなあ」で済ましてもらえるが、2台、3台となると大事なので、料金所のレーンサインについては事前予習が大事だと思う。

ソー村を目指して高速道路を下り、プロヴァンスの田舎道を走って行く。背の高い糸杉が道沿いに影を落とし、強い日差しに晒されて乾燥した大地と、農家が点在する光景が続く。南仏は蝉の鳴き声がすごかった。空からなだれ落ちてくるような蝉の声は、窓を閉めた車中にも忍び込んでくる。

カーナビからは途中から車がすれ違うのもツライ細い田舎道を走るように指示される。そしてしばらく走って行くと、ラベンダー畑が目に飛び込んできた。


僕らはこの車に乗って移動してきた。

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