旅行もローマ以来6日目。すこし疲れが出てくる頃。
前日のアマルフィ海岸で歩き疲れたのと、夜のワインのせいで、ぐっすりと眠った。
前夜、部屋のベランダからヴェスビィオス火山の麓、ナポリ湾にまたたくオレンジ色の灯りを眺めていた。一日中歩いてむくんだ足を靴から解放してやり、ひんやりとした床タイルの冷たさを楽しみながら。言葉が途切れて、静けさが横切っても、二人同じ向きに並んで同じ景色を眺めている。それはとても幸せなことなんだ。そのあと、明日は移動日だから!と二人ともばたばたと荷造りに励んでいたのだけど。
そして2011年7月20日。また6:00前に目覚める。
彼氏を起こさないようにベッドを抜け出して、ベランダに出る。一昨日、「今日、カプリ島へ行けと、オレの勘が言っている」と叫んだ結果はどうだったのか。計画通りに最終日にカプリ島へ行けばよかったのか!?「やった!賭に勝った!!」Back to the furtureのドクのように、僕は一人で小躍りしていた。ベランダの外は雲が低く垂れ込め、ナポリ湾から吹き寄せてくる風で、ポールは撓み、掲げられた国旗はちぎれそうだった。時間が経つにつれて白波が目立つようになり、海は荒れていった。起きてきた彼氏に「賭には勝ったよ」と告げた。もしも今日カプリ島を計画していて、青の洞窟を見損なったら、絶対僕は後悔していただろう。いや、生涯後悔していたかもしれない。なぜあのとき日程を組み替えなかったのかと。
最終日の朝ご飯。平日のためだろうか、前日に比べてめっきりと相客は少なかった。閑散とした避暑地のレストランは、やはり少し寂しい気がする。僕は黒髪の若い女性シェフにオムレツを作ってもらい、チーズがとろとろに溶けている間にすばやく食べきった。ホテルの朝食には、オムレツを焼いてもらえるとやはりうれしい。旅に出ている感じがする。
食事しながら外を見ていて、ガーデンにレモンの木があることに気づいた。せっかくだから見に行こうと、ダイニングから直接庭に出る。ドアを閉めるときに、遠くでオムレツシェフが手を振っているのに気づいた。こちらも手を振り返す。いいなあ、もう二度と会うことはないのだろうけれど、見送られた気分になる。
レモンの木。僕らが日本で見慣れているそれよりも、ずっと大ぶりの果実。レモンの木が植わっている庭。ブーゲンビリアの咲いている庭。切り立った崖。そして目の前に広がる海。僕らはすっかりこのホテルを好きになっていることに気づく。
庭を一周したあと、僕たちは荷物をまとめて部屋を出た。
「忘れ物はない?」
「OK!大丈夫!」
「じゃあ行こうか」
軽く唇をあわせたあと、僕たちはフロントへ向かって歩き始めた。
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