BL漫画レビュー:井上佐藤『10DANCE』

"このBLがやばい 2014"第3位ランクイン。
まるでディズニーアニメのような(展開の仕方がね)BLマンガ!!
突き抜けて、おもしろかった。
こんなにおもしろいBLマンガはひさしぶり!


鈴木信也と杉木信也はそれぞれラテンダンスとスタンダードの日本チャンピオン。杉木からの提案で二人は互いのダンスを教え合い、10種類のダンスで競う「10ダンス」に挑戦することになった、しかし似ているのは名前だけ、性格も気質も正反対の二人は、反発しつつもそれだけじゃなく……!?躍動する肉体と飛び散る視線の火花から目が離せない!著者の新境地・本格ダンスBL、待望の第1巻!!

まず最初に、BLマンガ編集者に問いただしたい。
BLのあらすじは、どいつもこいつも「!?」を使いすぎ。
安直ではないかと小一時間……。。。。

は、さておき、世の中には一般の人にはあまり知られていないところで盛り上がっているものがある。例えばスターが出てくる前の女子フィギュアスケートとか、吹奏楽の高校選手権だとか。自分の高校の外壁に「全国選手権出場!!」とか垂れ幕が下がっていても、多くの生徒にとっちゃ「へぇ~、それで?」という感じ。だけど、その内情を知り始めると、マイナー競技であればあるほど愛に溢れたコアな人たちが待ち構えていて、気が付けばドツボにはまっているという。ソーシャルダンスもその類いのもんだろう。

で、10DANCE。
この作品がすごいのって、少年マンガのプロットを少女マンガ的に表現するとこうなりました、みたいなところじゃないか?「ちはやふる」が少年マンガに近い「スポーツマンガ」であると言われるのと似ていて、これからも「友情」「努力」「勝利」を基調に進んでゆくのだろうと。そして少女マンガ的というか、BL的なおまけとして友情→愛情にオーバーシュートするんだろうな。そういう意味でBLのハイブリッドな進化形なんだろう。

で、見せ方がディズニーっぽいなあと。
分かるでしょ?ディズニー独特の盛り上げ方。
例えば美女と野獣で、ベルと野獣がダンスするシーン。
ホールで踊る二人、めまぐるしく変わるカメラアングル、二人を見つめる天使たち、ふわりとハート型に膨らむベルのドレスの裾……「うわああぁぁ、オレいまいいもの見ているんだなあ」とこみ上げてくる感情。

そういう華やかな盛り上げ方を作家は駆使している。ダンスだけに。
で、「バラも、白鳥も、お城も見えました!!!」と読者もストンと落とされるのだ。


この作品って、「カップルは対等でいたい」と望む腐女子の夢結実、なんだろうなあ。演目は違えど二人ともダンスチャンピオンで、トップレベルのプロ。片やまじめなスタンダード、片やゆるゆるセクシーなラテンダンサー。性格は真逆、演目も違う、だけどお互いトップの実力があるからこそ、反発し合いながらも惹かれ合い、競い合い、そしてクライマックスは10Danceの大会でぶつかり合うわけで。
腐女子は少年マンガの同人誌は作るのに、少女マンガをベースにした同人誌はほとんど作らないんだよね。彼女らの望む基本プロットは少年マンガなわけで、それに少女マンガ的手法を使ってBLに仕立てれば、おもしろくないはずがないわけで。

1.絵柄
正直、僕は井上佐藤は苦手だった。苦手だった故、いままで食わず嫌いだった。表紙からはなんだかゴリマッチョ二人が踊っているような印象を受けるけれど読んでみ、すごくおもしろいから。

2.ストーリー
華麗にダンス!
だけど、第1巻はむしろダンス基礎編みたいな展開で、読者に基礎知識をつけさせる工夫がされていてありがたい。ダンスって奥深いんだねぇ。

3.エロ度
第1巻では「なし!」

4.まとめ
主人公同士の絡みが出てこなかったら、誰が読んでもおもしろい作品だと思う。主人公同士の絡みが出てきたら、腐女子はさらに大喜びだろう。華麗に舞う肉体の、筋肉の重みまでが伝わってきて、非常に肉感的、身体感覚的な部分に訴えかけてくるのが好もしい作品。ダンスって肉体の格闘技なんだね。続きがとても楽しみ!

絵柄 :★★★☆☆
ストーリー:★★★★★
エロ度 :☆☆☆☆☆
(あくまで個人的主観に基づく★の数です)

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