彼氏の誕生日(7)

目覚めると、世界は一変していた。

なんて、厨二病的な表現がぴたりとはまるような光景だった。雪のない北国の、透き通った蒼空と、すこし埃っぽいアスファルトに、冬枯れの田畝、そんなメリハリに欠ける光景が、雪に包まれた神秘的な世界に変わっていた。


彼氏も起き出してきて雪景色に驚いている。
食事前に朝風呂に入る。
露天風呂に並んで浸かっていると、浴槽の脇に植えられた木の枝からドサーッという音と共に雪が崩れてきたりする。本当にドサーッという音がするのだ。


食事のあと、湯畑の周りを散歩してみた。
湯気に包まれた白い世界は幻想的ですらあった。
西の河原通り沿いの饅頭屋でお土産を買い込み、ホテルに戻った。







草津温泉バスターミナルまで送迎してもらう宿のクルマの準備が整うまでの間、僕らはラウンジでコーヒーを飲みながら待っていた。クルマで来た宿泊客たちが次々とチェックアウトして行く。こんなに雪が降っていて大丈夫なんだろうか。僕だったら運転をためらうだろう。干し柿と、餌台に群がる雀を眺めながらぼんやりと考えていた。

あの大雪が降った日。
僕らを乗せた路線バスは、時刻通り草津バスターミナルを出発した。山道をのろのろと下る。途中、何カ所かでお客を拾う。伊香保温泉に到着した頃には、定刻を1時間近く過ぎていた。道路脇のバス停で雪まみれになって待っていた若いカップルがかわいそうだった。
そして、関越道の入り口で「全面通行止め」の表示が出た。
会社に電話していた運転手が「本バスは運行中止となりました」と告げる。乗客たちは渋川駅に降ろされる。料金は全額返金してもらえることになったが、ここからは自力でどうにかしろと。

高崎・上越線にはカンが働くので、すぐに彼氏と共に5分後出発の上り線に乗って、まずは高崎を目指す。そこから新幹線で東京駅へ移動した。交通網の混乱のせいで新幹線は大宮までは立って乗車。そこから先もプラットフォームが空かないとかで、駅間で長い間停車していた。それでもまあ、戻ってこれただけで十分。

普段、飛行機で関西を目指す彼氏は、欠航表示だらけのエアライン情報を見て、新幹線で帰宅することを選択。18時過ぎにはのぞみ号で東京を離れていった。

彼氏の誕生日がとんだハプニング続きの旅行になったけれど、まあこれも良い思い出。
来年は、どんな誕生日になるのだろう。
想像すると今から楽しい気分になる。

それにしても、今年も幸せな二泊三日だった。

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