注目の投稿

RENA『雷神とリーマン』:BL漫画レビュー

BL漫画レビュー:三田織『僕らの食卓』

評判がいいと聞いて手に取ってみた初めての作家さん。

人と食事をするのが苦手な豊が、ある日公園で出会ったのは歳の離れた兄弟・穰と種。一緒にご飯を食べるようになった三人は…。

年末年始、そしてタイのパタヤで「ユーリ!on ICE」にハマって、そして、DVDのレビュー等に「BL臭くてイヤだ」というコメントを見つけて落ち込んだり。やっぱりBLはイヤな人にとってはイヤなんだなあと。差別と偏見に反対!なんて申し上げる気はサラサラないんですが、なんだろう、ちょっとヒヤッとした感覚が残ったんだ。

で、もちろん「僕らの食卓」もBL漫画。
主人公の穂積豊は、ランチを公園で一人で食べている。
自宅で結んだおにぎりと、スーパーで買ったからあげとわかめサラダ。
社内の同僚ともあまり人付き合いがなくて、飲み会に誘われることもない。。。。

そんな一人ランチ中の豊の前に幼児が現れて、貰った手作りのおにぎりにかぶり付いて「すげーうまい、おまえ天才だな」という。穫は「おにぎりの作り方を教えてやって下さい」と頼む。こうして豊、上田穫・種は出会った。




東京ガスの一連のCMのせいかな?
いま、日本人が「幸せ」を感じ、「幸せ」を一番表現できるのは「食事と食卓」なんじゃないかと思う。
大きな成功、とてつもない冒険に「幸せ」を見出せなくなって、僕たちは日々過ぎてゆく時間の中で、粗雑に扱ってしまえば指の間からこぼれ落ちてしまうような小さな幸せを握りしめて生きている。それは「英雄の時代」に比べて退屈だとか、チャンスのない不幸な時代だとかではなくて、晴れた日の日差しの美しさ、頰を撫でてゆく風の心地よさ、すれ違う人たちの眼差しに優しさを感じ、大切な人たちと笑顔で囲む食卓に幸せを感じる……そういう生き方の時代なのだと思う。

穰と種は母親が病死して、父子家庭(祖母はいる)。
種の「お兄ちゃん」になった(させられてしまった)穰は、心の中に喪失感と空虚さを抱えて生きている。
その空虚さはひんやりとした冷たさを伴って、家族愛はともかく、自分自身の愛情を求める気持ちを失っている。






豊は4歳で両親を失い、育ててくれていた祖父母も亡くなり、8歳のとき親戚の家の養子になった。
迎え入れた家の事情もあっただろうし、従兄弟たちもいろいろと思うところはあったのだと思う。
もっとも大人になっても従兄弟は豊にそっけない態度だったので、人間性の問題か、家庭自体に問題があったのかもしれない。
だけど幼少期、本来はみんなが幸せの場所であるはずの食卓が豊にとっては地獄で、豊は誰かと食卓を囲むのが怖くなってしまったのだ。


大人って、努めて大人を演じようとする。
本当は、大人になっても怖いものは怖いままだし、子供と同じく声をあげて泣きたいこともある。
だけど、大人はそれを胸の中に閉じ込めて、いつのまにか身動きが取れなくなってしまう。
人付き合いが苦手という人もそう。
優しい、やわらかい気持ちを傷つけられて、疼くその痛みが他人との距離を作ってしまう。
実は子供とあまりかわらないんだよね。
大人って、所詮子供の先輩でしかないわけで。

「好き」って言葉は、マジックワードだと思う。
どんな言葉よりも、最大の肯定と、最大の愛情が込められている

子供の頃はあんなに乱発していた「好き(しゅきーって言っていたな)」を言えなくなったのはいつからだろう。
大人になって、同性から「好き」っていう言葉もらったことがありますか?
女性同士は「好き」という言葉をもらっているような気がする。
だけど、男同士はほとんどないんだ。
少なくとも大人の男の間では。

男同士で「好き」と伝えあう関係。
それがBLの世界だけじゃなくて、リアルの世界でも実現できるならば、世界は少しだけ生きやすくなるような気がする。

そして頼りなかった父ちゃんが……。

出会ってくれてありがとう……
最高の肯定に、僕はウルウルしてしまった。
「出会ってくれてありがとう」「いてくれるだけでいいです」……こういう肯定の言葉は美しい。

こうしてみんな幸せを掴んでゆくのだろう。

1.絵柄
ほんわか系だけど、嫌いじゃない、むしろ好きだ。
豊の子供時代の絵には泣かされまくり。

2.ストーリー
王道の、幸せについて語るBoysLove。
ただし、BoysLoveと言っても、なんだろう……羽海野チカ「3月のライオン」の桐山零クンを見ているような気分。3月のライオンは「様々な人間が何かを取り戻していく、優しい物語」とされているけれど、それに近い。人と人が出会って、新しい関係から紡ぎ出される物語、生み出される幸せについての物語。

3.エロ度
エロはなし。

4.まとめ
この物語に出会えて、僕は幸せだった。
そして自分がいま包まれている幸せについて、あらためて喜びと感謝が溢れ出してるところ。
ぜひおすすめ。

バーズコミックス ルチルコレクションにはハズレがないなあ。

絵柄 :★★★★☆
ストーリー:★★★★★
エロ度 :☆☆☆☆☆
(あくまで個人的主観に基づく★の数です)

コメント