BL書評をもいっちょ書いてしまおう。
富士山ひょうた 『本気じゃねぇから』
なんてか、今後書評に登場する作家達もユニークというか、びみょーなペンネームが続く。実際のところ書店でお目当ての本を探してもらう時に伝わりにくくないかい?と心配したくなるほどだ。
さて、"本気じゃねぇから"というタイトルに似合わず、書評仔に熱く語らせてしまうラブストーリー(ゲイ向け)の王道がここにあった(笑)。
失恋したばかりのカメラマン暮嶋英二(23歳)と高校生杉ノ井浩人(16歳)のふたりの話。"春を抱いていた"が初っ端からガンガンSex~って調子で入っていったのに対し、こちらはしっとりとメンタルな部分で話が進んでいきます。
ノンケの暮嶋とゲイ高校生の浩人。あこがれの同級生に彼女がいる事が発覚してショックを受けた浩人。季節は冬。家に帰りたくなくてフラフラと街をさまよって いるうち寒くなり、クルマのボンネットで暖を取っている時に、オーナーの暮嶋に拾われます。ノンケの暮嶋の中で生まれた"情"がゆっくりと"愛情"に育っ てゆく過程が丁寧に描かれています。
1.絵柄
上手な絵柄です。僕的には好みですね。
浩人の髪型なんかは今どきの高校生という感じで、BL本にありがちのいつの時代の話ですか?みたいなズレがないのがポイント高いです。また、個人的には男性眼鏡キャラの露出が最小限なのがとてもうれしい!(きわめて個人的なトラウマです)
2.ストーリー
この作品はキャラクターデザインも良いですが、なんと言ってもストーリーで読ませます。暮嶋の"情"が"愛情"へ育ってゆく過程を追ってゆくのも良いですが、おっさんの僕から見ると"わはは~オトナはずるいのぉ"と思う場面もあり。
浩人は"一途天然系高校生"という設定。実は浩人がなぜ暮嶋を好きになったのかという場面は明示されていません。ゲイってのは因果なもので、男ならなんでもイイ!ってなわけでなく、恋愛の対象になる分、対男に対しては好みもかなりうるさい(苦笑)。なのに会って二日で合鍵を持ってゆかれ、それから2ヶ月後、 その高校生は「すっかりオレに懐きまくっていた」という展開。確かに恋が劇的に始まるものでもなしとは思えど、どこに惚れたのか位の説明はあってもいいかなぁと思いますね。
で、ゲイの浩人から暮嶋にいろいろと仕掛けるんですが、これがなかなかうまくいかない……。きっと高校生がこの作品を読んだら 「オトナってずるいよな」って感じるかもしれないし、大人が読むと「高校生の一途さもいいけど、大人の恋愛ってこういうもんだよな」って思うんじゃないだろうか。人間ある年齢になったらいきなり「ビビビッ」とくるわきゃなくて、自分の生活の中で、いつの間にか相手の存在が大きくなってゆくことに気づいて、 その掛け替えのない存在を大事にしたいと考えるものではないか。
だからオトナとコドモでは恋愛のスピードが違っていて、それはしばしばストレスの 原因にもなるんだ。冬から春へ季節が変わってゆくのに合わせて、徐々に暮嶋が浩人を受け入れる体制を整えてゆくが、浩人は正直つらかっただろうなぁ。合鍵を返しに来た時がストレスのピークだったと思うが、よく我慢した、えらいぞ!>浩人
3.エロ度
ほとんどエロくないです。しかしだな、暮嶋ったらしっかりローションで浩人のことをほぐしてますけど、いつの間に準備したんだろう?気になります(笑)。
4.まとめ
いい作品です。読み返したくなる心理描写のうまさがツボをつきまくりです。
絵柄 :★★★☆☆
ストーリー:★★★★★
エロ度 :★☆☆☆☆
(あくまで個人的主観に基づく★の数です)
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