サンタンジェロ城から、汗をかきながらローマ地下鉄A線レパント駅(Lepanto)まで歩く。サンタンジェロ城前の移動売店車で買ったミネラルウォーターは、中身が半分以上凍っていて、首筋に当てるとひんやりとして心地良い。だけど、彼氏のご機嫌が悪い。「ローマのミネラルウォーターはぼったくりだ!」そうで、欧州暮らしの彼氏の値頃感をだいぶ上回っているらしい。まあ、買わないわけにはいかないのだが。ローマは日差しは強かったが、湿度は低く、空気がカラッと乾燥している。東京の湿度に身体が負けるような気分はしない。終始オーブンの中でローストチキンにされているような感じだったけれど。
ローマ地下鉄A線をテルミニ駅でB線に乗り換え、2駅でコロッセオ駅(Colosseo)に到着。さすがにヴァチカンとならんでローマを代表する観光地だけあって、地下鉄車両から降車する人たちの数も半端じゃなかった。そして、地上に出ると、視界をふさぐようにコロッセオがそびえ立つ。
入場チケットを買うための長い長い列に並んだ。列は押し合いへし合いのカオス状態で、しかも彼氏に言わせると「ヨーロッパ人は分からないことをすぐに質問するから、窓口の効率が悪い」らしい。確かに、チケット販売機を1〜2台置いておけば、アジア人はほとんどそちらに流れるような気もする。人混みに揉みくちゃにされてはいるが、時々涼しい風がコロッセオの中を吹き抜けてゆくと、僕らのイライラした気分が治まってしまう。目をつぶっていると眠りに落ちてしまうそうな、優しい風だった。
結局チケットを買うだけで1時間近く時間を無駄にしてしまったか。
競技場の中には広大な廃墟が広がっている。前回のローマ旅行では、コロッセオの影すら見ることができなかった。僕の一眼レフカメラでは収まりきらない空間を前にして、圧倒されてしまった。さすがに土木建築物では空前絶後の帝国が築いた競技場だった。
コロッセオを出ると、コンスタンティヌスの凱旋門があった。ふたたびミネラルウォーターを買ったのだが、ついに彼氏が激怒!「500mlのミネラルウォーターが2本で5euroだよ!信じられない!!」確かに、激しくぼったくりだと思う。だけど、その冷たさを手放すことはできなくて……。
フォロ・ロマーノの遺跡群へと進む。時間はすでに16時台後半になっていたけれど、日差しは強い。だけど、古い石畳の上に樹木が影を作っている木陰に入ると、急に周囲が静まりかえり、乾いた涼風が吹き抜けてゆく。人混みから離れ、ローマの静けさの中に身を浸したら、自分も古代人の気持ちに近づくことができるのだろうか……そんなことを夢想する。
ただ、残念なことだけど、フォロ・ロマーノの遺跡群で古代ロマンに浸れる人は、そうとうローママニアじゃなければ難しいのかな、とも僕は思った。どうも頭の中では、リドリー・スコット監督作品の"Gladiator"の1シーンがちらついてしまう。鳩が飛ぶ、光と影のフォロ・ロマーナを。それほどあのシーンは印象的だったのだ。
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