BL漫画レビュー:鳶田瀬ケビン『パライソ』

さてと。
先週金曜日は仕事納めで、恒例BLマンガ山積みをしに新宿紀伊國屋書店へ出撃。
今日は買いまくらないと……と思いつつも挫折。
「このBLがやばい 2015」のラインナップが超ビミョーだっだんだよね。

1位の中村明日美子が苦手な僕としては、既読のヨネダコウ、宝井理人、井上佐藤くらいしか食指が動かなかったな。昨年は女装ネタがトレンドだったけど、今年から来年に掛けてSM系が流行りそうな予感がする。やおい論争じゃないけれど、ゲイの男性同士のSMをニマニマしながら「他の方のレビューにもあったように、床での表現がイマイチ…もしくは、それ以下です」なんてレビューしている腐女子は、ほんと気持ち悪いです。究極の愛だとか、至高の関係だとかいう腐女子の思い入れと、作家の表現の自由は尊重しますが、ほんとゲイ目線からは微妙な状況だなあと思わずにはいられないよ。

で、数冊買った中でアタリとハズレのうち、ハズレ組の筆頭が鳶田瀬ケビン『パライソ』だったというわけで。

最高のスリルと非情なエロスでおくるバイオレンス・ラブストーリー

"アトリエ"と呼ばれる謎の島--。そこは、チャンスを掴んだ者は誰でも巨万の富と名声を手に入れられる夢の島。だが、実態は脱落すれば全てを失う、人間の欲望が渦巻く犯罪の巣窟だった。

孤独な少年・恭介は生き別れた最愛の母親を探す手がかりを求めて上陸する。しかし、島を牛耳る組織の幹部・ジンに目をつけられ力づくで忠誠を誓わされる…。島民による成功の奪い合い、裏切りと策略、暴力の果てにたどり着く結末とは!?

パライソと言えば、天国か、極楽。
檻に閉じ込められ、乳首曝している少年は、おっさんの欲望に奉仕する男娼か、それとも定広のアンダーグランドホテル並に、監獄の中で慰み者にされる少年の話か?と期待したら、なに?この有様は??

アトリエという謎の島に選ばれた500人の芸術家の卵たち。1年間の生活保障と引き替えに評価される作品を生み出せなかったらクビ。認められれば20人だけもう1年契約更新できる……はぁ!?これって芸術家の卵の生活保護の話なんですか?????

いや、クビにされる480人がバトルロワイヤルするとか、権力者に抱かれて枕営業で契約更新をはかる、という話ですらなく。1年間の奨学金制度のような、なんていうの?まさにパライソな話だった。。。。 orz

まあ、作品剽窃という不正な話はあるんだけど、わりとどうでもいい話で。しかも母を尋ねてグラフィティな恭介は、わりとなし崩しにジンに抱かれちゃうし。しかしとくに2人のあいだに深い愛情が芽生える感じでもなく。


少年誌風のダークファンタジーに、アートを加えて、ホモフレーバーを振りかけてみた感じの作品。ボーイズラブである必然性がまったく感じられない。「この檻の中から羽撃(はばた)いてやるよ」と恭介は言うんだけどさ、放っておいたって1年後にゃ追い出されるのだから説得力ゼロ。だったら逃げられない場所で、超格差社会の中で、才能と美貌だけでのし上がって行くようなストーリーじゃないとね。てか、恭介、アーティストにしちゃ健康すぎるんだよ。芸術ってどこか歪んで、どこか突き抜けてる。好々爺の芸術ってつまらないものが多くて、破綻しているヤツほど突き抜けて心を捕らえて放さないものを生み出すと僕は思う。逆にグラフィティ程度ではそういう葛藤はない、と言うのならば僕の勘違いなのだろう。でも、バロックじゃないけど、芸術って歪みの美しさでしょ?

 1.絵柄
なんというか、「ふゅーじょんぷろだくと」だよねぇ。昔っからそうだけど、同人っぽい少年マンガテイストがここの特徴だと思う。表紙が凄く期待させて、中身は微妙という羊頭狗肉のパターン。表紙は凄くいいんだけどねぇ。

2.ストーリー
ダークファンタジー、アート、どちらから切っても温すぎる。最大2年間の生活保護と、その作品を独占販売しているアートディーラーの話……って、芸術家の卵向けセーフティネットじゃねぇか。むしろ良い会社かもしれないぞ??

3.エロ度
乳首しか認めない! 表紙の画像を拡大して楽しんでくれ!!

4.まとめ
なんというか、ものすごく中途半端な作品。
主人公の目力と乳首だけに救われる。

僕が編集者なら、なぜこのテーマでBLやりたかったのか、もう一度考え直して来いと作者に言いたい。画力はあるのだからテーマを変えるか、BLのウケるエッセンスについてもっと研究した方が良いと思う。表紙の値段が500円、内容が175円という感じだ。

絵柄 :★★★★☆
ストーリー:★★☆☆☆
エロ度 :★☆☆☆☆
(あくまで個人的主観に基づく★の数です)

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