福井晴敏さんの新作"人類資金"って、ちょっとタブーに触りすぎじゃないかな??
7巻まで続くそうだけど、ゴールインできるのかちょっと心配になってきた。(w
第2巻のキモとなる部分はここ。
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『いったいどこのどいつだ?』と津山は呻くように言った。
『こんな紙っ切れに価値があるって"ルール"を作って、おれたちを煙に巻いてる野郎は……』
だからこそ知りたい。
一万円札には一万円の価値がある、国家も企業も永遠に成長し続けねばならない--いまや常識でしかない貨幣経済の根幹に居座り、おそらくは『M資金』という魔物をもってこの国をも支配し続けてきた何者か。
まあいいさ。
"ルール"のせいでもなんでも、夢や希望があるってのは結構なことだ。
でもな、成長し続けなきゃな見れない夢ってなんなんだ?
無理なんだよ、もう。
みんな爪先立って、見かけの数字を稼いだってさ、誰も幸せになれてないじゃん。
いまの"ルール"に従ってる限り、この先はもうないんだよ。
"ルール"に支配されて、その場しのぎをくり返して……どこへ行こうとしているんだ……?
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小説のなかでは"M資金"だの、世界最大の財閥であり超国家権力でもある"ローゼンバーグ財閥"など、いろいろな小道具が出てくるけれど、福井節おなじみのキャラクターたちも、ただの狂言回し。
大学で経済学を勉強して、皆が見て見ぬ振りをしているのは「利子」という存在だ。
「現在価値」と「将来価値」の差が利子であるとかって、正直すんなりと納得できる?? 後付けの説明がお為ごかしにされるだけで、「利子」の起源とその運用による影響を真正面から語っている学者っているんだろうかね。異端の経済学者がどこかで語っているのかもしれないけれど。
経済活動に永遠の成長を強いるのは「利子」の存在。
なぜ「カネ」はその価値を減ずることなく、人の寿命よりも遙か永くに渡って存在し続けるのか?
そして何かに投じられ、誰かに貸し付けられることによって「増殖」する。
利子はどうやって支払われるのか?
農業のように種を蒔いて、その100倍、1000倍の収穫が得られれば、利子をつけて返済できる。
でも、もし「カネ」が金属じゃなくてただの有機物だったら、腐ったり、ネズミに食われたりして、「元本が減ずる」こともある。なぜ「カネ」だけが永遠なのだ。だれがカネは永遠に価値が減じないと決めたのだろう。農民は「元本(種)を維持してやっているのだから、むしろ利子なんかないだろう」といえるはず……と主張したのが異端の経済学者シルビオ・ゲゼル。
ホリエモンはかつて「株は返さなくていいカネ」と言っていたと記憶している。
そりゃたぶん間違いで、株式は(市場価値の増減はともかく)会社が倒産するまで利益の収奪ができる権利。
例えば株式会社が出来たときに、株で得たお金で買い込んだ生産機材…それが耐用年数が過ぎ、壊れてしまって全く無価値になってしまったとしても「株式」は残り続ける。そして配当を受ける権利だけが残り続ける。なぜだろう?? 僕はマルクスを勉強したことはないけれど、資本家が労働者の剰余価値を簒奪しているというのは、その一面だけで、深刻なのは企業が倒産しない限り「支配」の権利が消失しない株式会社というシステム。しかも「株主」というステークホルダーは「増え続ける一方」だから、企業も常に成長を強いられる。
生産性が貨幣の増殖率を上回っているうちは、まあ、まだなんとかなるんでしょうが。
貨幣の増殖が生産性を上回ると、生産物の価値を固定して考えると貨幣の価値が下がる。
インフレだ。
ただの「交換手段」のはずのカネの量が増殖することで、インフレが発生する。
インフレを乗り越えるために、さらなる生産性の向上に追い立てられる。
生産性の限界が来れば、今度は「コスト削減」の嵐が吹き荒れると。
小説"人類資金"の"ルール"が単なる暴力装置の超国家財閥とか、国家とかではなければいいと思う。その根本には「(永遠の命を持つ)貨幣と(無限に増殖を続ける)利子」という壮大なペテンがあって。金はともかく、その他の卑金属の硬貨にも「これは価値がある」というペテンをかけた謎の存在があって。
経済史によれば「金の預かり証」だった紙幣を、その金の価値以上に勝手に増殖させたペテン氏たちがいて。しかも「最後の価値を担保する金」という共同幻想と紙幣を切り離して、勝手に増殖させることの出来るのが現行制度であって……。
「貨幣と利子」「収奪システムとしての株式会社」は世界最大のペテンだろうな。キリストは必ず復活すると叫んでいるカルト宗教が可愛らしく見えるくらいの。
マルクスはこのペテンを階級闘争で解決しろとアジったわけですけど、あれもポジショントークだったのかもな。仮に共産主義革命が成功しても「貨幣と利子」のシステムは無くならなかっただろうから。
解決方法は、たぶん、エイジングマネーだと思うんだけど。
でも、「永遠の命を持っているカネという存在」を「経年劣化して最後は滅びるカネ(歳をとるカネ。つまり長くの保存が出来ない。常に交換が強いられ退蔵されないから経済の需給が一致する)」に変えるというのは、コペルニクス的転換以上のジャンプが求められる。
だけど、もし「貨幣と利子」の呪縛が解けたなら、リアル"マトリックス"になっちゃうわけだが。
三鷹駅前のドトールから。
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