BL漫画レビュー:『エスケープジャーニー』 / おげれつたなか

人気BL漫画家のひとりに輝くおげれつたなかの最新作。

何度離れてもまた君を好きになる。

「性欲処理」呼ばわりされて別れた元カレ太一と、大学でまさかの再会を果たした直人!
ガッツリ過去の怒りを引きずっていた直人だったけど、高校時代に比べ成長した太一に少しずつ心を許し始める…。
そんな中、友達のふみちゃんが太一に恋しているらしく…?
友達だと相性バツグンなのに“恋愛"になった途端うまくいかない、傷だらけの恋愛譚!

描き下ろしは“おもらし"ですv

おいっ! ヾ(ーー )ォィ

おげれつたなか4冊目のコミックスだそう。
泣き顔ドアップを多用しすぎ!とかいろいろと厳しいことを書いてきたけれど、作品自体は売れてるだけあってそれなりにツボが押さえられているなあと、今までは思ってた。で、4作目が来て、ちょっと息切れしているような気がしてきた。

エスケープジャーニーの特徴は、舞台が共学の大学、女性がかなり絡んでくるという点。これがちょっとやばい。登場人物にゲイが混じっていたとしても、共学である以上青春群像になる。BL以外に集英社だの講談社だのの少女漫画、女性漫画で目が肥えている読者からすると、申し訳ないが上手い同人誌レベルのストーリー作りと画面処理という印象を受ける。

ストーリー全体に「最終的な二人の関係」というテーマが通奏低音として流れている。高校時代に両親が離婚した太一。コミ症気味で、直人に執着している。家族に恵まれた直人。ただの性欲処理の関係だと捨て台詞を吐かれた直人。太一に恋する女の子ミカ。恋人関係になると壊れてしまう直人と太一。太一の腕に手を回すミカを見て、直人は思う「女の子は友達、恋人、それから結婚して、家族になる」「でも俺と太一は恋人がゴールで最後だった」と。



肉体関係になにか名前を付けるとしたら、それをなんて呼べば良いのだろう?
(やべぇ……中島みゆきだ……)

「俺……太一の友達と恋人にはなれても、家族にはなってやれないのに。
 こえーんだよ。
 なんか……なんでもいい。
 名前がつかないと、友達とか恋人とか…家族とかさ
 先に進めないのは怖い。
 ずっと立ち止まったままいるみたいで」

「友達とか、家族とか、関係に名前がなきゃ一緒にいちゃだめなのか。
 家族って名前がついたところでなんにもならないよ。
 なぁ……好きだよ
 なおと一緒に生きていきたい
 これってどんな名前だと思う?」

これはけっこう重たいテーマで、ゲイ業界でもあまり突き詰めて語られないテーマなんだ。リブ系の人たちが同性愛結婚を認めろとか運動しているけれど、同性愛結婚式で話題になったカップルがすぐに別れている。形式以上に男が二人で暮らしてゆくことの難しさってある。タックスノットの大塚隆史さんの著作くらいかなあ、この手のテーマを取り上げたのは。僕らもまさにそれに挑戦中であるのだけれど。

難しいテーマに挑戦した試みは賞賛したい。けれど、このテーマはセックスシーンの多様よりも、こんなリリカルで秘密めいたコマを繋いでゆく方が、もっと共感できると思う。


1.絵柄
今回はうーん、あまりいいなぁと感じるコマは少なかった。残念。
直人はオリラジの藤森にしか見えない(w

2.ストーリー
端的に言うと「二人の関係に名前を付けるとしたら、なんと呼べばいいのだろう?」というテーマを通奏低音にした青春群像。同学年の女の子がかなりコミットしてくるが、一方で直人と太一以外の同性愛者は出てこないという、わりと変わった設定。同性愛でも、BLでもなくて、ただの「愛の形の物語」と受け止めるのが正しい読み方なのかもしれない。テーマ設定には共感するが、うまく捌けていない印象。

3.エロ度
すごくエロイ。
だが、おげれつたなかさんの描くエロは萌えない。なぜだろう?

4.まとめ
うーん、、、、悪くはないけれど、あまり印象に残らない作品かも。

絵柄 :★★★☆☆
ストーリー:★★★☆☆
エロ度 :★★★★☆
(あくまで個人的主観に基づく★の数です)

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