週末の本選び……須賀敦子全集

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今週も仕事が終わった。
今日はイベント出展のキックオフMtgと、メディアの取材対応で、なんか疲れてしまった。決めなきゃいけないこと、確認しなきゃいけないこと、交渉しなきゃいけないことが山積みで、3ヶ月間はいろいろと忙しくなる。

19:00過ぎにオフィスを出て、行きつけの"紀伊國屋書店 大手町ビル店"へ足を運ぶ。金曜日の夜、書架の間をさまようのが、僕のリラックス方法。ここでマン・ウォッチングもする。"Numbers"なんかにしがみついているリーマンには興味ない。すれちがう人たちが抱えている本をすばやくチェックする。場所柄ハードカバーのビジネス書を手にしている人が多いけれど、今日見かけたステキな女性は、金融論の専門書と、中国の歴史小説と、そしてベトナムの旅行ガイドを抱えていた。こういうバランスの人、好きだな。

今日は予定通り"須賀敦子全集"を手にした。帯にある「私は、孤独が荒野ではないことを知った」……この一言がどんな文脈で現れるのか。それとも河出書房の編集者がひねり出したコピーなのか。はやく知りたいような。読み終わってしまうのが惜しいような。

のっけのタイトルから「ヴェネッツイアの宿」だ。
彼女の紡ぎ出すみずみずしい文章が、一気にヴェッツィアの街に僕を連れ去る。

懐かしい。
イタリアを旅した時の記憶がよみがえる。
サン・マルコ広場に立った。足下を飾るタイルが波打っていることに驚いた。ここは頼りない干潟の上に作られた"海の都"なのだと、あらためて実感した。
広場の一角にあるカフェ・フローリアンでコーヒーを楽しむ。手持ちのリラが足りないことに気づき「これじゃチップもおけないよ」と、両替商を探してサン・マルコ広場を囲む回廊を走り回ったっけ。中世の頃からここは銀行の集積地であるという知識があったからね。
サン・マルコ広場からリアルト大橋を目指して歩く。細い路地をいくつか抜けると、小さな運河に出くわす。あちこちからチャプチャプと住居の礎石を洗う水音がする。時々細身で黒塗りのゴンドラが滑るように進んでゆく光景が目に飛び込んでくる。

クルマの入ってこない静かな街は、スローテンポに時間が流れ、すれちがう人、見知らぬ人ともなぜか近しいような気がする不思議な街だったことを記憶しています。

僕なんかじゃヴェネッツィアの良さを伝えることはとうてい無理なんだけど、イタリアで暮らしたある女性に関心を持ってくれる人がいたら、ぜひ一度手にとってみて欲しい。

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