BLマンガにおいても同じこと。

夏のコミケが終わり、今年も同人作品がたくさん生み出されたんだろう。
ここしばらく「最近のBLマンガがちょっと……」ということを書いてきた。
改めて感じるのは、プロとセミプロのあいだには、深い断絶が広がっているってこと。

最近Amazonでは評判がよろしくない あべ美幸「SUPER LOVERS」が結構好きだ。
現在7巻目。1巻目の大絶賛から7巻目の★3つの凋落ぶりは泣ける。
だけど独断で言う。
SUPER LOVERSはプロの作品だ。

同人作家が悪いとは言わない。
オリジナルより二次創作の作家の方が画力があって、かつ官能的な場合も多々ある。
だけど、二次創作は「世界観の構築力」が決定的に欠けている。

世界観はストーリーではない。
世界観は段取りではないのだ。
そこには昼があり、夜がある。季節感があり、音があり、温度がある。手触りがあり、理がある。登場人物と読者を取り巻く空間、それが世界観だ。
僕はSUPER LOVERSの世界観が好きだ。
だから何度でも手に取りたくなる。

二次創作はオリジナルの世界観に、悪い言い方をすれば、背乗りさせてもらっている。
だから二次創作作家と、オリジナルの世界観を生み出せるプロ作家のあいだには、大きな断絶がある。同人上がりの作家を否定するつもりはないが、オリジナルで勝負する以上、世界観を構築する力がないままでプロの看板を掲げるのは難しいだろう。また、それこそ同人誌じゃないのだから、担当編集者はちゃんと指導する必要があるんじゃないのか?

ジャンルはちがうが、独特な世界観に引きずられて、僕は進撃の巨人を読み続けてきた。
すごい作品だと評価はしていたけれど、大して好きでもなかった。

だけど12巻。

エレン聞いて
伝えたいことがある

私と…一緒にいてくれてありがとう

私に…生き方を教えてくれてありがとう

……私に


極限の状態の、この告白シーンに立ち会えて、僕は本当に幸せだと思った。
進撃の巨人第一巻では、諫山創の絵は本当に下手だった。
だけど、好き嫌いは別にして、彼が構築した世界観を誰もが無視できなかった。
そして第12巻。
引き絞られた弓から放たれたような矢のような、神がかった告白。
ものすごく腕の良いハリウッド映画でもなかなか表現できない、緊張と間合い。
戦慄が走った。
ここまで付き合ってきて本当に良かったと思った。

話を元に戻すけど、自分の手元には、どれも世界観がしっかりしているBLだけが残った。
そういう新作を描ける作家がどんどん出てくることを願ってる。

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