バニラ・エアの例の騒動について

今週、例のバニラ・エアの騒動を眺めてました。

この手の話題に参戦する「著名人」の顔ぶれはおおむね固定されていると思う。
そのお一人の乙武さん。

> それを「クレーマー」だの「プロ障害者」だと批判するのは、木島さんに
> 「おまえは理不尽な門前払いに泣き寝入りをすべきだった」と言っている
> に等しい。特に改善する必要性を感じていない健常者にとってはあまり理解
> してもらえない感覚かもしれないが、障害者にとってはまだまだ理不尽だと
> 感じられるこの社会環境を変えていくには、あえて波風を立てていく場面が
> 必要にもなってくる。
>
> 最後になりましたが、銀座イタリアン事件については、申し訳ありませんでした。

最後の一文で吹き出してしまった。

は、さておき。
ネットで炎上が続いているこの話、なんてか、もっと上手く処理できなかったのかと。
例の「木島氏」がクレーマーかどうかはさておき、有名企業に勤務していた彼が、公共交通機関やレストランで障害者を受け入れる場合、裏方はちゃんと段取りを踏んで、いろいろな準備をしていることを「知らない」とは言わせない。僕ですらイベントを回していたときは、車いすの方が来られると事前に分かっているときは、入口から導線の確保、スタッフの配置、着席場所の考慮、それからイベント中に「必ず気に掛けるよう」スタッフに指示を出すなど、それなりに準備と配慮していたよ。「障害者差別」はしたくはないし、そういう問題が少なくなって行けばいいと思う。だけど、事前通告なしで障害者の方が来場されて、その結果、より多くのお客さんに危険や混乱が生じると判断したときは、責任者としてお断りしてた。そのことによって障害者の方に非難されたとしても、その障害者の方、そのほかのお客様、自社みんなの安全を守るためには、断固として断らなければならないこともあると僕は考えてる。融通が効かないヤツと言われても、こと「安全」に関しては現場で融通を効かせちゃダメだと僕は思うよ。

今回ハレーションが起きたのは、この話を「朝日新聞」「毎日新聞」が報道したから。
「また朝日か!」とアンチ朝日新聞の方々が騒ぎ出したことも問題を大きくしたと思う。
(ちなみに朝日新聞の「車いすの人に階段タラップ自力で上らせる バニラエア奄美空港」というタイトルは虚報、あるいは誤報と指摘されている。木島氏が自ら語っているように、自分で上がったのだからバニラが強要したように錯覚させるタイトルづけは不誠実だと僕は感じている。)
ねつ造報道を含めて評判の悪い朝日新聞が嫌われるネタの一つとして「社会的弱者をメシの種にしている」ってのがある。社会的弱者に肩入れしすぎるあまり記事内容のバランスが崩れ、企業を悪者にしてその裏にある本当の「事実」を報道する努力を怠っているのか、「角度」をつけるために報道しないのである。

今回ネット民が探し出した「いすみ鉄道 社長ブログ」が本当に参考になった。
「車いすで飛行機に乗る時は」
http://isumi.rail.shop-pro.jp/?eid=2918

メディアはこういう「専門家」の話を障害者方面の専門家、法律家以外にもちゃんと取材して報道すべきではなかったのか?読者が求めているのは「車いすで飛行機に乗る時は」のような、ちゃんとしたファクトをベースにした情報であって、センセーショナルなタイトルをつけたアジビラではないの。メディアの中の人たちは、いい加減「世の中が変わってしまった」ことに気づこうよ。今の読者たちは「この記事は変だ」と感じたら、裏取りする時代になったのだよ。メディアが自分たちのアジビラで世の中を惑わす企て(印象操作による外圧)はもう無理なんだよ。

障害者側に思うことはいっぱいあるのだろう。
だけどね、乙武さんの言う「障害者にとってはまだまだ理不尽だと感じられるこの社会環境を変えていくには、あえて波風を立てていく場面が必要にもなってくる」手法にウンザリする人たちが増えていると僕は思うんだ。
ちょっと引きで見ると、この方々の考え方は「障害者は健常者に比べてマイノリティ。社会はマイノリティに配慮すべき」となる。それが拡大されて、この手の主張をする、または応援する方々は「マイノリティならば配慮されるべき」というところに着地する。最近NHKがプッシュするのはLGBT「問題」。「問題」にすんなよ、と僕は思うのだけど。

彼らは「あえて波風を立てた」時に、その相手側にも傷つき、大変な思いをする人たちがいるかもしれないことへの想像力が欠如している。そういうなんというか「崇高」な目的のための手段ならば何でもかまわない式の社会運動は、軽く嫌悪の目で見られてると思うのよ。ちゃんとした手続きと、社会の共感を得て前進しようよ。ハプニングを突破口にする手法は、僕を含めてウンザリしてる。

それにしても、奄美空港側(そもそもバリアフリー法適用外施設)で車いす対策の準備が進められていた(今年11月にボーディングブリッジができる予定)。その直前に発生した「事件」だったんだよね。

だから朝日新聞は偏っているわけ。
ネットがなければ、木島氏は障害者の飛行機利用を改善させた英雄、バニラエアは極悪企業というメディアのレッテル張りで終わってた。酷いよね。企業が常に悪いのか?

この問題は、発端となった木島氏の行動と、一貫しないバニラエア(というか地上係員)の対応と、偏ったメディアの報道姿勢につきるんじゃないかと僕は考えてる。

P.S.:
LGBTを「問題」にしようとしているメディアは、ホント止めて欲しい。
世間に溶け込んで平穏に暮らしているLGBTにとっては、「変わり者」たちを取り上げて殊更マイノリティ権利獲得を煽るメディアは迷惑以外何物でもない。

2 件のコメント:

  1. LGBT問題っていう表現はある意味失礼だよなーって思うわ。

    ところで質問です。
    iphoneでこちらのブログにお邪魔してコメントを書きたいと思って何度かトライしたけど、うまくいかなった時があるの。
    なんでかなー?

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    1. そうなんですよね。
      「問題」と定義するから問題となってしまうわけで。
      そして問題には必ず「解決できる」と考えているのが「あの人たち」のスタイル。
      解決できない、そもそも解決する必要すらない事柄って、結構あると思うんですよ。

      LGBT(こういう括りも本来嫌いです)を嫌う人たちの心まで統制はできない。
      例えばLGBTが暴力を振るわれているならば、それは傷害事件として刑事法で適切に対処すればいいだけであって、既存の社会の枠組みの中で解決できることはたくさんあると僕は思ってるんですね。
      皆が安寧に暮らせれば良いわけで、僕は「LGBTの権利獲得」運動とは距離を置きたいです。

      iPhoneから投稿できないみたいでご迷惑をおかけしてます。
      原因を調べてみますね。

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