彼氏の誕生日(5)

草津駅バスターミナルから湯畑を脇に見ながらホテルまで歩く。
お昼過ぎの山間の温泉地。
温泉街の曲がりくねった道の両側には土産物店、饅頭屋を売る店、ガラス工芸手店、土地の農産物を並べている店などが立ち並び、その間を花に群がる蝶のように人がひらひらと動き回っている。都会の歩調で目的地を目指そうにも、なかなか前に進まない。
西の河原公園の入り口近くに、今夜宿泊するホテルが建っている。

フロントでチェックインの手続きを行うと、あらかじめ宅配便で送付してあった荷物を手渡してくれた。夕食の時にワインクーラー、ワインオープナー、そしてグラスを二つ用意してもらえるように頼んでから、僕たちは部屋に通された。

「高級ワインにつき取扱注意」と送り状に書かれた包装紙を彼氏が開封する。丈夫な箱に収められていた CHEVALIER-MONTRACHET (シュヴァリエ・モンラッシェ)。ワインの好きな彼氏が楽しんでくれればいいなと思って用意しておいた。




彼氏が大喜びしながらボトルを冷蔵庫に納めてから、僕らは外を散歩に出かけた。
人で賑わう西の河原通りを抜けて、町の中心地の湯畑を見物。
写真撮影の「はい、チーズ」のかけ声と、湯滝から吹き上がる水蒸気に含まれる硫黄の匂いが温泉地らしい。草津というと爺婆が集う場所という先入観があったけれど、実はそうでもなくて若者、小さな子供連れの若夫婦の姿もたくさん見かけた。

昼ご飯はいろいろとさまよったあげく、蕎麦で済ませた。












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