フランス旅行記(2015年) 鷲の巣村エズへ行く

朝ご飯を食べながら、今日一日何をしようかと僕たちは相談を始めた。
今回の旅行はアウトラインはそれなりに苦労して設計した割に、ディテールはその日の気分任せという適当さだった。たった二泊のニース滞在なのに、モナコへ行くのか、マルセイユへ足を伸ばすつもりなのか、計画すらなかった。

モナコは美しい街だけど、まあね…、という彼氏の感想があり、そして明日、西進するのに今日マルセイユまで足を伸ばすのに僕は気が進まなかった。ゴッホが好きな人はアルルとか行くのだろうけれど、それほど思い入れのない僕ら……というか、コート・ダジュールには何しに来たのだろう??

とにかく二人とも行ったことがない場所で、そこそこお手軽な場所と言えば、エズの村があった。じゃあエズへ行こうということで、僕らはガイドブックを広げる。まずは中距離バスの発着所に行かねばならない。バスターミナルはVaubanというらしい。このカフェから歩いて行くのは……まあかなり大変なので、マセナ広場からトラムに乗って行くことにした。マセナ広場から乗車したトラムは、アポロンの像の前を曲がり、ゆっくりと坂を上って行く。いくつかの停留所を過ごしたあと、僕らはVauban駅で下車した。

僕らのほかに降りた客は二人という静かな駅。目の前には広大な駐車場が広がっている。ここがバスターミナルかと思いきや、少々歩く。鉄道の線路を潜るトンネルを越えた先にバスターミナルがある。ここが始発。


僕たちが乗車した112番バスは、ニース市街地の何カ所かでお客を拾ったあと、郊外へ向かって山道を登る。海岸線はどんどん遠くなり、地中海が窓いっぱいに広がる。沿道の漆喰塗りの門塀が強い日差しでハレーションを起こしていて、その塀にもたれ掛かるブーゲンビリアの赤が鮮烈に映る。

バスに揺られて20分ほどで、Eze Villageのバス停に到着する。乗っていたお客のほとんどがここで下車するから、降り損なうことはたぶんないだろう。

大きな街路樹が濃い影を落としていた。
モナコとニースの、それぞれの方向を示す道路標識に、なんだか強烈に南仏にいることを意識させられた。ニース発のバスを下車した乗客たちは、あっという間に散っていった。ミネラルウォーターを買うためにバス停付近をウロウロしていた僕らは、ちょっと心細くなる。バス停付近の人影はまばら。強い日差しを浴びた南国の花が咲き誇っている。






フランス旅行記(2015年) ニースで朝ご飯

ベストウエスタンホテル ルーズベルト(BEST WESTERN Hotel Roosevelt)の最初の晩は暑さでのたうち回って一夜が明けた。というのも、ホテル側の問題かと言えば必ずしもそうではなく、当時、日中の気温が37~39℃という異常な暑さが南仏を襲っていた。エアコンを効かせても部屋の温度がいっこうに下がらない。寝返りを打ちながら、一晩に何度も目が覚めて水を飲んだ。熱中症の入り口だったのかもしれない。

翌朝、ぼんやりとした頭をふるふると振って、僕らは目覚めた。エスプレッソを淹れ、ぼんやりとTVを眺める。窓の外はまだ日差しはやわらかいのに、肌にまとわりつく大気ですぐに汗をかく。交代でシャワーを浴び、顔を洗って僕らは部屋を出た。

昨夜、マセナ広場へ向かう途中にいくつかのカフェがあった。
朝ご飯はそこで摂ることにした。
ニースの朝ご飯……語感はちょっと洒落ている気がするか。

コンチネンタルスタイルの朝ご飯を出すカフェはいくつもある。
だいたいExpressという一番速く用意されるものは、クロワッサン、カフェ、ソフトドリンクでだいたい4~5ユーロ台。それから先はオムレツやら、目玉焼きが付くなどのオプションが加わって8~13ユーロくらいが相場のようだった。

僕らはカプチーノとオレンジジュース。
それからパニーニのセットを食べた。
焼きたてパニーニにジャムを付けて食べると案外美味しい。

そしてフランスに来たならクロワッサンは食べたいよな、と言うことで追加。
サクッ、サクッという食感のクロワッサンは、やはり期待を裏切らない美味さだ。




カフェは分煙しているようだが、喫煙者と隣り合わせになることは結構多かった。
女性の喫煙者がわりと多いような印象だった。
エスプレッソ飲みながらぷっは~と紫煙を燻らすマダムたち……。

フランス旅行記(2015年) プロムナード・デ・ザングレと晩ご飯

マセナ広場のアポロン像を通り過ぎると、海岸通りに出る。
プロムナード・デ・ザングレ(Promenade des Anglais)、イギリス人の遊歩道と呼ばれるひろい歩道が現れる。海沿いであることを差し引いても、想像以上に幅広い遊歩道だった。なんだろう……学生時代に訪れたサンタモニカを思い出した。

日没が近くなって海岸から上がってくる人、インラインスケートを楽しんでいる人、僕らのようにカメラをぶら下げてふらふらしている人、色々な人たちを見かけたが、混雑しているという印象を受けることのない空間だった。

ニースの海岸は有料のビーチが多いようで、そこはパラソルが整然と並んでいる。その間にパブリックのビーチがあるようで、そこはもう雑多な人たちが思い思いのスタイルを楽しんでいる。海外で感じるのは、お年を召した方が海で楽しんでいるとなあということ。日本だとご老体はほとんど海に出ないから。




プロムナードを散歩したあと、僕らは旧市街地へ向かう。
地図を見るまでもなく、何となく古くて、そしてレストランがぎっしりと並んでいるエリアへ誘われて行くと、そこは旧市街地だった。ニースでプロヴァンス料理が食べられるのかと期待するとそうでもないようで、ざっくり言うとシーフード、イタリアン、そして肉を焼いている所、みたいな店が軒を連ねている。この日のニースはやたら暑かった。僕らはすでに服の中がドロンドロンになっているほど汗をかいていたが、どのレストランもオープンテラスで食事を出していて、また、そこで平然とメシを食っている人たちがいるという不思議な光景だった。彼らは暑さを感じないのだろうか?僕らもオープンテラスのテーブルでシーフードを食べることにした。

ワインの選択は彼氏の専管事項なのでお任せする。たしか40だか60ユーロのワインを飲んだような気がする。フランス上陸の晩だったので、割りと乾杯気分だった。

シーフードの盛り合わせは、僕がビジュアル重視で選んだもの。だってなんだかリゾートっぽくてイイ感じじゃないかと思って。生牡蠣とぷりっぷりのシュリンプをワインで流し込む。シメはサーモンのタリアッテレ。炭水化物がないと食事が終わった気がしなくて。





レストランを出る頃は、ニースの街はとっぷりと日が暮れていた。
オレンジ色の光に包まれた旧市街地を離れると急に音が失われ、なんだか気が抜けた。マセナ広場を抜け、僕らはホテルへ戻る。




フランス旅行記(2015年) 空港からマセナ広場まで

飛行機から降りると、熱気が押し寄せてきた。
もう少し湿度の低いサラッとした気候を期待していたのだが、タラップを降りた第一印象はハワイに降りた時の、あの南国特有の肌にまとわりつく大気と似ていた。

コート・ダジュール空港は田舎の地方空港という感じだった。
ターンテーブルから旅行鞄を引き上げ、到着ロビーへ続く自動ドアを開くと、到着客を待つ人が群れるこぢんまりとした空間が広がる。フランクフルトの巨大ターミナルで右往左往したあとでは、より建物が小さいと感じたのかもしれない。

左手に進むとバスターミナルがある。
ニース市内へは98番ライン、99番ラインが通じている。98番ラインは市内のいくつかのバス停に停まる。99番ラインはニース駅へ直行する。僕らは途中停車の位置を把握していなかったのでニース駅へ直行し、そこから歩いてホテルへ向かうことにした。ホテルのバウチャーにはニース駅とプロムナードの中間に位置していると案内されていた。

チケットブースで乗車券を買い、バスに乗り込む。地中海を右手に見ながらバスは海岸線を走って行く。思ったよりも交通量の多い道路だった。それから皆かなり飛ばす。景色を楽しむよりも、明後日からこの道を運転することができるのだろうか?という不安の方が募ってきた。海岸道路から市内へ入ると道は狭く、交通量は多く、しかもいきなり交通事故の現場に遭遇するしで。

ニース駅で下車して、僕らはしばらく途方に暮れる。
地図の上ではわかりにくいのだが、ニース駅はちょっとした丘にあって、そこから似たような細い坂道が海へ向かって放たれている。通りの名前は建物の角のプレートを参考にするしかないのだが、これが結構大変。「こっち」という彼氏のあとについて行く。バリアフリーではない、幅の狭い汚れた歩道。老人がスーツケースを引っ張って歩くのはちょっと大変だと思う。それからヨーロッパの駅周辺は、多くの場合治安の悪いエリアであって、やはり夜はちょっと来たくないなあと感じる光景がしばらく続く。

少し迷いながら、ニースの宿泊地、ベストウエスタンホテル ルーズベルト(BEST WESTERN Hotel Roosevelt)に到着する。ニースの町並みは建物の高さがそろえられているようで、しかも雨戸、テラスの外観が似ている。ネグレスコのようなユニークな建物でないと見落としてしまって不思議ではないかもしれない。



よく冷やされた建物に入り、僕らは生き返ったような気がした。
フロントはモダンなデザインで、脇には朝食ビュフェで使うテーブルが広がっている。フロントの対応は日に焼けた金髪の女性だった。ヨーロッパではありがちな、先客が根掘り葉掘りなにか尋ねている。これがなかなか終わらないのだが、怒ってはいけない。僕らが待っている間、2組の宿泊客が戻ってくる。そのうちの一組はバゲットを持った若い男性の二人。ややゲイっぽい優しい笑顔で、お仲間さんかな?と彼氏とクスクス笑ってしまった。

キーを受け取り、エレベーターへ進む。
これがおもしろい形状で、エレベーターが到着すると、ドアを自分で開くのだ。それが引き戸だったら大して驚かないんだが、まるで公衆トイレに入るように普通のドアのようにスイングするのだ。「ヨーロッパじゃよくあること」と彼氏は笑っているが、なんか僕はうれしくなってしまう。

アサインされたのは値段のわりに広い部屋で、窓の外は通りに面している。
水回りなど問題なし。
セーフティボックスとコーヒーメーカー完備。




お腹も空いたことだし、僕らはまずプロムナードへ遊びに行くことにした。
坂を下って行けばいずれ海へ通じることはわかっている。
少し歩くと賑やかな場所へ出くわた。遠くで路面電車が行き来するのが見えたので、そちらがマセナ広場なのだろうとあたりを付け、ふらふらとそちらへ流れていった。道の両脇にはカフェが軒を連ね、「SALE!」の札を掲げた店がちらほらと。



マセナ広場は瀟洒な空間だった。
それまでの狭い道と建ち並ぶ石造りの町並みが切れて、ほっとする開放感があった。ヨーロッパ一般の広場よりスケールが大きく、カフェなどでゴチャゴチャしていないのが良いのだろう。一角で音楽イベントが盛り上がっていたが、全然気にならないほどの広い空間だった。低床の路面電車がゴトゴトと脇を走って行く。




フランス旅行記(2015年) フランクフルト経由でコート・ダジュール空港へ

梅雨の明けていない関東は、前夜から雨が降り続いていた。
成田アクセス特急に乗り、7時半頃成田第1旅客ターミナルに到着する。
チェックインのあと、サンドイッチとカフェモカの朝食を済ませ、僕は保安検査場を超えた。

HERMESの店の前に、今日乗るエアラインの客室乗務員たちがたむろっている。
紺色に濃い目の黄色をあしらった制服が印象的だ。
彼らの姿を横目に37ゲートへ進む。

ボーディングゲートに着けられた747を叩く雨脚は、やや弱くなっている。
あまり揺れないと良いのだけれど。



今回はニースが最初の目的地だったので、日本からはどのエアラインを使っても乗り継ぎが必要だった。エールフランスを使ってもパリで乗り継ぎだ。ANA便だとマイルはパリで終わってしまうが、スターアライアンスだともともと乗り継ぎありきだから、往路のマイルでヨーロッパ各都市まで行けてしまうのがお得感がある感じがする。

欧州までの長い長いフライトを考えると、搭乗前から疲れを感じるようになったのは歳のせいだと思う。所用時間約12時間ってのは考えてみると凄いことだ。朝10時に離陸して、到着は大凡22時ということだから。

インターステラーを観て、そのあとはiPadで進撃の巨人を読み始め、途中眠ったり、食事をしたりして、第10巻を読み始めたところでフランクフルトに到着した。

機内食の写真はあまり撮らないのだけれど、一食目はチキンのソテー、クリーミーマッシュルームソースで、こちらは美味しくいただいた。



途中に軽食のサービスがあり「カステラですか?おにぎりですか?」という選択肢に苦笑いしつつおにぎりをいただく。僕の座っているブロックの担当客室乗務員は「やばい…金髪のロッテンマイヤーさんだ!」と密かにうれしくなってしまう感じの女性。

夕食はラビオリパスタだった。見た目はちょっとゲロっぽいが、お味はちゃんとラビオリだ。



フランクフルトにはほぼ定刻に到着した。
ルフトハンザのハブ空港は巨大だった。ニースへ向かう乗り継ぎ便もルフトハンザだったので、ターミナルは同じ。Zという案内板に導かれて足早に移動する。乗り継ぎ時間は90分…もあるというのか、90分しかないというのか。

シェンゲン協定のため、フランスへのイミグレーションは苦手なドイツで行う。脳裏をかすめるミュンヘンのトラブル。EU圏内は国内線の扱いのようなものなので、ふたたび保安検査の長い行列に並ぶ。そしてEUへのイミグレーション…ドイツ人って根掘り葉掘り聞くんだよねぇ、フランス行きだ、観光だ、滞在は10日間だと言ってもグダグダ聞いてくる。めんどくせぇ~、帰国便のEチケットをみせて、やっと突破。ボーディング開始まであと20分というタイミングだった。入国はイタリアが圧倒的に簡単だと思う。

フランクフルトからは彼氏が合流。
すでに大船に乗った気分……ダメだよ、そういう心もちはトラブルの元。
A380の巨体を撮影したりしているうちに、ボーディング開始。
小さな飛行機だったので、フランクフルト、ニース両方とも沖留めだった。


甘いケーキを食べながら約90分のフライト。
コート・ダジュール空港に到着したのは約18時だった。



当たり前のことだけど、フランスへ向かう飛行機ではフランス語のアナウンスがある。
そしてフランス語っぽい英語のアナウンスがちょっとおもしろい。

フランス旅行記(2015年) アウトライン

休暇は彼氏と旅行に出ることにしている。
昨年、旅行実施時期をどうするか打ち合わせし、ヨーロッパのベストシーズン7月に休みを取ることが決まった。で、2015年2月にやっと僕のマイルが貯まり、ヨーロッパ旅行が可能になった。場所をどこにするか……ポルトガル、フランス、イタリア、イギリスといくつか候補が挙がった中で、最終的にフランスに決定。次にフランスのどこへ行くかでプランを練った。パリは二人とも経験済み。南仏は僕は未経験。モン・サン・ミッシェルは彼氏が未経験。ベルサイユは僕が未経験ということを念頭に、プランを練った。

7月3日 成田 → フランクフルト → ニース (ニース宿泊)
7月4日 ニース滞在
7月5日 ニース → プロヴァンス地方経由 → アヴィニョン (アヴィニョン宿泊)
7月6日 アヴィニョン → リヨン (リヨン宿泊)
7月7日 リヨン → レンヌ経由 → モン・サン・ミッシェル (島内宿泊)
7月8日 モン・サン・ミッシェル → パリ (パリ宿泊)
7月9日 パリ滞在
7月10日 パリ滞在
7月11日 パリ → フランクフルト → 成田 (7月12日成田着)

ニースからリヨンまでの移動はレンタカーを借り、ラベンダー街道を走った。
リヨンからレンヌまでは国内線飛行機を利用した。

プランを改めて眺めると、トラピックス並の弾丸ツアーだった。
団体旅行に混じっていれば、この程度の行程は問題ではないのだろうけれど、なにせ自力で移動しなければならないからね。
日程をもう2~3日増やすか、リヨンとモン・サン・ミッシェルをやめ、ほかの町の滞在を厚くしたらもう少しゆとりが持てたかもしれない、とは思う。だけど日数を増やした分は、行き先が増えるだけなんだろうな。

懸念点はフランクフルトでの乗り継ぎ、レンタカーをちゃんと運転できるのか??、リヨンからレンヌまでの国内線の移動、レンヌ国際空港からレンヌ駅までの移動くらいだった。どうなったのかは、おいおいブログの中でご報告。

安保法制に思うこと

帰国してから、安保法制について色々な人が色々な事を言ってるなあと眺めてる。

戦場(現場)が悲惨なことはわかっているつもり。
かつ、空襲などを経験した人たちが「二度とあんなめには遭いたくない」という言葉にも共感したいと思う。

憲法学者が憲法違反だと叫ぶ。
戦後70年、あれこれ解釈で乗り切ってきたけれど、まあ、だいぶ無理筋。
だけど僕らは憲法のために生きているわけじゃないからね。
憲法を守るために殺されるくらいだったら、(どういう方向かはさておき)憲法を変えるべきだと考える方が、「生物」の本能として正しいんじゃないかと思ってる。
だから、国会で憲法学者らは、法案が憲法違反になる可能性があるので廃案にするか、または憲法を改正するべきだ、と言うべきだったと思う。あの会見内容は自分の信条を吐露しているだけの、ただの運動家の独白ように僕には見えた。

で、戦争体験者として美輪明宏さんでも空論を言うのだなと思ったのさ。

「(人間は)失敗を繰り返してばかりいる。安倍さんや、石破(茂)さんや、麻生(太郎)さんにしても、みなさん、言い出しっぺの責任を取っていただいて、徴兵制になるならば、まずご自分が、年齢に関係なく、鉄砲を担いで、鉄兜をかぶって、まず第一線に出ていただく。それから、お子さんも、孫も、きょうだいも、それから娘さんのボーイフレンドも、全部一緒に連れ立って第一線に、まず最初に出ていただく。もちろん一兵卒でね」

アメリカがやりたがっている無関係の戦争には「No!」を言える政治力を付けた上で、日本が関わると想定される戦争(紛争含む)は、西太平洋上での支那、尖閣諸島に侵攻する支那、韓国の対馬侵攻、北朝鮮からの攻撃……要は東アジアの隣国からの武力侵攻であろうことはおそらく間違いない。「韓国の対馬侵攻?ばかじゃね??」と思うならば、李承晩がなにを言っていたのか調べてみたら良い。

で、戦争というと、なにか別の次元がやってる喧嘩のように思えてしまうのだよね。
だけど、実際に自分の身内や友人に害が及んで初めて自分のことになる。
実際に沖縄に支那が侵攻し、チベットのようなエスニッククレンジングが始まったりしたら、特にサヨクの人なんかは「他人事じゃない、キミたちにも関わっていることなんだ!」とか言い出すんだろう。その時ではもう遅すぎるのだけど。

その時は、三輪さんだったらメケメケでも唄って最前線に立つんだろ?
宮崎駿はトトロのぬいぐるみを掲げて、最前線に立つんだろ?
辻元清美ら民主党議員は「日本には憲法9条がある!戦争絶対反対!!」のプラカードを持って最前線に立つんだろ?平和の盾になる覚悟なんだろ?

あー、三輪さんや宮崎は立つかもしれないが、民主党は最初に逃げる連中だろうな。
もし海が割れるように敵兵が退き、平和を取り戻せるならば、僕は三輪さんを、宮崎駿を神とあがめるよ。だけど、彼らに天安門広場で戦車に轢かれた抗議者のような勇気があるとは信じられないのだけれど。

自分が立たされる時は……や、火力は持たせて欲しい。
武力侵攻すると決めた相手は、力で押し戻すしか解決方法はないのだから。

安倍首相を心の底から信じられるかどうかは別として、政府は何度も「力による現状変更は認められない」と繰り返し宣言しているわけで、その現状を力で変更しようとしている勢力に対し、必要があれば力で押し返すこともあるよ?というブラフが、集団的自衛権のもっとも大きなポイントだと思うのだ。

BL漫画レビュー:田倉トヲル『こいものがたり(1)』

いま最も注目している作家の一人。
今回も期待裏切らずのクオリティに、全オレが涙という感じ。
結論を先に言っておくと、腐女子よりも現役高校生ゲイに読んでもらいたいな、と感じた良作でございました。

大和がゲイだと偶然知った唯司。その報われない恋が、誰へ向けられているかに気付いた唯司は、大和の幸せを願うが…!?

物語はゲイ高校生の吉永大和(よしながやまと)と、大和がゲイだと気づいてしまったノンケの長谷川唯司(はせがわゆいじ)のモノローグに導かれ、進んでゆく。

ダブル主人公だが比重は唯司の方が大きいかな。というのも、この物語の上手いところは、大和に対するノンケ少年唯司の独特の距離感なのだ。大和が報われない恋をしている相手は、グラビアアイドル大好きの恭介。恭介は唯司の友だち。

唯司は女の子大好き側の人間だけど、たまたま大和がゲイであることを知ってしまう。「知ってしまうと見える世界はこんなにも変わってしまうんだ。いままで気にならなかったことが目について、些細なことでも意味があるように見える。そんな自分の意思ではどうしようもないーー」と戸惑う唯司。うーん、自分で考えるタイプのイケメンだ。かっこいいね。




実は大和と唯司は付き合いがなかったのだが、大和と同中出身の柴田奈津実が勉強会をセッティングする。奈津実は大和が「でも俺がドキドキするのはいつも女の子じゃないんだ。これが本当なんだ」と話していた相手。唯司が聞いてしまった真実を知る女子。大和に接する彼女の距離感がまた絶妙。

そして唯司はこんな事を思う。
「吉永が本当に恭介が好きなのかわからないけれど、なんかいいなが積み重なって人はいつのまにか恋に落ちてるとしたら、好きになる相手は選べないんだ。吉永だってどうしようもないんだろう。それが同性ってのもー」
や、唯司くん、本当にイケメンだわ。



その言葉は唯司にブーメランのように返ってくる。

「恭介は知る由もなく、ほんのときどき恭介を見てる吉永。そんな吉永を見てる俺。俺はどうしていいのかわからなくなっていた」

ここまでが第一話なのだ。
すでに傑作の風格と余韻を漂わせながら、物語は第二話へ。

 「誰かにバレたときの想像は、いつも悪い方向にしか考えたことなかったから、まさかあんなふうに言ってくれるとは思わなかった……どうするんだろう、どうなるんだろう、どうしたらいいんだろう」



「ちゃんとふつうに見えていますように…」
「はっきり自覚してからは人目ばかりが気になって、臆病から無難に人あたりよくすごすようになって、俺はきっと嘘くさいんだろう」

なんか、このページは自分も身につまされた。
職場でカミングアウトしていないから、プライベートのことはほとんど話していない。僕もきっと謎の人認定されている。ゲイの世界では逆に仕事の話は一切しないから、やっぱり謎なリーマン。振られる話も適当に受け流しているから、僕も相当嘘くさいと思われているんだろう。だけど僕も大和と同じ「言ってなんになるでもないし、言ったところで周りも自分もデメリットのほうが大きいとしか思えないし。ただときどき罪悪感はあった」。これが第二話の冒頭。

この先もびしびし心に刺さるセリフが連発されるのだけど、紹介していると全編引用になってしまうので、興味のある人はぜひ単行本を手に取ってみて欲しい。これはたぶん、ゲイに関わる多くの人にとって、とても大事な作品になる予感がする。

1.絵柄
うまい。今風……というか、Web漫画系というか、小畑健の夜神月ふうとでも言ったら良いのか。あと学校の風景など背景処理がとても映像的。

2.ストーリー
とある高校を舞台にした群像劇、と括ってしまうにはもったいない。なんだろう「何者とも固まっていない時代の、少年期特有のあやうさをはらむ揺れ」が裏テーマとしてあるのかな。高校生という舞台で、普通と普通じゃない間の揺れ、ゲイとノンケの間の揺れ、男と女の間の揺れ、嘘と本音の間の揺れ、理想と現実の間の揺れ、友情と愛情の間の揺れ、異性交遊と同性交遊の間の揺れ……そのいずれもが平行で走っていて、独特の空気感を醸成している。

あと、女子の関わらせ方がものすごく秀逸。なんというか……普通に少女漫画を読んでいるような感覚。BLというと通常主人公男子二人にフォーカスを絞るけれど、時々もっと「引き」の視点で描かれる作品が生み出される。「こいものがたり」は後者に属する。だから、高校生の日常生活の中に、じわりじわりと同性を好きになってしまう葛藤が描かれ、これがなかなか秀逸なのだ。

で、もうちょっと書き加えると、本作品には普通に女子が登場してくるのだけれど、これを嫌悪する腐女子が少なくないらしい。腐女子には悪いが、それはある種の「歪み」だよと思う。女子のいない、男子だけの恋愛物語なんて、少し歪んだ世界観だと認識した方が良いと思う。

3.エロ度
第一巻ではなし、チュー止まり。しかも大和×唯司でもなく。

4.まとめ
「いまどきさー、ゲイなんてオレらが思っているよりも気にしないって人多いかもしんないよね。こういうの見てると勘違いしちゃうよね。なんか案外あっさり受け入れられそうって空気になってくるじゃん……でもさ、世の中的にいくら良くなろうとも、たった30人程度の集まりのクラスでさ、一人の派手なやつがキモイっておもしろがりだしたら、結構終わるよね。高校生ぐらいなんかで失敗したら逃げ場なんて無いし、そういうせまい世界で生きてんだよね、俺ら」

こういうセリフを書ける作家って、なかなかいないと思いません?
絶賛して、オススメの一冊。

絵柄 :★★★★★
ストーリー:★★★★★
エロ度 :☆☆☆☆☆
(あくまで個人的主観に基づく★の数です)

明日から旅に出ます。

フランス弾丸旅行に行ってきます。

一足お先に、夏休み、楽しんできます。