空に吸われし 十五の心 2013年東北紀行 04

陽はゆっくりと、石垣の向こう、ビルの谷間に消えていった。
浴衣姿の女の子たちを追い越して、僕は盛岡城跡岩手公園を散歩していた。
本丸跡へ続く赤い欄干の橋を渡り、二階櫓跡櫓台から北上川の流れる市内南部を眺める。
本丸からの帰り道、母親が探していた石碑を見つけた。

不来方のお城の草に寝ころびて空に吸われし十五の心 (石川啄木)

正直、あまり啄木は好きではないのだが、この和歌を嫌いになれる人はなかなかいないんじゃないかと思う。


ホテルでごろ寝していた父親を呼び出して、南部藩長屋酒場 という郷土料理屋で食事する。
さんさ踊りの前に食事をしたいのだが、どの店も開店時間が30分ほど遅かったのだ。
一番早く郷土料理が食べられ、しかも母親リクエストの冷麺と、僕が食べたかったじゃじゃ麺が同時に食べられるのは都合が良かった。




町は活気づいている。
町の中心部、大通りは様々な露店が出て、肉やとうもろこしを焼くにおいが漂っている。威勢の良い居酒屋の呼び込みの間を、髪を結い上げおそろいの浴衣を着た女性達が歩いて行く。さんさ踊りはどうやら女性がメインの祭りらしい。

さんさ踊りは、お踊りから一本北側の、奥州街道が会場になっていた。
青森市のねぶた祭りほどの人混みではないけれど、それでも道の両脇は人がびっちりと立っている。
市役所前からスタートする踊りの先頭は、しばらくは遠くで鳴り物の音は響いてくるものの、踊り手の姿は全く見えない。ミスさんさ踊りが僕らの前を通過したのは、スタートから20分くらい過ぎた頃だった。










長時間の移動の疲れで、90分も過ぎると皆身体がしんどくなった。
高齢の両親を連れていたので、ホテルに引き上げる。
お腹に響く太鼓の音は、部屋の中まで忍び込んできて、祭りの余韻はなかなか消えなかった。

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