3日目の朝食 プルマンバンコクホテルG その4 (タイ・シンガポール旅行記)

前夜観戦したムエタイの熱気が、残っているような気がした。

バンコクに滞在して3日目。
暑い国に来た疲れが少し出てきたような気がする。
一人旅ならばベッドに潜り込んで一日中寝ていたかもしれない。
だけど彼氏との二人旅。
疲れが出てきてお互いわがままになりそうなときは、グッと我慢しなければならない。
別に不満なわけじゃないんだ、幸せな我慢なのだから。

プルマンホテルG は朝食付きのプランで宿泊していた。
初日は27階のエグゼクティブラウンジで、軽い朝食を摂った。
欧州系エアラインクルーもステイしているというこのホテルは、なぜかクロワッサンが評判だという。クロワッサンといえば僕はパンの中で一番好きだったから、よく冷やされたスイカのジュースを口にしながら美味美味と食していた。

だが、エグゼクティブフロアにステイしている客数の割に、朝食を摂る客の数が少なすぎる。ホテルの下層階にビュフェがあるという。ひょっとしたら皆そちらに集結しているのやもしれぬ。

クラブラウンジ用レセプションのスタッフに挨拶を受けながら、僕たちはエレベータの客となった。そして……やっぱりこちらのレストランはたくさんの客で賑わっていた。ローカルフード、中華点心、オードブル・シリアルなどの洋食まで、広いフロアには行列を作っている食客たちの胃袋を満たしている。

彼氏とつきあい始めて、ビュフェの食事の盛り方が少し上手になった気がする。
3日目の朝は、この二皿と、デザートにフルーツを添えたヨーグルトでまとめた。


食事を終えて、僕たちはふたたび"Health Land"へ向かう。
朝早い時間だから大丈夫だろうと高をくくっていたら、団体客の予約が入っていて、昼過ぎまで施術を受けることはできないという。仕方なく僕たちは観光すべく、チャオプラヤーエクスプレスの待つ船着き場へ向かってタクシーを走らせたのだった。

ムエタイ (タイ・シンガポール旅行記)

エメラルド寺院と王宮見物から戻り、僕たちはつかの間のアフタヌーンティーを楽しんでいた。観光バスに引っ張り回されながら名跡を巡るのならばともかく、時間に縛られない二人が気ままに観光するスタイルのバンコクは、とにかく暑さに打ち負かされて動く気が起こらない。

1時間ほど窓の外を眺めていただろうか。プルマンホテルG の27階西に広がる風景は、カクテルグラスに注がれたマンダリンオレンジのような、赤々として濃厚な橙色に染め上げられ、チャオプラヤー川が鈍い光を放っている。東の空には高層ビル街を濃紺の宵闇が包んでいる。刻は17:00。僕たちは席を立った。

プルマンホテルGのフロントで、迎えが来るのを待った。車寄せにワンボックスカーが横付けされ、何人かの相客らとともに僕たちは暮れなずむバンコクの街を移動する……ものだと思い込んでいた。

意外なことに、僕たちを迎えにきた男はホテルの中から現れた。想像してみて欲しい。暮れなずむバンコクの街で、丹下段平のような初老の男が「お迎えに上がりました」なんて声をかけられたら、まっとうな神経の持ち主ならば、「これは相当怪しい。自分たちは危険な状況に飛び込もうとしているんじゃないか」と訝るはずだ。

僕らもちょっとびびりながら、だが、その男が今夜ラチャダムヌンスタジアムで開催されるムエタイのチケットを持っているのを確認し、彼の案内について行く。ホテルのゲストパーキングには、古ぼけたレガシーが停まっている。僕らが後部座席に収まると、男の器用なギアレバーに導かれ、レガシーは夜の街を疾走する。

ラチャダムヌンスタジアムに到着したのは日没後。丹下段平からスタジアムスタッフに引き渡された僕らは、今宵の見物席に案内された。

そこは無影灯の世界であった。高い天井から真白い光を放つ大光量のリング照明が吊され、ビートの効いたサウンドが響き渡る、大きな空間が目の前に広がっていた。僕らが案内されたのはリングサイド一列目、しかも赤コーナーの拳闘士たちがリングに駆け上る階段の脇にあった。

試合が始まるのは19:00。1時間近く前に案内された頃は、リングサイドには僕らを含めて数組の外国人がいるだけだった。賭け事をする現地人が収まる金網がけの3階席は無人のまま。そして19:00が近づくにつれて、リングサイドは観光客と、拳闘士の関係者たちで埋まっていった。

ムエタイは3分×5ラウンド。だいたい7組位の試合が行われる。現地人の賭の対象なので、3ラウンドまではお手並み拝見。4、5ラウンドで本気を出す、といった状況だった。

僕らの座っている席の横を、赤コーナーの拳闘士たちが駆け上がってゆく。
試合が始まる前に、ワイクルー・ラムムアイ の儀式が賑々しい音楽とともに供される。褐色の肌の選手二人はロープに沿ってリングの中を一周し、跪いて三度、父、母、師に向かって礼をする。その緊張を孕んだ優美な舞が終わると、あとはズドン、ドスンと肉を打つ鈍い音が響き合う物騒な箱に変貌する。暑い国の、民族音楽の激しいビートは、ファイターそしてギャラリーを酩酊の世界へ連れ去ってしまう。

参考までに、ムエタイ音楽の映像はこちら。
クオリティは非常に高い。



ここからは、僕が自分で撮ってきたもの。












王宮とエメラルド寺院 (タイ・シンガポール旅行記)

ターチャーンの船着場に降り立つと、川の水が床上まであがっている。幅の狭い木の板で作られた通路があって、乗降客たちは天井の柱に頭をぶつけないように首をすくめて歩く。チャプチャプと水に洗われているその木道は、ヴェネッツィアのアクアアルタを連想させる。

船着き場の前にそそり立っている白い壁は、王宮をぐるっと囲んでいて、外からは宙に突きだした尖塔が見えるばかり。しかも王宮見学の入り口は、塀に沿ってかなり歩かなければならない。チャオプラヤー川に沿って歩道が続いている。蚤の市かなにか、歩道には衣料品から古ぼけたレコード、けばけばしい色の飲料水などを売る人々がうずくまっている。垢じみていてあまり清潔な感じはしない。

王宮見学にはドレスコードがあって、例えば短パンだと入場を断られる。だが、無料でズボンを借りることができる。それは王宮の門をくぐった中の事務所で貸し出されている。門の外で声をかけてくる男たちは無関係だから注意が必要だ。












黄金と宝飾品で飾り付けられた王宮は、見る者を圧倒する。
エメラルドの仏像の前には、観光客よりもはるかに多くの現地タイ人たちが祈りを捧げていた。
それにしてもタイの寺院、王宮はどれも背の高い仏塔(チューディー)があって、写真に納めるのはちょっと苦労する。

見学を終えた僕たちはすっかり疲れてしまい、ホテルに戻るためバンコクで初めてタクシーに乗った。タクシーが便利で安いことを知ってしまった僕らは、それからは結構タクシーを使った。あの暑さと湿度の高い大気は、旅行者から気力と体力を奪ってゆく。ホテルでアフタヌーンティして、一休みする。

チャオプラヤー川 (タイ・シンガポール旅行記)

バンコク滞在3日間のうち、2日間はチャオプラヤ川を縦横に駆けるチャオプラヤー・エクスプレスに乗船していた。僕らがステイしているチョンノンシー駅から2つめ、サパーンタークシン駅の真下に、サートン船着き場があった。日中、白い制服に身を包んだ女性の警察官か軍人がのんびりとおしゃべりしている姿を眺めながらBTSに揺られていれば、ものの数分で到着してしまう距離にあった。

駅のエスカレーターを降り、アジア特有の、野良犬がごろごろ寝そべっている道路を少し歩くと、茶色く濁った水が岸壁を洗っている音が聞こえる。このチャプチャプという長閑な音は、どういうわけだか眠気を誘う。
船着き場には現地タイ人のほか、様々な国からやってきた旅行者たちがオレンジ色の旗を掲げた船を待って行列を作っている。白いシャツの制服を着たタイ人の女子学生たちは、とても清楚に見えた。そして、なんだかとても楽しそうだった。

料金は船の中で支払う。
船の後ろ側の席は僧侶専用席になっていた。

僕らは運転手…船長というよりは何となくタクシーの運ちゃんという風情…のすぐ脇のベンチに腰掛け、川面を渡ってくる風を楽しんだ。なにしろ思った以上に船はスピードを上げる。欧米人の、とくに太めの女性たちは、ぐんぐんとスピードを上げる船に歓声を上げる。水しぶきが飛び込んでくるのではないかと冷や冷やしたが、案外大丈夫。チャオプラヤー川右岸に広がる高級ホテルを眺めながら、ショートトリップを楽しむ。





川の反対側に「暁の寺院」がそそり立っている。

バンコクでSPA (タイ・シンガポール旅行記)

アジアで旅行しているときは、SPAで癒やされたい!! と出国前から彼氏と言い合っていた。ところが地球の歩き方に掲載されているようなSPAは、どれも高級ホテルの高価なもの。確かに日本なんかで施術を受ける場合に比べれば絶対に割安なのだろうが、タイ物価で考えるとかなり高額な気がした。

そこでホテルのWiFiを使って、誰か適当なSPAを紹介しているサイトがないか調べてみた。そこで知ったのが"HEALTH LAND"というチェーンのSPA。タイローカルの人たちの予約で賑わっているという。

Health Land
http://www.healthlandspa.com/

TRADITIONAL THAI MASSAGE 450 Baht/2時間
AROMATHERAPY BODY MASSAGE 850 Baht/1.5時間
BODY POLISH 750 Baht/1時間

1バーツはだいたい2.6円程度だから、いかにお安いかわかるだろう。

HEALTH LAND SATHORN という店舗が、僕らが宿泊しているプルマンバンコクホテルG から歩いて15分ほどの場所にあった。紹介サイトは予約が確実と書かれていたけれど、朝一番に飛び込みで行ってみようということになり、僕らは朝9時過ぎからタイ古式マッサージを受けてきたのだった。

HEALTH LAND という日本人からするといかがわしい風俗店のような名称が微妙だったが、実際に訪問してみると受付ロビーや、ファシリティ全体が清潔で高級感があった。

タイ古式マッサージだから、ゲイ的には全くうれしくないムッチムチのおばさんにのし掛かられて、あっちを捻られ、こっちを捻られ……と、あっという間の120分だった。日頃IT機器をのぞき込んでいて、肩に凝りができてしまった僕の肩も、少し楽になった。

すっかり気に入って翌日も朝一で乗り込んでゆくと、予約がいっぱいでお昼過ぎまで空きがないと断られた。この店は予約をしてから行く必要があるだろう。おすすめの店だと僕は思った。



プルマンバンコクホテルG その3 (タイ・シンガポール旅行記)

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ハードディスクの不具合でWindows7が正常にシャットダウンしない始末。
結局新しいディスクと交換になりました。
ブログを書きながら、裏では新ディスクのフォーマット中です。
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ホテル37階に SCARLETT WINE BAR & RESTAURANT がある。
スタッフが現地人以外は、タイの雰囲気は全くない、モダンなレストランだった。
お味の方も、洗練されている。

10月25日は僕の誕生日で、彼氏がディナーをプレゼントしてくれる。
いい雰囲気の中、幸せな旅行の、最初の晩ご飯になった。






プルマンバンコクホテルG その2 (タイ・シンガポール旅行記)

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デスクトップPCの調子が悪くて、データサルベージ作業でバタバタしています。
データは救い出せたんですが、本格復旧まではもう少し時間がかかるかもです。
ブログ更新はデスクトップPCの方が圧倒的に捗ります。
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バンコクではホテルの外での飲食が多いと考えていたので、当初はエグゼクティブラウンジ付きでなくてもいいかなと僕は思っていた。実際は湿気の強いあのバンコクの熱気に当てられて、午後は一度ホテルに戻り休憩していたので、ラウンジは大活躍だった。それから、ラウンジがあまり混みすぎていないのがよかった。席が取れないほどの混雑だと、色々と落ち着かないから。

冷たい飲み物とお菓子を食べながら、おしゃべりに興じるのもまた楽しい。








プルマンバンコクホテルG その1 (タイ・シンガポール旅行記)

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デスクトップPCの調子が悪くて、データサルベージ作業でバタバタしています。
旅行記の進みはかなり遅れてしまいそうです。
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バンコク・スワンナプーム国際空港からエアポートレールリンク(シティライン)に乗り、バンコク市内を目指す。終点のパヤータイ駅でBTSに乗り換え、さらにサイアム駅で乗り換え。シーロム線のチョン ノンシー駅が最寄り。BTSを下車して、並木が深い影を落とす歩道を歩く。じっとりと肌にまとわりつく湿気の多い空気は、アジアに来たぞという気分を高揚させる。7〜8分歩いた場所に、バンコクの宿泊地プルマンバンコクホテルG (旧ソフィテルバンコクシーロム)がある。



とてもスタイリッシュなホテルで、1階フロント周りはセンスの良いヨーロピアンなインテリアで構成されている。いわゆる「アジアちっく」さは微塵も感じられない。

僕らは27階にあるエグゼクティブフロアでチェックインを行う。僕らがアサインされた部屋は、エレベーターホールを挟んでチェックインカウンターと反対側。ラウンジも同じフロアにあるので、なにかと便利だった。





部屋の中は落ち着いたブラウンで統一されていた。ビジネス用のデスクがあって、書き物をするには座り心地の良い椅子がある。大きなバスタブとシャワーブースは別々にあり、朝晩汗を流すのには便利だった。

旅のはじまり (タイ・シンガポール旅行記)

初めての海外旅行先はアメリカで、僕はまだ大学3年生だった。
当時は「海外旅行説明会」なんてものが旅行代理店で催されている時代で、近畿日本ツーリストの説明を聞くために、お茶の水のオフィスビルを訪ねていったことを覚えている。秋が始まったばかりの頃だった。
それからガイドブックと簡単な旅行英会話本を買い込み、毎晩寝る前に予習・復習をしていた。いま考えるとおぼこかったんだなあと懐かしく思う。戸籍謄本を取り寄せてパスポートを取得し、父親から借りた旅行カバンを携えてサンフランシスコへ飛び立ったのは、4ヶ月後の肌寒い2月だった。

いまでは航空券とホテルの手配は6ヶ月以上前に済ましているけれど、ガイドブックなんて直前までほったらかし。しかも荷物を詰めるのも2日前から前日という杜撰さ。いつか痛い目に遭うんだろうけれど、実際、前回ハワイへ向かったときは下着を全部詰め忘れた。あれは大変だった。

今回も荷物を旅行カバンに詰めたのは2日前。
タンスの中身をカバンにゴソッと移し替えた、という安易な荷造りだった。

10月20日。
普段の通勤より2本早い電車に乗り、途中駅で成田アクセス特急を15分ほど待つ。待合室でぼんやりと旅行カバンを眺めていると、急に忘れ物があったような気がしてきて落ち着かなくなる。そわそわするくらいだったら、もっとしっかり準備すればいいのにね。


成田空港に着いたのは、離陸2時間前を切っていた。
関空に到着しているはずの彼氏に電話する。IDチケットは問題なく取れたそうで、「やー、これで7時間後にはバンコクで逢えるね」と喜び合う。

第一旅客ターミナル南ウイングは、主にアジア方面へ向かう出国客たちで混み合っていた。あらかじめインターネットチェックイン済みだったので、直接預け荷物カウンターの列に並ぶ。iPhone5のバーコードを提示し、スルッと荷物は僕の手を離れた。スムーズな展開。「スマホでチェックインってチョー便利じゃん!」と浮かれて保安場へ向かう。ここで「ボーディングチケットを見せてください」「はい…あ、パスコードが……」パスコードをあわてて入力し、バーコードの画面を出す。係員は細かい文字を読み取ろうとするので「拡大しますか?」「いや、結構です」。パスポートコントロールでも「あ、パスコードが……」、ジェッティの入り口でも「すいません、パスコードが……」、飛行機のドアでも「あ、パスコードが……」。。。タキシング中の機内で「あー、めんどくせ。紙の方が便利だ」と思ったのは言うまでもない。



現地には定刻より少し早く15:00過ぎに着陸した。
僕より少し後に、関空から彼氏到着。

到着ロビーの出口で待っていると、RIMOWAのトランクを引っ張って、旅慣れた姿の彼氏が現れた。
両腕を広げて、公衆の面前でど派手なハグ。
「どうしたの?」とキョトンとしている彼氏に「親愛のハグ」とツラッと答える。

男が2人派手にハグしても誰も気にしない。
ここはバンコク・スワンナプーム国際空港。

ひさしぶりのバカンスの始まり。

夏休みから戻ってきました。

遅い夏休みを彼氏と過ごしてきました。
初めてのタイとシンガポールは、いろいろと刺激的でした。

旅程はこんな感じでした。

2012年10月20日(土曜日)
成田→バンコク (ANA)
バンコクステイ

2012年10月23日(火曜日)
バンコク→プーケット (AirAsia)
プーケットステイ

2012年10月26日(金曜日)
プーケット→シンガポール(Tiger Airways)
シンガポールステイ

2012年10月28日(日曜日)
シンガポール→成田(SQ)

普段は時系列で旅行記を垂れ流しているんですが、今回はテーマ別に書き残していけたらいいなと思っています。

プーケット マイカオビーチにて