BL漫画レビュー:ARUKU『ほんとは好きだ』

人里離れた全寮制カトリック系男子校。
家が裕福で大学生の彼女がいるリア充・北条は、クラスのつまはじき者・柾が気になってしょうがない。
この気持ちが恋だと気づいた北条だが、柾に伝える覚悟もなく悶々としたまま。
一方、柾は図書館で、昔この学校の生徒が同級生にあてて書いたと思われるラブレターを見つけて……!?

ここで 僕はただ一度 本当の恋をした


あいかわらず絵の下手な漫画家である。
中学生の落書きのようなタッチで、しかも分厚い冊子。

ジャケ写買いにすらならないARUKUを、僕は新刊が出ると買う。
一般誌で言えば「柳沢きみお」みたいな作家だ。
悲惨な絵柄。ゴツゴツとした展開。
コミケの同人作家たちの中に放り込んでも、下から何番目くらいの下手さだ。

だけど、彼女は読者に訴えたいなにか重たい物を抱えていて、それを僕は見届けたいのだ。小説道場の門弟を見守る中島梓のように、いつかARUKUが艶やかな花を咲かす日を気長に待とうと思う。

少し作品にも触れよう。

二人は人里離れた全寮制男子の生徒。
北条は恵まれた母子家庭に育ったリア充。柾はポストに捨てられていて、神父によって育てられたクラスでははぐれ者。そんな二人が紆余曲折を経て、想いが通じ合う仲になる。柾は言う「好きになってくれてありがとう。好きだと言ってくれて初めて俺は、この世界に生きていていいような気がしました」と。

一人の愚か者が二人の世界を壊し、すべての嘲笑と罪を引き受けて、柾は北条の前から姿を消す。

そういう話。

最近のBLには「同性愛」「同性愛者」に、周囲から強い忌避が示される設定は減ってきている。あるいは同性愛者だけの世界に閉じていて、「一般」社会との摩擦や拒絶はテーマとして取り上げられることは少なくなっている。拒絶を描けば「それは差別」と言われるからであって、BLの隣接にある同性愛者たちは、ますますファンタジーの世界に遠ざけられている。ひさしぶりに気持ちがヒリヒリ痛かったよ。

1.絵柄
ヘタ。プロ漫画家としては救いがたい。

2.ストーリー
ARUKUはきっと、もっと何かを訴えたい作家なのだと思う。もうすでに何冊かの作品がリリースされたけれど、まだ本物じゃない気がする。いつか彼女が本物を出してきたとき、今までの作品が「カチリ」とつながるんだろうな。

3.エロ度
エロイ。だけどデッサンがむちゃくちゃなんでエロく感じられない。

4.まとめ
悲恋だけど、二人がそれぞれの親との関係が壊れていないことが救いだったな。少なくとも主人公二人は親に愛されていたことを分かっていた。ARUKUのモノローグはいい。手紙には泣かされたよ。

絵柄 :★★☆☆☆
ストーリー:★★★★☆
エロ度 :★★★★☆
(あくまで個人的主観に基づく★の数です) 

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