BL漫画レビュー:キヅナツキ『リンクス』

僕の中では次世代(w BL主力作家のひとりキヅナツキ。
クリスマスプレゼントのように差し出されたそれは、4編のオムニバスだった。

4組の"なりそこない"の恋人たちがリンクするドラマチック・オムニバス!

関屋×新発田
超絶フレンドリーおっさん・新発田に言い寄られ続けるコミュ障ラジオDJ・関屋は、自分の中のモヤモヤを、その美声をもってうまく言葉にできない。

亀田×荻川
捨て猫が縁で親しくなった亀田と荻川。飲んで食って猫を愛でて……居心地のいい日常を「恋愛」にしないまま、ゆったりと日々を過ごす。

弥彦×秋葉×ある男
ある事情から、何事にもメゲずに愛してくれるセックスの相手・弥彦を「恋人」とは呼べないまま、カフェオーナー・秋葉は思い出のピアノを弾く。

佐渡×中条
口ゲンカばかりだけど恋人として過不足なく見える佐渡と中条--しかし中条は佐渡を「手に入らないもの」だと諦め、嫌おうとしながらそばにいる。


すでに何回かこのブログの中で「今風の画風」と呼んでいる作家のひとりがキヅナツキだ。例えば不破慎理のような馬面主人公が昔のスタンダードだったように、この1~2年前からしばらくの間、キヅナツキ、おわる、宝井理人あたりがスタンダードの一派になって行くのだろうと思う。特に、心理描写のうまいキヅナツキは、これからも王道を行く作家になるのだろう。いや、BL以外のジャンルに行ってしまうのかもしれないね。

当然、欠点もある。
キャラクターのかき分けが十分ではないので、4編のオムニバスを読み進める上でだいぶ混乱した。かき分けができない作家がオムニバスをやるならば、同一の登場人物を場所を変えて書き続けるか、あるいは場所を固定して登場人物を入れ替えるかだ。リンクスはオムニバス間で人間関係が複雑にあり、より分かりにくくしている。この部分は今後改善されたら良いと思う。

僕的にオススメは、まったり日常系な亀田×荻川編と、ドラマチックな佐渡×中条編だと思う。どちらかを選べと言われたら、佐渡×中条編一択しかない。この1編には「救い」と「赦し」がある。読者を救う、繊細で力強い言葉がある。




1.絵柄
ふわっと柔らかくて、そして現代風。BLの世界でよく使われる「ふわっと柔らかい系」の絵柄はたいてい僕の好みとは真逆の、稚拙なものがほとんど。キヅナツキ作品は相当にハイクオリティ。

2.ストーリー
4編のオムニバス。構成は工夫の余地がある。だが、短編としてはとても秀逸。まったりネコと日常生活を送るも、ある出来事によって運命を変えられてしまったふたりの男の行く末を見届けるもよし。

3.エロ度
BL初心者どころか、ノンケが手に取ったってびびるようなコマはなし。
エロよりも、もっと大事なことを味わって欲しい。

4.まとめ
名作として語り継がれて行くのだろう。だが読み手は皆、もうちょっと構成をうまくやったらなあと残念に感じるのだろうな。今年最高にオススメの一冊。

絵柄 :★★★★★
ストーリー:★★★★★
エロ度 :☆☆☆☆☆
(あくまで個人的主観に基づく★の数です)

0 件のコメント:

コメントを投稿