海辺の町を散歩する

鳶の鳴き声で目が覚めた。
カーテンを押し開くと、明るい日差しが差し込んで来る。
前日の暴風雨が去り、勝浦に晴天が戻って来た。
遠くに海が見え、足元の駅前ロータリーに目をやると、なんか外へ行きたくなった。




三日月インは、系列のホテル三日月の展望風呂を無料で利用できるらしい。
そんな特典があるにもかかわらず、めんどくさがりの僕はユニットバスでシャワーを浴び、散歩に出た。

海まで歩いて10分ほど。
陸に揚げられた漁船と、魚を乾している突堤を歩いてみた。




風が気持ちよかった。
サーファーたちの鮮やかなウェットスーツが波の間に散っている。
外海から大型の漁船が戻って来て、そちらに目を転じると勝浦の魚市場がある。
確か、「怒り」の中で渡辺謙、松山ケンイチ、宮崎あおいが生活している場所だったはず。




魚市場から再び駅まで戻って来た。
たしか8:00前だと思うが、駅に誰もいない。平日なのに。。。

旅に出ることは人生に似ている、という人がいる。
それ自体を否定しないけれど、僕にとってしみじみ人生だなあと思うのは、宿を引き払うときだ。
チェックアウトの時間は決まっていて、それに合わせて身支度をし、荷物をまとめる。
最後に忘れ物がないかを確かめて、その場を後にする瞬間こそ、人生そのものだなあと思うんだ。
父親が「人生の畳み方」みたいな本をよく読んでいるが、僕は子供の頃からずっと畳み方を意識していたような気がする。年中メメントモリって感じか??
永遠の命もいいけれど、終りの来る命を甘受して、恬淡としてその日を迎えるのも悪くはない、と僕は思ってる。

そして仕事に出る。
仕事の合間に鯉の餌やりをしたりで、なんだかのんびりとした一日だった。


ランチは車で隣町へ移動。
廃墟となった行川アイランドを横目に、鴨川市の「船よし」という店へ鯵フライを食べに行く。


サクサクとした歯触りのフライと、新鮮な海鮮丼。これも鯵かな?
窓の外は青空と、細く刷毛を引いたような雲がかかっている。
鳶の鳴き声が聞こえる。
一緒に食事をする四人との他愛ない会話が、なんだかとても愛おしく感じた。

仕事を終えて、メンバーはそれぞれの目的地へ散ってゆく。
「お疲れ様でした!」という掛け声とともに。

達成感とともに忍び寄る寂寥感は……この感情はなんと表現したらよいのだろう。
僕は未だにそれを言い当てることができないのだ。

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