最近のBL書評で「今風、今風」と褒めてきた絵柄がいくつもあるが、宮本佳野は先駆的にずっと美しい描画を続けてきた。今回2nd発刊に当たり、オリジナルのRULES3冊を読み返してみたが、まったく色褪せていなかった。
ヒカルと恋人同士になって5年--高校の国語教師になったユキ。仕事は順調で、ヒカルは相変わらずユキを溺愛しているけれど、ひとつ気がかりなのが、生徒の志賀だ。休学していた志賀は、実は一年間失踪していて、その間の記憶が全くないらしい!?
しかも、「彼氏がいてもいい。先生が好きなんだ」と縋るように告白され--!?
恋人同士の絆を揺るがすのは、教え子との三角関係という試練--
「RULES」社会人編!!
もともとオリジナルのRULESは、4人の若者の青春群像ストーリーだった。当時高校生だった近衛幸生(このえゆきお)が同級生鈴木天鳥(すずきあとり)に片想いをするが告白できず、もんもんとして新宿二丁目を彷徨っているときに出会ったのが年上の平良光(たいらひかる)だった。物語の初っぱなからユキはヒカルと付き合い始め、そしてセックスする仲になる。
一方、ユキからカミングアウトされた天鳥は、こちらもいろいろとグルグルしているうちにヒカルの知り合いである四宮徹と引き合わされる。徹はノンケなのに男相手のウリをやっていて、ノンケでも男相手に勃つよなんて話をしているうちにズルズルと深い仲になってしまう。
当初はユキが主人公の話だと思っていたのに、1巻後半位から天鳥が中心主人公みたいになり、結局天鳥の成長物語のような形でシーズン1は完結する。
あれから5年。
教師と生徒の禁断の恋……と言ってもリアル2丁目ではそれほど珍しい話ではないのだが、今回はユキと志賀友也(18)がど真ん中の主人公で話は展開する。ヒカル一筋だったユキが揺らいたところに、ワケありの高校男子が突っ込んでくる。
しかも、ネタばらしすると、禁断の先生・生徒愛にプラス、「1リットルの涙」か「美丘」的なことをやろうとしている。長年自分を愛してくれた人を捨ててまで走った相手は、日々自分のことが分からなくなって行く。。。これ、キツイよね。
「RULES」は宮本佳野のもっとも注目すべき作品で、彼女の良いところが全て詰め込まれている。「RULES」徹の悲恋の物語が「ラバーズ、ソウルズ」で、ここから読むと「RULES」が徹の喪失と再生の物語となって完成し、まるでBANANA FISHの「光の庭」のようだ。
ついでに言っておくと、「MOONY桜花寮トリロジー」などの桜花寮シリーズも良い。宮本佳野は長編になるほどアウトプットが良くなり、分量が同じでもオムニバス形式になるととたんに長所が失われる。もともとじっくり読み込ませるタイプの作家なのだ。前作の「夏の痣」なんて、いったいどんな話だったのか記憶に残ってすらいない。連載量が限られるときは登場人物を2人に絞るか、長編でも4人までにしておくと良作になる。掲載媒体の都合もあるだろうが、彼女を起用する編集者は彼女の長所を引き出すために長期連載の場を提供してあげて欲しい。
1.絵柄
うまい。昔から彼女の描くキャラクターは好きだった。
昔からあまり絵柄は変わっていないのだが、それだけ独特なスタイリッシュさを維持しているのだと思う。
2.ストーリー
宮本佳野作品の最良シリーズの続編。禁断の教師・生徒愛にプラス、失われて行く記憶というエッセンスが加わった。どちらもありきたりと言えばありきたりな材料ではあるが、それを腕のいい人が料理すれば物語の行く末が気になってしょうが無い。
あと宮本佳野の作品は、ゲイであることの葛藤が描写されていることが少なくなくて、僕はそこに好感を持っている。リアルだし、物語に奥行きが生まれてくるから。
3.エロ度
ボリュームはそれほどないのだが、禁断と葛藤がオプション追加されている分、ドラマチックな仕上がりになっている。セックスの最中のモノローグがね。。。
4.まとめ
宮本佳野は、僕の中ではBLの王道だ。
日高ショー子が女性の読むBLの王道だとしたら、宮本佳野はゲイ男子が読んで切なくなるBLだ。
絵柄 :★★★★★
ストーリー:★★★★★
エロ度 :★★★☆☆
(あくまで個人的主観に基づく★の数です)
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