高橋秀武『雪と松』:BL漫画レビュー

高橋秀武(ひでぶ)という作家名からして意外性に満ちた本作。
今年の「このBLがやばい」にランクインしてくるだろう注目作!!

「冷てえ目だな…心だけまだ死んじまっているのかね──温めてやるよ」
雪 降り積もる中、脇差を手に、瀕死の状態で倒れていた美青年。そんな彼の命を拾った医者の松庵。互いの名も知らぬまま、結ばれていく二人だが…?

高橋秀武という作家を僕はそもそも知らなかった。
過去作品はジャンプ系が多く、ヤンキー漫画、ヤクザものあたりらしい。

この作品の魅力は後ほど語るとして、一番のポイントは「女もすなるBLといふものを、男もしてみむとてするなり」なんだと思う。ヤマジュンとか、田亀源五郎あたりのホモ・ゲイ漫画とBLはちがう、だけど男が男に感じるエロスや、後述するホモ漫画につきもの(というか、笑わなきゃやってらんねーよ)みたいなギャグ・男の嫉妬を高橋秀武は絶妙なタイミングでぶっ込んでくる。BLとホモ漫画の両立は男性作家から来たか〜とやや感無量。

舞台は青梅街道中野宿から少し離れた村。
漢方医の松庵は、雪の降る夜、喉を切られて倒れていた美しい男を拾う。
松庵は「おめぇさんが死人だったらよかったんだ……引き取り手のねぇ骸はいい銭になるんだよ」と言う。
出て行こうとする男に松庵は「生きた体にも使い道はある……冷てえ目だな。心だけまだ死んじまってるのかね……温めてやるよ」と言って抱いた。


松庵は、その男を「雪」と名付け、死体を作ってこいと言う。
雪はいろいろ迷ったあげくある男を斬り、戻ってくる。
「なぜ死体を持ってこなかったんだ?俺は、その首の傷をつけた相手を殺しに行くんじゃねぇかと、そう思ったんだ。だったら骸を焼いて証拠隠滅してよ、すっとぼけてとんずらしちまえばいい……そう思って」と松庵は胸の内を明かす。ずいぶん遠回りだが松庵なりの優しさだった。そして「俺が骸を焼くって言えばよ……おめぇは必ずまたここに戻ってくると……思ってよ」という下心もあったりで。

それに対して「骸は持って帰れなかった。だったらまた生きた体を抱いてもらおう」が雪の答え。


ややハードボイルドっぽいプロローグの「雪を松」。
いい滑り出しだ。

そして本編「第一夜」に入ると、松庵と雪の生活が始まる。
第一夜のテーマは結局「身体目当て」なんじゃないか?という腹の探り合い。
出会ってから三ヶ月が経った。
春の朝から目合い(まぐわい)、日中の診察が終わった後も雪を抱く。

ハードボイルドだった松庵先生の「地」が現れ始め、嫉妬もすごい。


「おめえさんにその傷をつけたのはどういう奴なんでえ?」
「妬いてるのかい」
「ええ左様ですよ、あたしゃ妬いてますよ!おめえさん俺と寝る前から男を知ってる体だったろう!?」
「馬鹿野郎、そうでもなかったら男の誘いに乗るかい」
「ああしれっと憎らしい!!」

「雪を松」では終始イニシアティブを取っていた松庵先生がおねぇ状態。

「おめえさん最初から俺の体目当てのくせに」
「左様ですとも!体目当てでございますとも!」と松庵キレる。

と言いながら雪の本心は「先生、俺はね、先生と飯食って先生と寝るこの暮らしがとても好きだぜ」なのだ。
このツンデレぶりが小悪魔っぽい。

首に傷をつけた昔の「兄貴」と出会い、復縁と、松庵を殺すことを持ちかけられた雪は、「兄貴」を刺してしまう。ところが「雪を松」とは異なって、骸になるはずの兄貴の命を松庵は救ってしまう。松庵は本心では雪を人殺しにしたくなかったんだろうね。

「先生、俺ね……ずっとここに居てえ……いいかよ……?」

第二話のテーマは、たぶんエロス。
診察を終えた先生に向かって男根を剥き出してにして誘う雪。


せっかくノってる最中に「おめえさんの兄貴のとどっちがいい?」と無粋な問いかけ。
男はこういうの、気にするから(笑)

「えっと……兄貴のほうがでけえかな」
「あいつやっぱり殺しちまったほうがよかったかな」
「でも先生のほうが硬ぇぜ……」

この辺のギャグのぶっこみ方は、ヤマジュンなんかよりもぜんぜん上手。
と言っても、「どちらのセックスが良かったか?」みたいな台詞をBLで入れるのは結構レア。このシーンは言葉責めじゃないから。わりと本音で訊いている。BLだとビッチ設定キャラではないかぎり、こういう比較はあまり見たことない。「リバ」すら嫌悪する腐女子が少なくないし、ここら辺は男・女のセックス観の違いなんだろうと思う。

松庵たちの暮らしている家を明け渡さなければならなくなった。
村から出て行くときは一緒について来てくれるか?との問いが、意外にも「やだ」


雪はこの家と生活を愛していた。
この生活を守るために、雪は地権者に会いに行く。


「支払いは俺の体だ」
文字通り体を張っての取引を申し出る。

代償に桔梗屋のオヤジと寝ることになったのだが……。

「おまえさんのその凛々しいものをあたしの醜い土留色に汚れた後ろに入れておくれ!」
「えっ、そっち……尻汚ねえ……」
とてもイヤそうな顔をするものの、二人の生活のために桔梗屋を掘る(笑)。

おまえはジ●ニーさんか!?と笑いがこみ上げてくるが、抱かれると覚悟を決めてきたらタチって欲しいと言われて当惑っての、こっちの世界では良くあることだが……ここら辺のシリアスからギャグへの切り替えが上手い。
地券を持って帰った雪は「先生、俺……ほかの男と寝てきちまった。俺……もうここにいちゃいけねえか……?」と問う。
抱きしめられて「先生の馬鹿野郎、惚れるじゃねぇか」と雪はつぶやく。

「先生、やっぱり好きだぜ、先生の体。先生のここ落ち着く、硬くてよく立つし」
こういう台詞は女性作家には難しいかもしれないね。

フェラチオする雪で第二話は終わる。
テーマはエロスだが、桔梗屋と寝て、家の地券は雪が正式に手に入れてきたわけだから、この場所(家)は実は雪のもの。「雪さん」という名前を与えられ「今いる俺はここで生まれたんだ。俺はずっとここにいる」と言う男は、体を張って居場所を作ったのだった。

第三話は、雪の過去の話。
色街に生まれて、女みたいな顔立ちをしていると言われ、母親の借金のカタに客を取らされた。
「女にされるのは嫌だった。そのうちここを抜け出して、俺も女を買う側になってやる、そう思ってた。俺は男になりたかった」。だから雪はヤクザになった。威勢がよくて荒っぽくて男らしいから。でもヤクザも厭になってしまった。「先生、俺ァ、男にも…女にも…なれなかったよ。俺は宙ぶらりんだ」。

宙ぶらりんのまま抱いてやる(=いまのお前を受け入れる)という松庵に、雪は「先生、先生よう…俺を離したら殺す」としがみついた。渾身の告白。


雪の前にヤクザ時代の仲間が現れる。
「兄貴」を陥れて、若衆頭の座を手に入れたい。「この世にはやられる奴とやる奴しかいねえのさ」と言うその男に向かって、「おめえら揃って、誰かになる事しか考えちゃいねえ…俺は…俺は、もう誰にもなりたくねぇんだ!」と雪は叫ぶ。

雪にとって、色子時代、そしてヤクザ時代は捨てたい過去だった。
松庵と出会って、名前も変わり、平穏な日々を過ごしている。
それでも過去は迫ってくる。

松庵も親を失い、故郷も分からない。「俺も宙ぶらりんだ」。
「一人ぼっちで宙ぶらりんじゃ淋しいからよ、きっともう一人欲しかったんだ。しがみついてるのは俺のほうかも知れねぇぜ……」

一人じゃ淋しいから。
宙ぶらりんは怖いから。
だから一人よりも、二人。

もしホモ漫画にストーリーがあるからば、もうとっくに追求されていたテーマなんだろうけれど、多くの場合、同性愛者の物語とは、家族(社会から切り離されているわけではない)から切り離された行きずりの人間二人が出会い、居場所を見つけ、共に生きてゆくということなのだ。ホモ雑誌ではせいぜい「出会い」までかなあ。BLでも巻数の関係でなかなかそこまで到達できていない。

「雪と松」の注目ポイントは、JUNEとか、ホモ漫画が語られていたテーマをBLの作法でリメイクしているしている点なのだと思う。ホモ漫画は残念ながら力量のある作家がほとんどいないから、どちらかと言えばJUNE寄りかなあ。JUNEはなあ、寄る辺ない魂が自らの居場所を求めて彷徨う、ヒリヒリする「痛い系」の物語。雪と松庵はともに宙ぶらりんで、確たる居場所を求めているし。ホモ漫画でないのは「雪と松」では「並の男みてえに、所帯を持ったりするんだろうなあ……」というあやうさがあることか。理屈の上では、松庵も雪も異性愛者として生きることは可能だということ。それでも「男同士」の二人が共に生きることの理由を求めてしまうのがJUNE・BLの世界だ。「俺は先生の囲い者でもいいんだぜ」と告げてしまう哀しさ……ホモ漫画ではなかなかここまで到達しない。

それにしても、現在のBLは「結局なにがテーマだったのか」という作品が少なくない。昔の宗教画がエロを描きたい口実であったように、BLは単に男の裸とセックスを描きたいだけじゃないのか?と思うことが少なくない。貶しているわけじゃないんだよ。しかし、BL業界が、コンビニで売られているような、いわゆる男性向けエロ漫画と同一視、同一ジャンル視されたら、それを素直に受け入れられないだろう。いままで何回かBL論を読んだが、男性向けエロ漫画と、BLは同じではないのか?という根源的な問いかけを見たことがない。JUNEまでは、成り立ちと作家・読者からして、たしかに男性向けエロ漫画とはちがうことは分かる(耽美は竹宮恵子からしてちょっと微妙)。だが、現在の「BL」は、フェミニズム系の言い訳を取っ払うと、(メイン)女の創作活動であること以外、なにを目指しているのか……よく分からない。そりゃ「人が生きるにも死ぬにも訳なんかねえよ」という松庵の言葉通り「BLを描くにも読むにも訳なんかない」のかもしれない。そもそもBLってなにか、について深く知りたいなあと思う。

1.絵柄
劇画調……と言えるのかもしれない。
少なくともBLとしては異色に分類されるだろう。
読み手を選ぶかもしれないが、少なくとも過去の「江戸時代物」BLの中でもっとも成功しているのではないか。
力強い線、大胆なコマ割。
時々挿入される和物らしいモチーフがいい。雪であり、松であり、波であり……動きはないのに鯉を添えることだけで雪の淫乱な雰囲気を醸し出せる力量はすばらしい。

雪が降った翌日の、冷たくて、清涼感に満ちた空気に出会うことがある。
血が飛び散ったりするのに、「雪と松」の画面は、どれも凛とした清潔感に満ちている。
これも特筆することだと思う。

2.ストーリー
「宙ぶらりん」な村医者と渡世人ふたりの物語。
美味しい食事やセックスの日常と、斬り合いの非日常が交互にあり、そして二人の男の間に情が育ってゆく様を丁寧に描いている。登場人物を絞り人間関係がシンプルなので、結果として主人公二人に思い入れできる。

本名を知っていても、過去を捨てさせるためにあえて「雪さん」でとおす松庵は、とても優しい男。

3.エロ度
女性作家と男性作家の「エロ」さを感じるポイントが確実にちがうことが分かっておもしろい。
雪は目がエロい、服を着ていてもエロい。こんなエロい雰囲気のキャラを描けるBL(女性)作家はあまりいない。
性器が描写されるのは1回(正確には2回)だけ。あとはのしかかっているか、引きで股間に顔を埋めている絵があるだけ。だが、背中だけでも雪のエロさは充分に伝わってくる。作家の描画力だと思う。

4.まとめ
雪は「ウケ」ではあるのだけれど、けっして「女」ではない。女性的な顔立ちだが、いざというときは体を張って松庵を守っている。だから「雪と松」はBLのお約束通り左側が雪、右側の松庵先生の方がむしろ女性的なのかもしれない。

「このBLがやばい」にランクインすることは確実だと思う。
続巻があるのが、ほんとうに嬉しい。

「雪と松」は読まなきゃ損!な作品だ。

絵柄 :★★★★★
ストーリー:★★★★★
エロ度 :★★★★★
(あくまで個人的主観に基づく★の数です)

しばらく銀座通いが続いてる

日曜、月曜と彼氏が来日していて、月曜は銀座で飲み。
水曜日は銀座でパーティ。だから飲み。

今日木曜日は父の日のプレゼントを買いに銀座apple storeへ行ってきた。
iPadとスマートカバーを買って渡した。

いまのiPad2は6年近く使ってきたからもうボロボロ。
喜んでくれたから、良かった。

最近はなんだろう、気持ちが安定しているというか。
怒りが湧くことも、他人を羨む気持ちもなく。
歩きながら街路樹を渡ってゆく風の音を聞いているだけで幸せな気持ちになる。

そろそろお迎えでも来るんでしょうかね?!
でも、この気分で迎えるならば、それも悪くないなと思うんだよ。


なぜ安倍政権と自民党の支持率が高止まりしているのか?

とあるネット民が「安倍政権と自民党が、有権者の民進党・野党に対する不満の受け皿になっているから」という秀逸な解説をしていた。

森友学園、加計学園、両方ともどうでもいい話。
野党はちゃんと仕事しろ。
スキャンダル暴きだったら文春に。
違法行為を見つけたら、検察と司法に任せとけ。

国会はスキャンダル・疑惑の確認作業に費やしていい場所ではないだろ?
本当に無駄、無駄、無駄。

民進党の支持率が上がらないのは当然だ。
多くの国民が、民進党はまったく仕事をしていないと考えているからだ。
仮に安倍政権が倒れたとしても、民進党が政権与党になることはない。
働かない議員と政党に国を任せる愚を、日本人は痛いほど知ったからね。

他人の足を引っ張るのは仕事じゃない。
ちゃんと国民のために仕事しろ。


この人は何を言ってるんだか。。。。

小指『不純愛プロセス』:BL漫画レビュー

初見の作家さん。
もともと電子書籍で分割配信されていた作品だとか。

「これで見たことぜんぶチャラにしてくんないかなあ…?」
自分が通う大学の講師・内海が偶然男性とキスしている所を目撃してしまった芹澤は、秘密にする代わりに飲みに行こうと誘う。
終電を逃し内海の部屋へと流れた芹澤が目を覚ますと、目の前には自分の”モノ”を咥える内海の妖艶な姿があってー…?

情欲と恋が交差する、ヨコシマでまっすぐな愛のプロセス。

エロに夢みるノンケ大学生
「コレは…本当にあの内海先生なのか…?」

普段は無表情な隠れゲイ講師
「だって君、口でされてみたかったんでしょ?」

なかなか素敵なコピーを背負ったカバーは、若い男にのしかかる眼鏡の男。
戸惑っているようで、実は強い眼差しで見上げている青年が気になって手に取ってみた。

あらすじの通り、コンパの帰り、繁華街の小路で男同士がキスする現場に出くわしてしまった芹澤。
そのうちの一人が、退屈な大学講師(地理学)内海だと気づく。

「秘密」は日常生活に彩りを与えてくれることがある。
「性」が隠蔽(抑圧?)されている日本において、「聖職」教員はさらにそれを隠すことを求められている。
何でもかんでも「オープンリー」にという姿勢もどうかと思うが、目の前に立っている教員が「ホモだったとは…」ってのは、捉え方はどうであれその人間の奥行きが急に広がったような印象を受けるにちがいない。

芹澤は、口止め料にと飲みに誘う。
「金をくれ」じゃなくて、一緒に飲もうよってところがちょっと可愛い。
酔って話すことといえば、彼女にフェラしてくれと土下座したのに振られたという失敗談。
そして内海の家に押しかけて、酒を呑み直そうという。




うたた寝しているうちに内海にフェラされて、口の中で果ててしまう。


「つーか、口でされんのってあんなに…」
気持ち良さを忘れられない芹澤は、「もう1回やってくれたら…忘れてあげてもいいよ」と内海を脅迫するのだった。

まあ、気持ちいいからね、アレは。
「男同士で気持ち悪い」という先入観や、本能的な忌避感がなければ、相手が男であろうと女であろうと気持ちいいことには変わりはない。
性欲に溢れている大学生芹澤にそういう先入観がなかったのが、この物語を成立させているキーだと思う。

内海に何回かヌイてもらっているうちに、芹澤は内海本人をだんだん知りたくなってくる。
内海の家に上がり込んで、芹澤が自分語りをすることもある。




「オレは単純に1人でいるのが好きじゃないんですよ。いろんなトコに顔出してはいるけど、実際みんな付き合いが浅いっていうか…」
「…さびしがり屋なんだね」
「アンタはめんどくさがりだろ!」
「そう、せーかい」

若い男が同じ部屋の中でゴロゴロしている風景は、なんか和む。
それはなんていうか、嫌味じゃない、キレイなものが側にいる快適さとでもいうのか。
それが頭のいい子だったらいい、素直で柔軟性のある子だったらとてもいい。
会話自体にとても意味あるような気がする。

そんな2人の空間に、内海の不倫相手から電話がかかってくる。
芹澤が電話を取り上げてキスしたら、「すげーキョヒられ」た。





ホモの大学講師、フェラの快感に興味本位だっただけの芹澤が、ちゃんと内海と付き合いたいと考えるようになる。

むかーし、むかーし、栗本薫が人物の書き分けができないうちは登場人物を2人に絞れとアドバイスをしていた。
それはよくわかる。
そしてリアリティーもちゃんと持たせろと。
なんでもありのファンタジーをやるためには、読者をねじ伏せられる高い技術がなければダメだと。
それもよくわかる。

この作品が好もしいのは、そこら辺がよくわかっていること。
あくまで主人公は2人。
コンパ好きだから友達がぞろぞろ出てきてもいいはずだが、悩みを相談しているのは1人だけ。
内海の不倫相手もだいぶモブ扱い。
それでいいのだ。
何にフォーカスして、何を省くべきなのか、この作家はよくわかっている。
おかげでストーリー全体に無駄がなく、すっきりとした仕上がりになった。

紆余曲折があって不倫相手と別れた内海がどうやってハッピーエンドを迎えるのか。
なかなかいい着地をするので、続きは本編で確かめてほしい。

1.絵柄
なんつか、少女漫画系BLではない。
なんつか、華が飛びまくる白泉社、エロい小学館に対して、地味にリアルな集英社風とでもいうか。
僕がなんども言ってきた「男に実は女を投影している」BLじゃなくて、いい感じで普通の大学生っぽい芹澤がいい。
こういう普通っぽい男の子が、実は一番エロくみえるんだ。

2.ストーリー
エロへの興味から身体の関係に進んでしまう教師と生徒。
王道といえば王道で、だけどディテールがよく練られているので、良い作品に仕上がっていると思う。



「ごめんね。君のこと散々めんどくさいって言っておいて。僕も…人のこと言えないのにね」
「でもーー俺は先生のめんどくさいところ、嫌いじゃないよ」

良いセリフじゃないですか。
他にもなかなか良いセリフがあって、作家は繊細な言葉選びができる人なんじゃないかなと思う。
あと両想いになった後の芹澤の言葉遣いや、立ち居振る舞いがわりと品を感じさせる。
普通なんだけど、ちゃんといいお家で育てられてきた子なんだろうなあと思わせる。

3.エロ度
年上の男を股間にひざまづかせて、快感と戸惑いにドキドキする芹澤がかわいい。
一方で「毎日部屋でヤってばかりだから俺、棒扱いされてるのかって心配しちゃったよ!」と不安を吐露する姿もかわいい。

4.まとめ
初単行本だそうだけど、いい作品だと思う。
BLのどういうジャンル(属性分けとかではなくて)に位置付けられるべきなのか、僕にはまだわからないけれど、こういうリアル系青春ストーリーはこれからも増えて欲しいと思う。良作。

絵柄 :★★★★☆
ストーリー:★★★★★
エロ度 :★★☆☆☆
(あくまで個人的主観に基づく★の数です)

世界の美しさを思い出した日々

GWの翌週、彼氏とダナンで休暇を過ごした。
帰国して、オフィス勤務に戻ったけれど、深夜仕事があった翌日彼氏と遊んでいたり、週末は父親の慰安でクルマを走らせたりしているうちに疲れが溜まっていたんだろうと思う。

5月22日、軽井沢へ日帰り出張に出かけた。
はくたか553号の出発を待つ間、上野のカフェで密かに「疲れたな」と感じてはいた。




往復の新幹線内でゼルダして遊んだり、新緑を眺めながらふわふわのオムライスをご馳走になったりして喜んでいたんだけどね。

午後になってくしゃみを連発するようになって。
春の遅い長野県だから、今頃花粉症が出たのかな?とか考えていたのだけれど、帰宅して寝込んだ。
39℃近くの熱を出して二日休んだあと、へろへろな状態で一週間を終えて。

翌週5月30日から最後の茅野シリーズに来た。
3月以来何回か訪れたこの町を、僕はだんだん好きになり始めていた。

初日は僕ひとりで仕事に入った。
スーパーあずさ1号を降りると、都会とは違う澄んだ空気に包まれてうれしくなる。
打ち合わせして、ホテルに戻って荷物を置き、一人晩御飯を求めて彷徨う。
ひとりだと居酒屋も敷居が高くてね。
ドリンクメニューに「プロテイン」がある不思議な蕎麦屋に入って、唐揚げをつまみに生ビールを飲む。




葉ワサビを添えた蕎麦を食べ、ホテルに戻る。
この駅の周りには僕が楽しめるような「夜の遊び場」はなくて、部屋の中から家猫のように窓の外を眺めていた。


1時間に上り下り合わせて6本ほどの電車が走ってゆき、その度に踏切の鐘が鳴る。
早い時間から人影はほとんど見えなくなって、時々クルマが走ってゆくだけの静かな場所だった。

朝ごはんは駅そばを食べていたなー。
コンビニ飯は飽きてしまい、かといって朝から営業しているカフェも見つからず。
駅構内のデジタルサイネージから「年金、年金、JAバンクで年金だ〜」っていう呑気なCMを何回聞いたことか。


今回は信州鹿肉蕎麦というものを食べてみた。
まあまあかな。
でもまー、朝蕎麦はもっとシンプルで軽めのやつにすべきだったかな。

駅そばを食べ終えて、少し散歩して、地元っぽいものを探したりして。
「登山計画書を提出しなさい」とか信州っぽいなあと思ったり。


ちょうど彼氏が仕事で来日していたから、駅前のベンチに座って長電話した。
彼氏はいつも元気だ。
電話が終わったら準備して仕事に向かう。

二日目からは同僚が1人加わって、ふたりで作業進行。
仕事が終えたあとは庄屋で盛り上がって。
ふたりともおっさんだからさ、自分の過去の良かったこと、辛かったこと、失敗談で2時間以上盛り上がる。
ワカモノみたいに流行りの音楽や映画、芸能ネタで盛り上がるんわけじゃないけれど、20年とかのタームで話ができるおっさんも悪くないかなって最近思う。
それはさ、「自分自身」で経験して来たことで、噂話でも、どっかの本に書いてある情報ではなくて。
ふたりとも業界が最高に盛り上がった時期を経験していたので、その空気感を思い出して懐かしくて仕方なかった。

三日目は日帰りでさらにひとり合流。
仕事のトラブルでランチを逃してしまい、早めの晩飯でハルピンラーメンを堪能。

そして最終日。
仕事自体は午前中で終わって、茅野駅までクルマで送ってもらうことになった。
正直なところ、この方の運転が荒っぽくて、僕は乗り物酔いに罹った。
あと5km走り続けていたら、絶対吐いていたと思う。

30分後にスーパーあずさがあったので、それで帰れば良かったのだけれど。
気持ち悪い上にお腹まで痛くなって来たので、駅で同僚と別れ、前から気になっていたカフェに入った。
この町に来てからまともな洋食に出会うことがなくて、このカフェだけに期待していたのだけれど、あいにく定休日だったり、営業時間外だったり、ちょっとお値段の張る店に同行者たちを誘いにくかったりで、縁がなかったのだ。

ビーフシチューハンバーグとアイスティを頼んだ。
うん、想像通りおいしい。




窓の外は鮮やかな新緑と透明度の高い日差しがあふれていて、屋内の暗さと美しいコントラストをなしていた。
90分かけてゆっくりと悪心を退治し、僕も帰京する。

普段とは違う、まだ陽の高いうちに帰宅することはなぜか新鮮な気分。
電車の車内から見る風景も、普段とは違う発見が続いた。
普段は気に留めていない建物、緑地帯の鮮やかさ、意外な近さを感じた隣町とか。
高地から戻ってくると、地上の風景も少し異なって見えるものなのか。

最寄駅からRIMOWAを引っ張って歩く。
家の近くの公園に続く道で、5、6歳の男の子に出会う。
ガラガラと音を立てるRIMOWAを引っ張るおっさんが怖かったのか、小走りで走ってゆく。
背中全部どころか、腿の半分も隠すほどの大きなバックパックを揺らしながら。
本人は走って逃げてるつもりなのかもしれないけれど、途中でスキップしてしまったり。
パステルカラーの揺れるバックを眺めながら僕は、世界は美しいなあと、本当に美しいなあと幸せな気分になった。

5月はそんな日々だった。

ベトナム ダナンへ(08)

ダナン最終日。
アジアから帰国してくるときはたいてい朝早い飛行機で出発となり、ホテルで朝ごはんが食べられない。
今回は出発が遅かったので、のんびりご飯を食べてから出発。
我ながら盛り付けが綺麗になったと思う。


ダナン国際空港は新しいターミナルを建設中で、帰国は真新しい建物から出発となった。




やっぱり韓国人が多いのか、韓国人タレントを使った免税品店の看板が立つ。
一応免税品店はいくつかあって、値段のことはさておき、だいたいのお土産は空港で揃う。

帰りの飛行機は翼より後ろの席を取ったので結構揺れた。
ただ、3人がけの席が空いていて、気持ち悪くなった僕はそこで横になって過ごした。

彼氏はというと、やっぱり横になっていたという。
しかも毛布と枕が邪魔の時のTipsを披露してくれた。


さすが、現役クルー賢い!と僕は思わず褒めてしまった。
こういうやり方考えたことなかった。


成田空港へ到着して、ここから関空へ向かう彼氏を見送った。

彼氏と別れたあと、電車に揺られながらダナンの熱気を思い出していた。
次はどこへ行こうか……。
それは彼氏と相談で。

ベトナム ダナンへ(07)

明日は帰国。
ダナンで過ごす最終日というわけだが、僕らは結局グダグダして一日を過ごした。

朝食はいつものようにベトナム麺で。
ベトナムのトウモロコシはちょっと面白いと聞いて食べてみた。




僕らが普段食べているような皮の硬いスイートコーンとは違って、飴のようにねっとりと柔らかいというか、独特の粘りのある食感。品種なのかな?確かに不思議な感じがする。

ホテルスパへ行く。
このホテルに長く逗留して、しかも毎日スパにやってくる男性客は珍しいようだった。

実は初日、到着した時間が遅く、しかも予約が埋まっていてスパを受けられなかった。
翌日、前日スパを利用できなかったから2回利用できないか交渉してみたが断られた。
まあそれはそれでいいんだが、最終日「1回利用できていなかったでしょう?今日もう1回予約を入れる?」と申し出があって、僕らも大歓迎。
ヘッドスパではないのだが、髪を洗ってもらうのが非常に気持ちがいい。
肩を揉んでもらうくらいなら、髪を洗ってもらう方が満足感が高かったな。

ランチのため、Madame Lanの店へゆく。
開け放たれた窓から、ハン河が超えて涼しい風が入ってくる。






ハーブをたっぷり入れて、その香りを楽しみながら麺をすする。
いい感じだ。

Madame Lanを出て、ノボテルの脇にあるお土産屋を冷やかす。
そのあとはHighLands Coffeeで冷たいモカを飲んで、通りを行き交う人を眺めていた。

ホテル近所のSpa Ngọc Linhというスパに寄った。
ダナンに来て二日目くらいにこの店の前を通りかかって、やたらに愛想のいい兄ちゃんが気になっていた。
ここでフェイシャルとオイルマッサージを受けてみた。
この兄ちゃんはマッサージの腕が良くて、凝り固まっていた脹脛がすっきりした。

ホテルの部屋に戻って休憩。
この景色を眺めていられるのは、もう24時間ない。


新しいビルと古い家屋が混在する街並み。
遠くない時期にすっかり様変わりしてしまうのだろうな。

ダナン最終日はイタリアンレストランに行くことにした。
彼氏がグラスでワインを飲めるようにという目論見で、リモンチェロというイタリアンらしい店で食事。








ラザニア含めて本格イタリア料理。
割とビックポーションなので、二人以上でシェアするといいと思う。

ダナン最終日、ほろ酔い気分で荷造りに励む二人。
旅の終わりは少し寂しい気がするけれど、次の旅行を考え始めるチャンスが来たともいえる。
「次はどこへ行く?」という結論はまだ出ていないのだけれど。