飛行機がいない!? (タイ・シンガポール旅行記)

美男子の、そう、彼はイケメンよりも美男子と言った方が相応しかった、と細面美人のスタッフに見送られて、僕たちはプルマンバンコクホテルGをチェックアウトした。まだ早い午前中の、汗ばむほどでもない日差しの下をスーツケースを引っ張りながら駅を目指す。
僕たちは4日前、バンコクにやってきたのと逆方向に電車を乗り継いでいった。スワンナプーム国際空港へ向かうエアポート・レール・リンクの車両は、どういうわけだかOne Pieceのキャラクターたちで埋め尽くされていた。ナミさん、チョッパー、ルフィと…紙パックに入ったお茶飲料の広告らしい。この広告はタイ人に響くのかな??

パヤータイ駅を出発して、電車はまっすぐに空港を目指して走る。冗談ではなくて、パヤータイ駅を出発して、空港近くまでの距離をほぼ一直線にレールが敷かれているのだ。駅を出発して程なく田園風景が広がる。スーツケースを手で押さえながら「楽しかった。また来たいね」と彼氏とおしゃべりしていると、サムスン電子の巨大な看板が現れたところで線路は右手にカーブして、電車はバンコク・スワンナプーム国際空港に到着した。

地下の駅から出発ロビーを目指す。
どこのカウンターに行けば良いのだろう。僕たちはDepatureスケジュールを表示するモニターの前に立った。「え? Air Asia どこにもいないんですけど??」

この時点で僕は軽くパニクっていた。だって飛行機がいないんだよ?遅延でもキャンセルの表示でもなくて、本当にAir Asiaのロゴがどこにも見当たらない。なんか悪い夢でも見ているようだった。彼氏は「なにかの間違いじゃない?ほら、予約表にはスワンナプームって書いてあるし」と言う。確かにそう書いてはあるけれど、僕は自分の予約表を取り出してみた。「ちょっと!こっちはドンムアン空港って書いてある!」

目眩がした。

同じ曜日の、同じ時刻に出発する、同じ飛行機の、隣り合わせの座席の予約表が、なんで出発空港が別なのだ。そのとき僕は「みぎゃあ!」と変な悲鳴を上げていた。いま考えると笑ってしまうが、人間、パニクると普段とは考えられない行動をするものだ。
それにしても、これからどうすればいいのだろう。僕たちは出発ロビーに向かうエスカレーターを途中で降りて、慌ててスーツケースを開く。地球の歩き方を取り出して確認すると、Air Asiaのカウンターが記載されている。とにかくそこへ行ってみるしかない。エスカレーターが出発ロビーに到着する。遠目からも指定されたカウンターの看板にAir Asiaはない。。。。

その反対側にこぢんまりとした、ほぼ無人のAir Asiaのカウンターがあることに気づいた。そこに女性の係員がいる。彼女は僕らの予約表を見て「ああ。Air Asiaは10月から全部ドンムアン空港に移ったのよ。他の便に振り替えるわ」と言い、カタカタと端末を叩く。幸い僕らが搭乗予定だった次の便に振り替えることが出来るという。「ドンムアン空港へは無料シャトルバスで行って」と指示され、僕らはほっとしたような、奇妙な夢を見ているような不思議な気分で、シャトルバス乗り場に向かって歩き出した。

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